新たな信用サイクル:現在のポートフォリオは、かなりの部分が2021年および2022年に構築されたものです。その時期は資本コストが低く倍率指標が高水準で、個人投資家からの資金はすぐに投資充当されていました。それらの年代に属するポートフォリオは、当時と大きく異なる環境に現在移りつつあります。一部の発行体は、プライベート・クレジットに対する需要が旺盛だった時期に前倒しで借り換えを終えて2025年の満期を延長しましたが、大半の発行体は高金利での借り換えを迫られています。変動金利による返済がすでにフリーキャッシュフローを圧迫し始めており、一般的な5年から7年の満期が接近しているというのが現在の状況です。その中で、借り換えは任意で行うものではなく実質的な義務となっており、信用サイクルが新たな局面に移行したことが浮き彫りとなっています。
センチメントの変化:プライベート・クレジットに対する投資家のセンチメントは、米国事業開発会社(Business Development Company:BDC)やインターバル・ファンドなどの形でプライベート・クレジットに投資していた個人投資家を中心として、慎重なものとなっています。一部の大手ファンドでは解約制限の水準を上回る解約が発生しており、私募BDCなどの投資ビークルについてはネガティブなセンチメントが強まる可能性がありますが、これはプライベート・クレジット全体の問題というよりそれら一部のファンドに固有の問題です。信用力が最も高い上場BDCを除けば、現在は大半が純資産価値(NAV)より大幅に低い価格で取引されています。投資家の関心は、ソフトウェア企業に対する貸し手のエクスポージャーに集まっています。このセクターは、SaaS(Software as a Service)が安定的な収益を生み出すと認識されていたことにより、これまではプライベート・クレジットにおける大きなセグメントでした。
市場の底固さは継続:解約は増加しているものの、それを補う重要な動きがあることはニュースでは見落とされています。解約が生じているファンドの多くが、他方では解約と同等またはそれを上回るペースで引受けを行っており、それを見る限り個人投資家の資金が完全に出金超過に転じたとはいえませんが、新しく入ってくるデータには出金超過を示唆するものも多く含まれています。また、機関投資家の大半はクローズドエンド型のビークルによりプライベート・クレジット投資を行っており、それらのビークルには豊富な待機資金があるほか、積極的な貸し手も残っていて借り手をある程度支えていますが、今後の融資は2025年より高いスプレッドとなる可能性が高そうです。
選別が重要:市場に変化が生じる時期は最大手の運用会社が有利となる傾向が強いため、2026年以降は選別が重要となるでしょう。ダイレクト・レンディングでは慎重な姿勢をお勧めしています。特に、個人投資家の資金動向に左右されやすく現在は好ましくない状況にある米国市場では、慎重さが重要となります。私たちが選好する運用会社は、プライベート・エクイティ業務を行っており、事業再構築の能力を有していることに加え、真の企業オーナーとしてのマインドセットを備えている運用会社です。そのような運用会社は、企業経営に機動的に関与して、ダウンサイド・シナリオの時期においても企業価値を維持することが可能であり、当初引受時の想定に依存せず、ストレス環境においても事業の清算を強いることがありません。また、私たちは欧州ダイレクト・レンディングも選好しています。相対価値の魅力が高く、個人投資家のセンチメントによる影響を受けにくいことがその理由です。
再生可能エネルギーとオフィス不動産の投資機会:資金が不足しておりリスクが十分に認識されているような分野では、非常に魅力的なプライベート・クレジット投資の機会がよく生まれます。競争が激しくないセグメントの優良企業に資金を提供すれば、市場を上回る魅力的なリターンが得られる可能性があります。ディストレスト企業が多数存在する状況は現在でもあまり見られませんが、ストレス状況にある一部の分野では局所的に投資機会が発生しつつあります。現在注目すべき分野としては以下の2つを挙げることができます。1つは米国の再生可能エネルギーセクターです。このセクターは政策期待が変化したことにより不利な状況にありますが、本質的に存続可能である企業に対して借り換えや事業再構築の機会を提供し続けており、投資家の競争も激しくありません。もう1つはオフィス不動産クレジットです。オープンエンド型のエクイティ・ファンドが取引の圧力を受けており、バリュエーションは過去の高値を大きく下回って推移しています。そのため、保守的な引受けを行えば、魅力ある将来的リターンが生じる可能性があります。