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2022
Global
Market
Outlook
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Global
Market
Outlook

Fear of the known(既知の恐怖)

景気後退懸念と中央銀行の金融引き締めにより、市場のボラティリティが高まっています。ラッセル・インベストメントは、株式市場は売られ過ぎ圏にあり、米国のコアインフレはピークに達したと見ています。今後、市場は安定を取り戻し、2022年後半には回復する可能性があると考えています。

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headshot of Andrew Pease, Global Head of Investment Strategy

アンドリュー・ピーズ

投資戦略グローバルヘッド

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"ラッセル・インベストメントは、米連邦準備制度理事会(FRB)による金融引き締めのペースと規模を考慮すると、2023年後半までに米国が景気後退入りするリスクがあると考えています。"

- アンドリュー・ピーズ

はじめに

※当資料は、市場動向につきましてラッセル・インベストメントが2022年6月27日に発行した英文のレポートを抄訳したものです。内容は作成 時点 のもので今後市場や経済の状況に応じて変わる可能性がありま す。また、 当見解は将来の結果を保証するものではありません。

6月17日時点でMSCIオール・カントリー・ワールド・インデックスは年初来で21.7%下落、ブルームバーグ・グローバル国債ベンチマークも約9%下落しており、2022年前半は厳しい状況となりました。市場は中国における新型コロナウイルス感染拡大に伴う新たなロックダウンと景気減速、ロシア・ウクライナ戦争、インフレ高進、中央銀行による金融引き締めなど、様々な悪材料に直面してきました。

しかし現在、少なくとも市場はこれらの諸問題を十分に理解しつつあります。年初の時点では、インフレがどの程度進むのか、それに対して各国中央銀行がどこまで積極的に対応するのかが不透明でした。また、ロシアによる全面的なウクライナ侵攻もほとんど予想されていませんでした。現在の市場は、ロシア・ウクライナ戦争が始まり、米国のコアインフレもピークアウトの兆しを見せる中、世界の中央銀行の多くが積極的に金融引き締めを進めることを織り込んでいます。

テクニカル、ポジショニング、投資家調査などの幅広い指標を勘案してS&P 500®指数に対する投資家のセンチメントを測定するラッセル・インベストメントのコンポジット・コントラリアン指標は、米国株式が大きく売られ過ぎていることを示唆しています。このことは、市場は悪材料を織り込み済みであり、インフレ動向や成長率が現在懸念されている状況よりも良いことが判明する場合には、株価が上昇に向かう可能性があるという一定の安心感を提供するものです。

もちろん、投資家がパニックに陥り、投げ売りに転じる可能性は残ります。2020年3月のコロナショック時には、実際そのような事態が発生しました。しかし、過去の市場の調整からの教訓は、パニックが長期投資家に最良の投資機会をも提供し得るということです。

主な不確実性は、米国経済の見通しです。ラッセル・インベストメントは、米連邦準備制度理事会(FRB)による金融引き締めのペースと規模を考慮すると、2023年後半までに米国が景気後退入りするリスクがあると考えています。深刻な景気後退に陥る場合、それは株式市場の大規模な下落を引き起こす可能性がありますが、現時点では景気減速または緩やかな景気後退となる可能性が最も高いシナリオと予測しています。米国における家計と企業のバランスシートは健全であるため、深刻な景気後退には陥らない可能性が高いと見ているからです。

一方、米国経済と市場に関するアップサイドリスクは、米国のコアインフレが既にピークアウトしている可能性から生じると見ています。労働市場の逼迫が緩和される場合、FRBは今年後半にタカ派色を弱める可能性があります。

インフレの高進、成長率の鈍化、そしてFRBがタカ派色を強めて深刻な景気後退を引き起こす可能性について投資家は懸念しています。ラッセル・インベストメントでは、コアインフレ率は今年後半にかけて低下していく可能性があると見ていますが、重要なことはどの程度低下していくかとの点です。低下傾向が続けば、FRBによる過度な金融引き締めや深刻な景気後退に対する懸念は緩和されると見ています。しかし、それが明らかになるまでは、市場のボラティリティが高い状態が続くと考えられます。

