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23
ANNUAL
グローバル・
マーケット・
アウトルック  
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アウトルック

FROM DARKNESS TO DAWN(暗闇から夜明けへ)

ラッセル・インベストメントは、インフレのピークアウトに伴い、2023年中に世界の中央銀行が金融緩和への政策転換を次第に展望できるようになると見ています。米国が景気後退期に入る可能性は高く、株式市場は苦戦を強いられるかもしれません。しかし、2023年末には世界的な景気回復が視野に入ってくると考えています。

headshot of Andrew Pease, Global Head of Investment Strategy

アンドリュー・ピーズ

投資戦略グローバル・ヘッド

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"2023年の焦点は、各国中央銀行が利上げ局面から脱却し、金融緩和を開始できるほどインフレ圧力が弱まるかどうかにあります。"

- アンドリュー・ピーズ

はじめに

2023年 グローバル・マーケット・アウトルック 
FROM DARKNESS TO DAWN(暗闇から夜明けへ)

「地獄を行くなら立ち止まってはならない(“if you are going through hell, keep going”)」これはウィンストン・チャーチルの名言です。しばしば引用されますが、今年はほぼすべての主要上場資産クラスがマイナスリターンとなり、投資家にとってはまさに地獄のような年でした。ここ2カ月の市場の反発で幾分の安心感も生じていますが、最悪の時期が過ぎ去ったと確信するのは時期尚早とも考えられます。

経済に関するニュースは今後悪化していく可能性が高い状況です。欧州と英国ではおそらく景気後退が始まっています。米国についても、金融引き締めの状況を見る限り、軽度の景気後退は少なくとも始まっていると考えられます。中国はゼロコロナ政策によるロックダウンや不動産市場の壊滅的状況から完全に脱却できる時期が見通せません。例外はいつものように日本で、金融引き締めは依然として実施されていませんが、30年近く続いてきたデフレ心理がインフレ進行により払拭される可能性も出てきました。

言うまでもなく、市場には先行性があり、通常は景気動向を先行して織り込む傾向があることを考慮すると株式市場は既に大底を打った可能性があります。2023年における米国の景気後退が軽度なものに留まれば、その可能性は高くなると考えられます。一方で、軟調な経済データは米連邦準備理事会(FRB)の政策転換の前兆と見る現在の「悪い知らせは良い知らせ(‘bad news is good’)」というシナリオから、利益と雇用の大幅な減少に対する懸念がさらなる市場の低迷を招く、「悪い知らせは悪い知らせ(‘bad news is bad’)」というシナリオに、市場の関心が移行する可能性もあります。

2023年にインフレはピークアウトするのか?

2023年の焦点は、各国中央銀行が利上げ局面から脱却し、金融緩和を開始できるほどインフレ圧力が弱まるかどうかにあります。世界的な需要の鈍化に伴い、インフレ率は低下基調を辿り、このことにより、各国中央銀行は最終的に政策転換し、次の景気拡大局面に向けて体制を整えることができると考えられます。市場と経済は周期的に変化します。市場の最悪期が過ぎ去ったという確証はありませんが、次の景気回復局面の兆しが見られます。2022年に損失を負った投資家も、チャーチルの言葉にならって、2023年に向けて進み続けることが重要です。

2023年の主な資産クラスに対する見通しは以下の通りです:

  • 債券市場は2022年に最悪期を迎えたが、今後は回復(利回りは低下)に向かう。

  • 長期債利回りは景気後退リスクの顕現に伴い低下する。2023年末までに米国10年物国債利回りは3.3%水準に低下する。

  • 景気後退リスクがある中で、株式の上昇は限定的である。

  • 米ドルは、中央銀行による利上げが一巡し、投資家が世界経済の回復に注目し始めるに伴い、2023年後半には下落する可能性がある。

  • このため、米国以外の先進国市場株式が、景気敏感特性および相対的な割安感のあるバリュエーションにより、米国株式をアウトパフォームする可能性がある。

  • 米ドルの下落が新興国市場のアウトパフォームにつながる可能性がある。

  • 2023年はリスク分散が必要となり、(米国においては)株式60%、債券40%の伝統的なバランス型ポートフォリオが再び奏功する可能性がある。

米国の景気後退は避けられない見通し

2022年には、ロシア・ウクライナ紛争によるエネルギー価格の急騰、インフレの上昇、主要中央銀行による利上げなどが市場のテーマとなりました。FRBのパウエル議長は、1980年代前半のボルカー元FRB議長以来最も強力な金融引き締めを実施する過程にあると考えられます。FF金利は現在の3.75%~4.0%の誘導目標レンジから2023年3月までに5.0%まで上昇すると市場は予想しています。

