以下は、2025年9月29日にラッセル・インベストメント(米国)のHPに掲載された英文記事を翻訳したものです。原文はこちら。
要点
- 独立したリスクチームは、見落とされがちなリスクを発見し、ポートフォリオをストレステストして、リスクが適切に理解・管理されているかを確認します。
- 市場ショック、分散投資、顧客ごとの目標などを多角的に分析し、より強いポートフォリオの構築を支援します。
- 過去の経験から学び、新たなリスクを早めに捉えることが、予期せぬ市場変動への備えにつながります。
リスク管理に欠かせない「学びの姿勢」
OCIO(外部委託CIO)事業者にとって、リスク管理は単なるチェックリストではなく、長期的な成果を支える仕組みです。優れたリスク管理とは、未来の不確実性に備えるだけでなく、過去の教訓を踏まえて全体像を設計することでもあります。
過去の市場ストレス局面でポートフォリオがどう動いたかを検証することで、普段は見えにくい弱点が浮かび上がることがあります。その分析を支えるのが、独立したリスクチームとデータに基づく深い知見です。
CRO(最高リスク責任者)の役割とは
私が考えるCROの役割には、大きく二つの側面があります。
- 独立した立場で、見落とされがちなリスク(盲点)を見つけること
- ポートフォリオ・マネージャーがリスク分析を活かし、より良い意思決定を行えるよう支援すること
どんなに経験豊富な運用者でも、前提条件の誤りや想定外の出来事を完全に防ぐことはできません。だからこそ、CROのような「健全な懐疑心」を持つ存在が重要になります。
CROは批判者ではなく、運用チームと協力してリスクをより深く理解し、長く続く強いポートフォリオを築くパートナーです。私のチームも、常に投資プロフェッショナルと連携し、取られているリスクが十分に理解された上で管理されているかを確認しています。
多角的にリスクをとらえる
投資目標やリスク許容度は投資家ごとに異なるため、ポートフォリオの構成もさまざまです。そのため、私たちは複数の角度からリスクを分析する多面的アプローチを採用しています。
株式比率や金利感応度、ベンチマークとの乖離といった基本的なリスク要因に加え、流動性の低下、信用リスク、相場の急落といった極端なシナリオも想定します。
これにより、通常時だけでなく、予期しにくい局面でのポートフォリオの動きを把握できます。分散投資も欠かせません。リターン源泉を分けることで、不必要なリスクを抑えつつ成長の機会を逃さない運用を目指します。
過去に学び、過剰反応を防ぐ
市場は同じことを繰り返すことは少ないものの、「似たような反応」を示すことはあります。そのため、歴史から学ぶことはリスク管理で最も有効な手段のひとつです。
たとえば2025年4月、米国が報復関税を発表した際には、株式と債券が同時に下落しました。多くの投資家は2008年の金融危機の再来を懸念しましたが、私たちは2020年初頭のコロナ禍のように、一時的な下落の後に回復する可能性に注目しました。
結果として、私たちは過剰なリスク削減を行わず、V字回復の可能性を想定したポジションを維持。実際にそのシナリオが現実になりました。もちろん、過去が未来を保証するわけではありません。しかし、歴史の知見は冷静な判断を促し、予測困難な局面での行動力を高めます。
モデルでは測れないリスクに備える
最も注意すべきリスクは、往々にして既存のモデルでは見えないリスクです。1990年代後半のドットコム・バブル崩壊では、「ドットコム」という社名を持つだけの企業までが想定外の値動きをしました。これは当時のどのリスクモデルにも反映されていなかった現象です。
このような経験を経て、私たちは運用機関のリサーチチームと連携し、まだ見えていない新しいリスクの兆候を早期に捉えるよう努めています。それらは既存のフレームワークには表れなくても、市場全体に影響を与える可能性があるためです。
まとめ ― 独立したリスクの目線を持つ重要性
独立したリスクチームの使命は、すべての投資判断に「経験からの洞察」と「慎重な分析」をもたらすことです。
継続的で冷静なリスク評価を行うことで、ポートフォリオの強さと持続可能性を高められます。
もしOCIOパートナーが独立したリスク評価体制を持っていない場合、思わぬリスクを抱えている可能性があります。
リスク管理を専門とするCROと独立した分析チームを持つパートナーを選ぶことが、長期的な成果を築く第一歩となるのです。