インフレのピークアウトは近い

新型コロナウイルス感染拡大に伴うロックダウンが緩和され、モノやサービスに対する需要が回復する一方で、サプライサイドのボトルネックや労働者の労働市場への復帰が遅延したことなどから供給が制約された結果、2021年中にインフレ圧力が急激に高まりました。

今年は、ロシア・ウクライナ戦争によりエネルギー価格が急騰し、中国のゼロ・コロナ政策によるロックダウンでサプライチェーンの混乱も深刻化しており、インフレはさらに悪化しました。米国では、活況な労働市場で賃金が上昇した結果、インフレ圧力が一段と強まっています。

世界のインフレ率

Chart 1 Global inflation rates

出所:リフィニティブ・データ・ストリーム 2022年5月13日時点

ロシアの石油輸出に対する国際的な制裁措置によりエネルギー価格がさらに上昇した場合、消費者物価指数が一段と上昇する可能性があると見ています。一方で、食品価格とエネルギー価格を除いたコアインフレ率は、米国ですでにピークアウトした可能性があります。

下図は、米国コアインフレ率(年率)に対する寄与度を示しています。耐久財(自動車、家電、コンピューターなど)の価格が、コアインフレ率上昇の最大の要因となってきました。これらの商品に対する需要は、サプライチェーンの制約により供給が滞っていたパンデミック中に上昇しました。パンデミック前には耐久財の価格は低下傾向にあったため、サプライチェーンが正常化し、需要がモノからサービスにシフトするにつれて、再び低下し始める可能性があります。モノの価格低下がサービスの価格上昇を相殺し、コアインフレ率は低下傾向となる可能性が高いと見ています。

しかし、FRBにとっての問題は、賃金動向に敏感なサービスセクターや家賃・宿泊費におけるインフレは硬直的 な傾向があるということです。コアインフレ率は低下していくと見られますが、FRBが積極的な金融引き締め策を停止する程には低下しない可能性もあります。サービスの価格動向は、労働市場の過熱感が和らぎ、賃金上昇圧力を緩和するかどうかに大きく依存します。

実際、労働市場がある程度鎮静化する可能性は高いように見えます。賃金の上昇は、労働参加率を高めますが、特に、これまで労働市場への復帰に最も消極的だった低賃金労働者層の賃金上昇幅が最も大きいことがこの見方を支持します。FRBによる利上げへのシフトも、総需要を減速させ、労働市場の鎮静化につながるでしょう。FRBが適切なバランスを保ちながら金融政策を実施することに成功するかどうかが、今後数ヵ月間の大きな注目材料です。

耐久財価格の上昇が米国のコアインフレ率上昇の最大要因

Chart 1 Global inflation rates

出所:リフィニティブ・データ・ストリーム 2022年5月15日時点 CPI(Consumer price index)=消費者物価指数

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"モノの価格低下がサービスの価格上昇を相殺し、コアインフレ率は低下傾向となる可能性が高いと見ています。"

-アンドリュー・ピーズ

ソフト・ランディング、ソフト寄りのランディング、それともハード・ランディング?

FRBによる金融引き締めのペースと規模によっては、米国経済が来年後半までに景気後退に陥る可能性も否定できません。債券市場では、FF金利が2023年半ばまでに3.75%に達すると予測されており、史上最速ペースの引き締めになる可能性があります。

FRBのパウエル議長は先日、景気後退を回避できる「ソフト・ランディング」や、軽度の景気鈍化が短期間発生するだけの「ソフト寄りのランディング(softish landing)」について、FRBは過去に成功させてきた実績があると主張しました。FRBは金融引き締めを実施する際には「ソフト・ランディング」を常に目指します。しかし、現在の企業部門や家計部門における重大な不均衡がないことを考えると、今回FRBは深刻な景気後退を回避することにのみ注力するのかもしれません。