景気後退のリスクを最も明確に示す指標はイールドカーブです。下図は10年国債と2年国債とのスプレッド(利回り格差)を表しています。負のスプレッド(逆イールドの状態)は、FRBが大幅な金融引き締めを実施したために(景気が冷やされ)金利が将来低下すると債券投資家が予想していることを意味しています。

米国のイールドカーブと景気後退期

Chart 1 Global inflation rates

出所:リフィニティブ データストリーム、2022年11月25日時点

インフレや経済成長率などの指標が今後数カ月の間に低下し、景気後退が始まる前にFRBが積極的な利上げを継続する方針を転換する可能性はまだ残っています。インフレが沈静化すれば実質所得や需要は増大します。その場合では景気後退の回避もありえるでしょう。しかし、現時点ではそうした状況が実現する可能性は低下していると考えられ、また、軽度の景気後退をも防ぐことが可能となるタイミングでFRBが政策転換することも想定しづらい状況と思われます。

米国の景気後退はどの程度のものになるのか?

次の問題は景気後退の種類、つまり景気後退が軽度なものか深刻なもののどちらかということです。景気後退は第二次世界大戦以降13回発生していますが、これらのGDP成長率過去実績値の中央値は-2.6%であり、また同期間中に失業率は3.6%幅で上昇しています。

大規模な景気後退が発生するリスクは、FRBによる金融引き締めの規模と速さ、そして金融引き締めにより予期せぬ事態が生じるかどうかに依存しています。英国では、年金基金が採用していたレバレッジ戦略(LDI)に関する混乱が9月に発生し、そうした予期せぬ事態を既に経験しています。その原因となったのは、短命に終わったトラス政権が大幅減税を含む財政政策を発表したことによる英国債利回りの急騰でした。また、これを受けて暗号資産価格も大きく下落しました。これまでのところ、伝統的な金融セクターや経済全体と暗号資産との連動性は限定的であるように見えますが、これら2つの事態により、金利上昇時における隠れたレバレッジのリスクが明るみに出たと考えられます。

ラッセル・インベストメントは、次の景気後退が比較的軽度に済むという見通しを基本観としています。家計と企業のバランスシートは良好であり、インフレ動向を除けば明らかな経済的不均衡も見られません。2023年の景気後退は、近年の景気後退の平均と比較してGDPの下落率や失業率の上昇幅が小さいと予想するのが現時点では妥当と考えています。

投資家の立場から見ると、緩やかな景気後退は現実的に最善の結果と言えるのかもしれません。比較的低位のインフレが持続する条件は、賃金上昇圧力が後退することです。アトランタ連銀の賃金トラッカーでは、年初から10月までの賃金上昇率は+6.7%となっています。また、10月の失業率は3.7%で、これは約50年振りの低水準です。ソフトランディングによる景気後退の回避が実現しない場合におけるリスクは、失業率が十分に上昇しないため、インフレ率が2%近辺まで下落しない場合です。その場合、2023年初にFRBは利上げを一旦停止する可能性があるものの、インフレが適正水準を上回ったままであれば、年後半には金融引き締めを再び実施する可能性が残ると考えられます。仮にそうなればFF金利は6%に向けて上昇する可能性があり、2024年に大規模な景気後退と市場の下落を招く下地となることが懸念されます。

2023年において景気後退が軽度に留まれば、失業率は少なくとも2%程度上昇し、FRBが金融緩和を開始できるようなディスインフレ圧力が生じると考えています。

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"2023年の景気後退は、近年の景気後退の平均と比較してGDPの下落率や失業率の上昇幅が小さいと予想するのが現時点では妥当と考えています。"

- アンドリュー・ピーズ

TINAからTARAの時代へ

2022年の金利上昇圧力により、債券市場は最悪のリターンを記録しました。グローバルな債券のベンチマークであるブルームバーグ・グローバル総合インデックスの10月までの年初来リターンは-20.8%となっています。それ以前における12カ月リターンの最低値は2015年の-7%であり、今回はそれを大幅に下回る結果となりました。

グローバル債券:12ヵ月リターンの推移

Chart 1 Global inflation rates

出所:リフィニティブ データストリーム、2022年11月23日時点。 インデックスは資産運用管理の対象とはなりません。
またインデックス自体は、直接投資の対象となるものではありません。

米国における株式60%、債券40%で構成した伝統的なバランス型ポートフォリオの復権はあるのか?

