為替が当該国のパンデミック戦略の成否を反映している可能性について

以下は、2020年8月6日にラッセル・インベストメント(米国)のHPに掲載された英文記事を翻訳したものです。原文はこちら

今年3月、新型コロナウイルスのパンデミックに端を発した市場の混乱が極まった際、為替の動向は主に株式、即ち株式ベータ、あるいは株式市場における「リスクオン」または「リスクオフ」の程度に追従していました。 現在ではこれが、変化しています。 為替は今後ますます、当該国がこのパンデミックにどれだけ上手く対処しているかを反映し始めることになるでしょう。 こうした市場力学の変化の恩恵を享受すると思われる通貨に注目してみました。

各通貨は、「リスクオン(シクリカル)」と「リスクオフ(ディフェンシブ)」を両端とするスケール上に配置できると考えられます。 リスクオン通貨は株式市場が上昇する際、堅調に推移する傾向があります。 リスクオフ通貨については逆のことが言えます。 2020年は、この 株式ベータ に先進国および新興国市場通貨の動きが影響を受けてきました。3月に新型コロナウイルスによる市場の混乱がピークに達した際は、伝統的に資産の安全な逃避先とされる日本円、スイスフラン、米ドルが大幅に上昇しました。

これらのディフェンシブ性を持つとされる通貨、特に米ドルは、米連邦準備制度理事会 (FRB) が中央銀行間流動性スワップで介入していなければ、一段と堅調に推移していたと思われます。 3月に発生したグローバルでの米ドル不足を軽減するため、同流動性スワップにより主要14カ国の中央銀行は民間のマネーマーケットを介さずFRBから米ドルを調達できるようになりました。 パンデミック初期のほぼゼロから5月には約4500億ドルと、この流動性スワップの急激な拡大を見ると、銀行やその他の機関が民間の資金調達市場で米ドルを入手することがいかに困難であるかが伺えます。良い兆候は、流動性スワップの残高がピーク時より半分以下に減少していることで、米ドル不足が大幅に緩和されていることが示唆されています。

株式市場が3月下旬に底入れし、短期金融市場が正常化し始めてから、安全な逃避先とされる通貨は上昇分の一部を吐き出しています。 先進国市場通貨では、過去3カ月間にわたり最も堅調だった通貨の中に以下の典型的なリスクオンの3通貨がありました。 ノルウェー・クローネと、オーストラリアおよびニュージーランド・ドルです。 これらの3か国は、偶然にも 新型コロナウイルスの新規感染率で見たパンデミックの制御にまずまずの成果を上げてきた国でもあります。

2020年7月13日現在、住民百万人あたりの1日の新規感染率はニュージーランドが0.3、ノルウェーが1.3、オーストラリアが7.8です。 対照的に、米国とブラジルでは同率がそれぞれ183、176です1 。 全世界が新型コロナウイルスとの継続的な戦いに直面する中、為替は典型的なリスクオン/リスクオフの特徴だけでなく、パンデミックの管理での成否を今後ますます反映するとラッセル・インベストメントでは考えています

恩恵を享受すると思われる一部の通貨は以下の通りです。

  1. ノルウェー・クローネ。 私たちは、特にノルウェー・クローネを選好します。新型ウイルスの制御についての対応が優れているだけでなく、危機の際に経済を支えることが出来る、国内総生産 (GDP) 比 約300%の資産を有する巨額の政府系ファンドが存在するためです。
  2. ニュージーランド・ドル。 他の西欧諸国とは異なり、ニュージーランドは疫学者の言う 「排除戦略」を遂行し、感染率がゼロ近辺になるまで経済を封鎖しました。 同戦略が奏功したため、ニュージーランドは他の先進国経済よりも早く同国経済を開放し回復できると考えられます。
  3. 日本円。 ディフェンシブ性を有するとされる通貨の中では、米ドルやスイスフランよりも日本円を選好します。安全な逃避先とされる通貨の中では最も割安で、健全な経常黒字国としての恩恵を享受すると判断されるからです。 さらに、日本はニュージーランドやベトナムが奏功してきたようには新型コロナウイルスを完全に駆逐出来てはいないものの、少なくとも今のところ新規感染者数は比較的少なくなっています2

一方、以下に挙げる通貨はパンデミックにおける国の対応動向がリターンに反映され始めた環境下では投資妙味が損なわれているようです。

  • ペルー・ソル。 比較的規模の大きな隣国ブラジルに比べ目立たない存在ながら、ペルーは感染者数急増と経済活動の大幅な落ち込みにより打撃を被りました。 ペルーの通貨のバリュエーションは、私たちの見解では新型コロナウイルスの副次的な影響からの経済リスクを補うほど魅力的には映りません。
  • 米ドル。 通常は有事のドル買いと言われ人気がある通貨ではあるものの、米国における新型コロナウイルスの高い新規感染率という現状と経済封鎖措置が再び実施されるリスクを考えると、米ドルの魅力は減少していると考えられます。 さらに、近年のドルの強さからバリュエーションも割高なままです。 FRBの複数回の利下げにより、G10諸国に対するドルの金利面でのメリットも大幅に失われました。

ユーロ と 英ポンド は上記の2陣営の中間にあります。 ユーロ圏諸国と英国は3月と4月に高い新規感染者数を出しましたが、これまで新たな感染者を大幅に抑え込むことに成功しており、経済を再び開放し始めました。 ユーロと英ポンドは、第2 四半期よりも遅々としたペースであるものの、非常に低い従来のバリュエーションから今後12カ月間に対ドルで回復を続ける可能性があります。

要約しますと、為替動向は今後ますます、当該諸国の新型コロナウイルスのパンデミック対策の有効性をますます反映し始めることになるとラッセル・インベストメントは考えています。新規感染率をゼロ近くまで引き下げた政府の対応による恩恵を享受することが出来る2つの通貨は ノルウェー・クローネとニュージーランド・ドルになると見ています。

当資料における見解は、市場の動向等に応じて随時変化する可能性があり、ページ上部に記述の日付時点のものです。

当資料における予測は様々な分析データを使用し、市場価格やボリュームパターンを予測したものであり、株式市場または特定の投資に関する予測を示しているものではありません。

1 出所: 欧州疾病予防管理センター (ECDPC) 、2020年7月14日現在、7日間移動平均値。
2 日本では新規感染者数は増加している傾向がみられるが、人口10万人当たりの感染者数はグローバルでみて相対的に少ない。

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