為替ヘッジ付外国債券投資の再整理

2023-07-26

Kenichiro Nishimura

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グローバル債券運用を取り巻く投資環境と運用課題

昨年、為替ヘッジ付外国債券は金利上昇とヘッジコスト上昇のダブルパンチを受けて大幅なマイナスとなった。年金資産運用の主役ともいえる債券のリターン低迷は多くの投資家にとって悩みの種だろう。

下記の図1は債券の投資環境と、それに伴って生じている運用課題、課題への対応策をまとめたものである。

現在の債券投資環境における最大の特徴は、海外債券市場における逆イールド化である。2022年度に日本を除く主要先進国の中央銀行がインフレ率の高止まりに対する対策として政策金利を引き上げた結果、短期金利が上昇した。一方で利上げによる将来的な景気後退懸念を背景に、相対的に長期金利の上昇が抑制されている。

逆イールド化による運用課題の一つは景気後退懸念だ。一般的に逆イールドは景気後退の予兆とされているが、その理由は長短金利の逆転によって、長短金利差で利鞘を稼ぐ金融機関の収益が悪化する可能性が高い事にある。金融機関の収益悪化は、最終的に資金繰り懸念のある企業に対する貸し渋り等の弊害を与えかねない事から、リスク性資産のパフォーマンス悪化につながる。ただし債券に限った話で言えば、景気後退局面では利下げが行われる事から国債のパフォーマンスがプラスになるだろう。

もう一つの運用課題はヘッジコストの上昇による債券利回りの低下である。金利上昇によって本来であれば債券のインカムゲインは高まるはずであるが、日本の短期金利が抑制されている事から為替ヘッジコストが上昇しており、為替ヘッジ付外国債券のインカムリターンが低調となっている事は日本の投資家にとって悩みの種である。

図表1:債券を取り巻く運用課題と検討事項

本稿では、このような投資環境下での為替ヘッジ付外国債券投資の向き合い方について改めて整理を行う。

為替ヘッジ付外国債券投資の投資意義

為替ヘッジ後の利回りがマイナスとなる環境下で、為替ヘッジを行う意味があるのかというご質問を昨年から多く頂戴しているが、長期投資においては意味があると弊社では考えている。

為替ヘッジ付外国債券は、2022年には一時的に株式との相関係数が正になったが、通常の期間であれば逆相関である事から分散効果が認められる(図1の「①株式⇔債券の分散強化」部分に該当)。景気後退や利下げ等により、短期金利が低下するような局面では、長期金利の低下も想定される。短期金利の低下はヘッジコストの低下に作用し、長期金利の低下は価格リターンに作用する。

図表2:金利低下過程における金利変化とリターンのイメージ

国内債券投資への回帰の可能性

為替ヘッジコストが問題であれば、国内債券投資であれば問題がないという考え方もある。実際に国内債券のイールドカーブは諸外国とは異なって順イールドとなっており、キャリーロールダウンを得られる事から利回り水準はプラスとなっている。

ただし将来的な価格リターンの観点からは、金融政策において金利引上げ方向が予想されることから、投資タイミングとしては時期尚早と考えている。国内債券の代表的なBMである野村BPIの修正デュレーションは9.19年(2023年6月末時点)とかなり長い事から、金利上昇時に大きなマイナスリターンとなる事が想定される。

一定程度、海外金利の低下と国内金利の上昇が進捗した後に、相対的な投資魅力度に応じて国内債券を選択するという選択が現実的になるだろう。

最後に

足元では株式市場の上昇によって、相対的に債券のアロケーションが低くなっている基金も多いと推察される。リバランスをしようにも、為替ヘッジコストの高い現時点では躊躇してしまうという投資家も多いが、リバランスルールにしたがって粛々と実施する事をおすすめしたい。債券の大きな役割は安定的なインカムの享受もさる事ながら、リスク性資産との分散効果にある。景気後退局面がいつやってくるかは、足元の不透明な環境下では特に見通しづらい。いつどのような局面がやってきても対応可能となるように、政策資産配分に沿った計画的な運用を行う事を推奨する。