債券市場の厳しい調整局面における唯一の明るいニュースは、投資家が超低金利により株式投資や高リスクの利回り追求を選択せざるを得なかった「TINA」(There Is No Alternative:株式以外に選択肢なし)の時代がついに終わりを迎えつつあるということです。金利の上昇に伴い、現在の投資環境を表すのにふさわしい表現は「TARA」(There Are Reasonable Alternatives:合理的な選択肢あり)へと変わってきました。ブルームバーグ・グローバル総合インデックスの利回りは2009年以来の最高値である3.6%を11月末に記録し、米国ハイイールド・インデックスの利回りは9%近辺まで上昇しています。また、英国の投資家は、英国債ブロード・マーケット・インデックスの4%近い利回りを享受できる状況にあります。

記憶に残る最悪の1年を経て「TARA」の投資環境が戻ってきたことにより、(米国においては)株式60%、債券40%で構成した伝統的なバランス型ポートフォリオの復権が予想されます。

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"記憶に残る最悪の1年を経て、株式60%、債券40%で構成した伝統的なバランス型ポートフォリオの復権が予想されます。"

- アンドリュー・ピーズ

地域別の所見

米国

米国市場にとってインフレは今も最大の関心事です。インフレ圧力により、FRBは経済成長より物価の安定を優先せざるを得なくなり、さらにそれが企業収益や資産価格の見通しを暗くしています。高いインフレが長期間続いているため、金融政策は既に危険な領域に押しやられています。今後12カ月において最も可能性の高いシナリオは、米国で景気後退が発生することであるとラッセル・インベストメントは考えています。

良いニュースは、民間セクターのバランスシートが健全であること、期待インフレが1970年代よりは安定的であること、変動が激しいインフレ要因(耐久消費財価格の上昇など)がグローバル・サプライチェーンの回復により長期的なデフレに向けて反転していくと考えられることです。これらの要因は、大規模な景気後退の見通しに反論する根拠となります。労働市場は引き続き加熱状態にあり、その不均衡を是正するためには、景気の冷却と失業率の上昇など、ある程度の痛みが必要になります。

市場はそのようなリスクを既にある程度織り込んでいると考えられますが、悲観的な投資家心理は過度に保守的な資産配分戦略を支援しないものです。株式市場の見通しは、景気後退のダイナミクスと、売られ過ぎ圏にあるという市場心理とが綱引きし、交錯しています。しかし、米国債は、景気後退を展望してプラスの実質利回りを示しており、魅力的な投資対象であると考えられます。

black and white map of United States

ユーロ圏

ユーロ圏の見通しは僅かに改善しましたが、景気後退は避けられない情勢です。景気見通しが改善した要因は、冬季開始前に天然ガスの備蓄が整ったこと、これまでのところ気温の低下が緩やかであること、また資本財セクターにおいて省エネ対策が導入されたことです。エネルギー供給制限は不要となる模様であり、エネルギー消費の大きい業種では強制的な操業停止がこれまで懸念されていましたが実施には至らないと考えられます。問題になるのは、気温が大きく低下し、家計の暖房利用が増加する場合ですが、エネルギーショックに関する最悪の事態はこれまで生起していません。

ユーロ圏のインフレ率は、総合指数で10.6%に達し、食品およびエネルギーを除くと5.0%に達しました。しかしユーロ圏の景気減速に伴ってインフレ率は低下し、2023年末までに2%に近づいていく可能性があると考えられます。これらの見通しはエネルギー価格が安定しているかどうかにも依存します。天然ガス価格が来年さらに上昇する場合には、インフレ率は高水準に留まり、ユーロ圏の景気後退が長期化する要因になると考えられます。

