以下は、2025年8月15日にラッセル・インベストメント(米国)のHPに掲載された英文記事を翻訳したものです。原文はこちら
要点
貿易摩擦の緊張緩和が力強い市場の上昇を引き起こし、米国の超大型株に投資資金が集中しています。
マネージャーは、欧州、日本、新興国などに投資機会を見出しています。
マネージャーは、中国株が依然として他の地域よりも割安だと評価しています。
5つの重要なマクロトレンド
1. 貿易に対する楽観的な見方がリスク選好を高めている
米国と主要貿易相手国との通商協議の進展が、超大型株や投機的な小型株の上昇を後押ししています。同時に、市場の信頼感が高まる中で、ヘッジファンドが空売りしていた株を買い戻す動きが強まっています。
2. バリュー投資家はAIへの投資を進めている
バリュー投資家は、半導体製造装置や産業オートメーション、ソフトウェア、専門サービスなど、バリューチェーンの下流に位置づけられる企業へのエクスポージャーを拡大しています。AI関連投資の長期的な見通しを踏まえ、データセンターや電力事業などのAIインフラの構築や改善を担う分野に投資が集中しています。
3. 地政学的な変化が市場に影響を与えている
欧州では、地政学的変化に伴う財政支出拡大により軍産複合体を押し上げています。米国では、関税や経済政策をめぐる不確実性が市場の安定を揺るがし、ドル安を招いています。こうした流れが、新興国市場への注目を高めています。
4. 不確実性が市場セクターのパフォーマンスに表れている
米国のヘルスケアセクターは政策変更による圧力に直面していますが、エネルギーセクターは、天然ガスの長期的な成長見通しを背景に楽観的な見方を維持しています。金融セクターでは、多角化した大手銀行が選好されています。
5. 不動産とインフラに回復の兆しが見られる
金利がピークに達した可能性を受け、不動産とインフラの両セクターに反発の兆しが見られます。上場REITは、非上場不動産やプライベート・インフラに比べ割安で取引されており、マネージャーはこの動きを注視しています。また、政府の政策動向が再生可能エネルギーや廃棄物・エネルギーのミッドストリームセクターに追い風となっています。
株式マネージャーによる5つの重要インサイト
グローバル
投資の集中は依然として課題
マネージャーは、最大規模の超大型成長株に投資資金が集中していると見ており、割高なバリュエーションや透明性の欠如から、多くのマネージャーがエクスポージャーを減らしています。一方で、欧州や日本など米国以外の市場に対しては、米関税措置や為替リスクといった課題があるものの、投資の分散効果や潜在的な優位性がある魅力的な市場だと捉えています。
米国
マネージャーはマグニフィセント・セブンに対して慎重姿勢
多くのマネージャーがマグニフィセント・セブンの競争優位性を認める一方で、資本需要の高まりや長期的な収益性・リターンをめぐる不確実性から、プレミアム価格で購入することには慎重である。
新興国市場
中国株は依然として魅力的
関税懸念や長期的な構造的課題を背景に投資家心理は割れるものの、バリュー・マネージャーは中国株のバリュエーションは依然として魅力的だと評価しています。また、中国政府は成長率が目標を下回る場合、さらなる景気刺激策を打ち出すと見込まれています。
欧州および英国
マネージャーはアウトパフォーマンスの機会が拡大すると見込む
銀行や防衛関連銘柄の上昇に支援され、最近は欧州株が米国株を上回る展開が続いています。マネージャーは、インフレの鈍化や金利の低下といった好ましいマクロ経済環境を背景に、今後数ヶ月間でその差はさらに拡大すると予想しています。
日本
内需株が選好される傾向
多くの日本株マネージャーは、輸出企業よりも国内消費需要から利益を得る企業を選好しています。背景には、海外市場での売上に悪影響を及ぼし得る貿易関税や為替変動に対する懸念があります。
新たなフロンティアを探る
現在のマクロ動向とマネージャーの見解は、貿易への楽観やAI主導の投資シフト、そして地政学的な不確実性によって市場環境が形成されていることを浮き彫りにしています。マネージャーは投資資金が集中しているセクターを慎重に見極めながら、バリュエーションなどに基づいて米国以外の地域における投資機会を見出しています。