3 Things to Know About Last Week’s Surge in Treasury Yields

2025年度に検討したいポートフォリオ運用の効率化

2025-04-16

Shinji Kanetake

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2025年度に入り、トランプ政権による政策が次々と打ち出され、グローバル金融市場や経済に多大な影響を与えている。特に関税政策に端を発した経済の不確実性やインフレの懸念の高まりが挙げられる。 経済の不確実性は金融市場においてボラティリティの上昇に直結し、それは今後のリスク管理の重要性をさらに高めるものとなる。

また近年、ヘッジファンドをはじめとするアクティブ運用の運用コストが上昇傾向にあるが、それに加えて、ボラティリティの上昇が個別銘柄の価格変動性の拡大を通じて、取引コストの上昇にも影響を与える可能性があることから、コスト管理の必要性も増してくるだろう。

このような投資環境下、資産運用におけるリターン増強に工夫を凝らすのは当然のことだが、リスク管理やコスト管理の強化にも十分な注意を払いたい。

収益源泉の拡張と分散により、リターン増強への工夫が進んだ年金ポートフォリオ

2000年代初頭の伝統的4資産による運用から、年金資産運用は株式・債券投資のグローバル化、ヘッジファンド戦略・プライベートアセット投資の導入と拡大など、収益源泉の拡張と分散によるリターン増強への工夫が進んできた。一方でリスクはより複雑になり、またコストは運用コスト・取引コストともに高まっている。

近年の年金ポートフォリオの運用構成を見てみよう。2024年12月に公表された企業年金連合会の企業年金実態調査結果(2023年度)によると、確定給付企業年金の平均的な資産構成割合は以下のようになっている。

【確定給付企業年金の資産構成割合(2023年度末)】

国内債券国内株式外国債券外国株式一般勘定短期資産ヘッジファンドその他※
18.00%10.10%17.10%14.90%15.80%4.00%5.50%14.50%

※「その他」には、主に不動産やプライベートエクイティなどのプライベート資産が含まれる

資産構成割合に関する調査は資産規模別にも行われており、資産規模が大きくなるにつれて①その他の割合が大きくなる、②国内資産(国内債券や国内株式)に対して海外資産(外国債券や外国株式)の割合が大きくなる傾向が見られた。

一般的な年金ポートフォリオのリスク構成を再確認

このようにグローバル分散やオルタナティブ運用の拡大が進む年金ポートフォリオであるが、そのリスク構成はどのようになっているのであろうか、シミュレーションを実施したい。

ここで上記の平均資産構成割合について、実際には国内債券枠にヘッジ外債やオルタナティブ運用が含まれているケースや、外国債券枠にもヘッジ外債が含まれているケースなどを考慮して、一般的な資産構成割合として以下を仮定した。

【シミュレーションに用いる資産構成の仮定】

このシミュレーション資産構成に、2005年4月-2025年3月(過去20年間)の個別資産リスクを適用すると、リスク構成は以下のように試算できる。

国内債券ヘッジ外債国内株式外国債券外国株式一般勘定オルタナティブ
10%20%10%5%15%15%25%

【シミュレーション資産構成のリスク構成(試算)】

Improving Portfolio Efficiency In 2025 chart1

出所:Bloombergのデータを基にラッセル・インベストメント作成

これより金額配分では債券資産(国内債券+ヘッジ外債+外国債券+一般勘定)の比率が50%、株式資産(国内株式+外国株式)が25%、オルタナティブが25%と2:1:1の比率であったが、リスク配分では株式リスクの比率が約5割、為替リスクが約2割と全体の約7割を占めていることがわかる。つまり依然として年金ポートフォリオの主要なリスクは株式リスクと為替リスクであると言える。このため株式運用の効率化とヘッジコスト対応を含めた為替管理の効率化が、年金ポートフォリオ運用における重要ポイントになると考えられる。

また同時に、リスク対比で相対的に高いリターン(高いリスク効率性)が期待できる一方で、複雑性も高いオルタナティブ運用についても、運用管理の強化や効率化が重要になると考えられる。

株式運用の効率化のためのポイント

運用の効率化とは、「リターンの質を高める」とも言い換えられるだろう。もちろんリターンは高い方が望ましいが、その質にもこだわりたい。例えば同じリターンであっても、より低いリスクやコストでそれを達成できた場合、それは質の高いリターンであると言えるだろう。

R.C.グリノルド、R.N.カーン(1999)は、アクティブ・リターンの創出について、以下のような関係があると示している。

アクティブ・リターン=投資判断の正しさ×投資判断の回数×投資判断の速やかな実装

投資判断の正しさとは、まさに優秀なマネージャーを選択するということであろう。加えて、投資判断の的中度を高めるためには、そのアクティブ・リスクが“意図したリスク”なのか“意図しないリスク”なのか、リスク管理の質にもこだわりたい。

投資判断の回数や投資判断の速やかな実装については、どの程度の頻度で投資判断を行い、その投資アイデアがフレッシュなうちに(まだ証券価格に反映されていないうちに)、いかにポートフォリオにポジションとして構築できるかがポイントとなる。つまり売買執行の効率化や取引コストの抑制を含めた“インプリメンテーション”が重要と言えるだろう。

為替管理の効率化のためのポイント

為替管理、とりわけヘッジコストが高い環境下における為替ヘッジの効率化は、今後の重要な運用課題であると言えるだろう。

為替ヘッジ比率や為替エクスポージャーの管理方法には、固定比率でヘッジを行う静的管理と環境に応じてヘッジ比率の調整を行う動的管理とがある。また動的管理には、円高や円安など為替動向(テクニカル)に基づいてヘッジ比率を変更するダイナミックヘッジ戦略や、為替のファンダメンタルズに基づいてヘッジ比率を変更するルールベース戦略などがある。

例として、為替リスクをフルヘッジしている状態から、ヘッジコストが高いという理由で、ヘッジ比率を70%に引き下げることを考える。この場合、為替リスクを約10%とすると、3%程度の為替リスクを負うことになる(=為替オープン比率30%×為替リスク10%)。このようなヘッジコスト対応策も静的管理におけるひとつの対応策であるが、例えば、同じ3%リスクを負うのであれば、フルヘッジを維持しながら、為替戦略を3%のリスク配分で導入するという、動的管理におけるひとつの対応策を検討してみるのはどうだろうか。

オルタナティブ運用の効率化のためのポイント

プライベートアセット投資やヘッジファンド戦略などのオルタナティブ運用については、その収益源泉やリスクの複雑性から、予め投資する目的を整理したうえで適切な投資対象に適切な比率で投資することが重要であると考えられる。このため何故オルタナティブ運用を行うのかについて目的を整理して、その目的の達成が期待できる投資対象を見極め、リスクを理解したうえで運用構成を検討するプロセスを経ることが重要である。またプライベートアセット投資の場合は、投資対象や投資戦略の分散を意図した構成計画に加えて、ビンテージ分散の構成など投資時間軸を設定する投資計画の策定も大切である。

2025年度は不確実性の高い運用環境となることが予想される。またその不確実性は収まるどころか増しているように考えられ、2025年度以降も継続する懸念もある。 今後のこのような運用環境を考えると、自身のポートフォリオのリスク構成を今一度確認し、リスク寄与度が高いもしくは複雑性の高いアセットクラスについて、その効率化策を検討することが重要になると考える。

当社のブログでは、今後、各アセットクラスの効率化策について発信していく予定である。


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