欧州中央銀行(ECB)は、労働市場の逼迫(欧州の失業率は6.6%で共通通貨の発足以来最低)を考慮して、さらなる金融引き締めを行う可能性があります。市場はECB預金金利が2023年第2四半期までに2.75%~3.0%の範囲でピークを迎えると予想しています。景気後退の見通しからすれば、ECBが引き上げ可能な上限は当該水準近辺であると考えられます。しかし、欧州の経済成長率は来春には回復することが見込まれます。インフレ率は低下基調を辿り、ECBの金融引き締めも限定的なものになると見ています。

black and white map of Europe

英国

英国では、金融引き締め、財政引き締め、エネルギー価格ショック、そしてブレグジットによる供給面の制約が重なっていることで景気後退が長期化する可能性が高く、厳しい見通しとなります。GDPはまだ新型コロナウイルス感染拡大以前の水準を回復していませんが、労働力不足を背景に失業率は1973年以来の低水準で推移しています。

スナク新首相は、短命だったトラス政権が導入した減税策を撤回し、若干の増税を行いました。これにより英国債市場は鎮静化し、住宅ローン金利の上昇圧力も減退しました。賃金引き上げ圧力の増大がインフレの鎮静化を妨げているため、市場はBOEの基準金利が現在の3%から2023年第2四半期までに4.5%に引き上げられることを織り込んでいます。ラッセル・インベストメントでは、景気動向を鑑みるとBOEがこれだけの幅で利上げをできるかについては疑問視しています。

black and white map of United Kingdom

日本

日本に関しては、2023年に緩やかな経済成長が見込まれます。内需が弱まっており、輸出需要も鈍化しています。世界の他の地域とは異なり、日本には依然として余剰生産能力があり、このことは金融引き締めが過度なものとなるリスクに直面していないことを意味しています。

インフレ率は上昇していますが、その大半は輸入インフレが原因です。日本はエネルギー輸入国であり、円安の進行が輸入物価を引き上げています。

日銀が緩和的金融政策を堅持したため、日本は今年全体を通じて先進国市場における例外的存在でした。黒田総裁が2023年3月に退任するまでの間は金融政策に変更がないことが予想されます。また、それ以降に金融政策が変更される場合でも微調整に留まると見られます。円安に加えて最近の入国規制の緩和により観光業が復活すれば、経済成長の追い風となる可能性があります。

日本株式には欧州株式や英国株式と比較して僅かに割高感が認識されますが、円相場は大幅な割安圏で推移しており、各国中央銀行による利上げサイクルの一巡や世界経済の減速から恩恵を受けると考えられます。

black and white map of Japan

中国

2023年にはまた、2022年を通して厳しい規制下にあった中国経済が、最終的にゼロコロナ政策から脱却するとラッセル・インベストメントは見ています。中国政府は制限の緩和を開始する予定ですが、ゼロコロナ政策は今冬を通じて一定程度継続するようです。

中国における2023年の注目材料は、苦戦する不動産市場です。中国政府は新たな景気刺激策を打ち出しましたが、持続的な回復を生み出すには十分な規模とは考えられません。したがって住宅セクターに対する信頼感の改善と経済再開時の消費押し上げを狙った新たな政策が打ち出されることが予想されます。小売売上高は、ゼロコロナ政策や消費者信頼感の低さから、過去のトレンドを大きく下回って推移しています。

また、米国による半導体の対中輸出制限措置を受けて、政府が半導体投資に関する新たな発表を行うかどうかにも注意する必要があります。

中国株式はこれまで大きく売り込まれていることから割安感が認識され、ラッセル・インベストメントが採用するアクティブ運用機関は、主として超過収益獲得の観点からも同株式市場に注目しています。

black and white map of China

カナダ

2022年のカナダ経済は予想以上に良好でしたが、2023年の景気後退期入りは避けられない情勢です。強い金融引き締め政策の影響が遅行して債務過多な状態にある家計に及ぶことが予想されることから、2023年の景気後退期入りは避けられないと考えられます。加えて、世界経済の減速がコモディティ価格の足かせとなり、輸出部門は苦戦することが予想されます。

インフレはピークに達しましたが、カナダ中銀(BoC)が政策を転換するには、インフレ率が1%~3%のレンジに向けて低下していく必要があります。インフレが継続する場合、景気が減速しているとしても金融引き締め政策は続くことが予想されます。しかし、BoCのマックレム総裁は、利上げのサイクルが最終段階に近づいていると述べていることから、BoCは次回の0.5%幅の引き上げを最後に、利上げを一旦停止すると見られます。この利上げが実施される場合、目標金利は2023年前半に4.25%に達しますが、景気後退に伴ってインフレ率が低下していくことにより、BoCは2023年後半には金融緩和に転じると見ています。

カナダの金融市場では、変動性の大きい状況が続くことが見込まれます。投資家にとってポジティブな点は、債券利回りが過去10年で最も魅力的な水準にあるということです。カナダのベンチマーク債券インデックスは4%を超える利回り水準で推移しており、これは2008年後半以来の高水準です。獲得可能なインカムの水準は上昇し、景気後退がもたらすリスクオフ・センチメントに対処する多様な分散投資の選択肢が得られていることになります。カナダ株式は、極端に割高なバリュエーション水準を示してはいないものの、景気循環の影響を受け易い特性があります。中期的な見通しは、世界が低炭素のエネルギー源への転換を進める中、天然資源需給のダイナミクスにも依存すると考えられます。

black and white map of Canada

オーストラリアおよびニュージーランド

オーストラリア経済は、オーストラリア準備銀行(RBA)による利上げの効果が現れ、経済活動再開の効果が低減する中で、2023年には減速する見通しです。電力価格は最大で80%の上昇が予想されており、消費者支出を抑制する要因になると考えられます。インフレ率はピークに達したと見られ、RBAは他の主要中央銀行に先駆けて利上げを一旦停止することが可能になると思われます。RBAの政策金利について、市場は4%近辺がピークになると予想していますが、3%~3.5%の範囲となる可能性が最も高いと考えられます。中央銀行があまり積極的に金融引き締めを行わないということは、オーストラリアが欧州や米国よりも景気後退期入りのリスクが低いということを意味します。オーストラリア株式は、もはや世界株式に比較した割安感が認識されないため、景気見通しの改善はある程度株価に織り込まれていると考えられます。豪ドル相場は、中国における経済活動の再開や、各国中央銀行の利上げサイクルが最終段階に近づいていることに追い風を受けると考えられます。

ニュージーランド経済の見通しは、ニュージーランド準備銀行(RBNZ)が積極的に利上げを行っていることから、オーストラリアに比べて不透明です。住宅指標は既に大きく下落していますが、2023年前半を通じて低下基調が継続することが予想されます。RBNZの政策金利について、市場は5.5%近辺がピークになると予想しています。つまり、今後さらに1%の利上げが実施される見通しです。しかし、建設活動は政府支出による需要に支えられていると考えられます。ニュージーランドでは2023年中に総選挙が実施される予定であり、実施期限は2024年1月13日となっています。世論調査では、アーダーン首相率いる労働党と中道右派である国民党との接戦が予想されています。

black and white map of Australia/New Zealand
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"米国債は、景気後退を展望してプラスの実質利回りを示しており、魅力的な投資対象であると考えられます。"

- アンドリュー・ピーズ

資産クラスの選好

ラッセル・インベストメントの景気サイクル(中期/景気循環)、バリュエーション(長期/割高・割安)、センチメント(短期/投資家心理)(CVS)から成る投資戦略決定プロセスでは、グローバル株式の魅力度はニュートラルと評価しています。

景気サイクルの見通しが改善する時期は?

景気後退の可能性が高い景気サイクルの見通しは、株式市場にとって逆風です。しかしこの逆風はFRBが金融引き締め政策を終了したことが判明すれば改善に向かう可能性があります。利下げが視野に入ってくる時期が転換点になると見ています。

米国株式は依然として割高か?

足もとの株式市場のバリュエーション評価は難解です。米国大型株指数であるS&P500指数は、11月後半現在で、年初の最高値から16%下落した水準にあります。予想PER(株価収益率)は年初の21.5倍から11月後半には17.5倍へと低下しましたが、過去標準から見ればまだ高い水準です。ラッセル・インベストメントは、米国株式はやや割高と判断しています。一方、非米国株式は適正水準にあると見ています。

短期的な投資家心理を示すセンチメント指標はポジティブなシグナルを発しているか?

センチメント指標であるラッセル・インベストメントのコンポジット・コントラリアン指標は、11月後半現在、株式市場が僅かながら売られ過ぎ圏に位置していることを示唆しています。同指標は今年に入って2回程、株式市場が極端に悲観的な水準に達したことを示しました。センチメント指標がこれほど極端になると、市場心理に持続的な影響を与えることもありますが、ラッセル・インベストメントは現時点で、センチメントは株式に支援的な状態であると考えています。

CVSに基づく投資戦略決定プロセスを通じて、ラッセル・インベストメントは、グローバル株式を、景気サイクル上(中期)は改善方向ながらネガティブ、バリュエーション上(長期)は適正からやや割高、センチメント(短期)はポジティブ、とそれぞれ評価しています。

国債利回りは魅力的か?

一方、国債はCVSの観点から見て魅力的な水準と見ています。インフレがピークアウトし、中央銀行が利上げのペースを減速し、2023年前半には一旦停止することが予想されることから、景気サイクルは、債券投資に支援的な状況へと変化してきています。バリュエーションは今年の利回り上昇を受けてポジティブなものに転じています。センチメントについても、ほとんどの投資家が短期ポジションを保持している(つまり利回りの上昇を予想している)ことが米国商品先物取引委員会のデータで認識されることから、コントラリアン的観点からも支援的な状態にあると判断されます。

コンポジット・コントラリアン指数

Chart 4 Composite contrarian indicator

出所:ラッセル・インベストメント、2022年11月22日時点で標準偏差+1.24。コンポジット・コントラリアン指標は市場参加者の多くがどの程度悲観的または楽観的であるかを指数化したものです。

2023年の各資産クラスに対する見通しは以下の通りです。

  • 景気後退のリスクがある中で、株式の上値は限定的と見ています。非米国先進国株式は米国株式より相対的に割安と判断されますが、FRBがタカ派色を後退させ米ドル安が進むまでは、ニュートラルな戦略見通しを維持します。

  • 新興国市場株式が回復する条件としては、中国で大規模な景気刺激策が発動され、FRBが金融引き締めのペースを減速させ、エネルギー価格が低下し、米ドルが弱含むことが必要と考えられます。当面はまだニュートラルな評価が妥当と判断しています。

  • ハイイールド債投資適格債のスプレッドは長期平均に近い水準ですが、米国ハイイールド債の利回りは約8.5%と魅力的と判断される水準です。米国が景気後退期入りする確率が高まり、デフォルト率上昇の恐れが生じれば、クレジット・スプレッドは拡大圧力を受けることになります。クレジット市場の見通しについてニュートラルとしています。

  • 各国国債のバリュエーションは、利回りの上昇を受けて改善しています。米国債、英国債、ドイツ国債には割安感がありますが、日本国債は日銀が0.25%の長期金利の上限を設定しているため、まだ割高圏にあると見ています。ラッセル・インベストメントが判断する日本国債利回りの適正水準は0.50%程度です。過去数ヶ月間、ほとんどの市場で債券利回りが急上昇しました。しかしインフレ率はピークに近いと考えられ、市場は既に各国中央銀行のタカ派姿勢を織り込んでいることから、国債がさらに大きく売り込まれるリスクは限定的と見ています。

  • 実物資産:不動産投資信託(REIT)はグローバル株式や上場インフラストラクチャーと比較して魅力的なバリュエーション水準と考えられ、債券利回りの低下による恩恵を受けると見ています。コモディティについては、世界経済の減速が予想されていることから、強弱まちまちの見通しとなっています。中国でロックダウンが解除され、建設活動が活発になれば、工業用金属の需要が増加することが予想されます。エネルギー市場の見通しは容易ではありません。景気後退により原油需要は減少することが予想されますが、ロシア産原油に対する上限価格設定など新たな制限が設けられることになれば、供給側が引き締まる可能性もあると考えられます。

  • 米ドルは、FRBのタカ派的スタンスやロシアのウクライナ侵攻を受けた安全逃避先としての魅力から2022年を通して上昇してきました。2023年初頭にインフレ率の低下が始まり、FRBのタカ派姿勢が後退すれば、米ドルが軟化する可能性があります。このドル安シナリオの場合、その恩恵を受けるのは、主にユーロ日本円になると見ています。また、日銀の黒田総裁の後任総裁が現在のイールドカーブ・コントロールからの転換を実施すれば、円高が急速に進行する可能性もあると見ています。

2022年11月25日までの累積リターン

Chart 5 Year-to-date returns through Sept. 16, 2022

出所:リフィニティブ データストリーム、2022年11月25日時点

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"CVSに基づく投資戦略決定プロセスを通じて、ラッセル・インベストメントは、グローバル株式を、景気サイクル上(中期)は改善方向ながらネガティブ、バリュエーション上(長期)は適正からやや割高、センチメント(短期)はポジティブ、とそれぞれ評価しています。"

-アンドリュー・ピーズ

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