家計部門は良好な状態にあります。米国の国内総生産(GDP)に対する家計部門の債務総額はこの20年間で最低の水準にあり、パンデミック中に蓄積された貯蓄超過額は未だに2兆ドルを超えています。

企業の財務状態も健全です。下図はFRBのデータベースから取得した、企業部門の資金調達ギャップに関するデータです。資金調達ギャップとは、資本支出と内部資金(主に内部留保)との差額です。この数値がプラスであれば、企業部門は資本投資(設備投資)を賄うために、借入や新株発行などによる外部資金調達を必要としていることを意味します。過去50年間で発生した景気後退については、いずれも資金調達ギャップが大きくプラスになることが先行していました。つまり、企業部門が過度に拡大した後、景気後退時には大幅な縮小を余儀なくされていました。現在は資金調達ギャップが大きくマイナスになっており、設備投資を行ったとしても十分賄えるだけの準備金を企業部門は貯め込んでいる状態を示しています。

資金調達ギャップがマイナスであっても、FRBが積極的な金融引き締めを実施する場合には、景気後退を回避できるとは限りません。しかし、長期に亘る深刻な景気後退の可能性は低いと考えられます。

米国企業部門の資金調達ギャップ

Chart 2 Atlanta Fed’s wage-growth tracker shows surge

資金調達ギャップ=資本支出ー内部資金。出所:米国連邦準備制度理事会、グレー部分は景気後退期を示す。

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"現在の企業部門や家計部門における重大な不均衡がないことを考えると、今回FRBは深刻な景気後退を回避することにのみ注力するのかもしれません。"

- アンドリュー・ピーズ

地域別の所見

米国

インフレ率が大幅にオーバーシュートし、高止まりしていることが、米国経済の見通しに深刻な問題をもたらしています。金融政策は9月までに緊縮的な領域に入ると見られます。インフレ圧力が賃金動向に敏感なサービスセクターや家賃・宿泊費など硬直性のある分野にまで及びつつあることから、FRBの方針転換はやむを得ないところですが、この転換は経済や市場に対して重大なリスクをもたらします。

景気サイクルの終盤に入ったかを測る基準としてラッセル・インベストメントが注目している2つの現象、つまり余剰生産能力の枯渇、及び、緊縮的金融政策スタンスは、年末までに現れることが予想されます。FRBは「ソフト・ランディング」が可能と考えていますが、歴史を振り返れば、その達成は容易ではないことも分かります。ラッセル・インベストメントでは2023年半ばまでの景気後退リスクは約30%と見ています。既に通常より高い水準にありますが、FRBが方針転換により「パンチボウルを片付ける」 ことになれば、今後数ヵ月でさらに上昇する可能性があるでしょう。

好材料としては、年初来の米国株式の大幅下落により、多くのリスクが株価に織り込まれていると考えられることが挙げられます。米国株式のバリュエーションは、必ずしも高いものではなくなりました。また、ラッセル・インベストメントのコンポジット・コントラリアン指標からは、非常に悲観的な市場心理がうかがえます。これはラッセル・インベストメントの投資決定プロセスにおいて、ポジティブな戦術的シグナルです。景気サイクル上の懸念が存在し、一方、センチメントがポジティブなシグナルを示す状況において、ラッセル・インベストメントはポートフォリオにおける米国株式へのエクスポージャーに対して適切なバランスを取ることを重視し、ニュートラルとしています。一方、米国債については、期待リターンと分散投資の両面において投資妙味が高まりつつあると見ています。米国10年国債利回りは3.5%であり、ラッセル・インベストメントが適正水準と考える利回りを大きく上回り、FRBの目標水準も超えて推移しています。

black and white map of United States

ユーロ圏

ユーロ圏の経済見通しについては、引き続き暗雲が垂れ込めています。ロシア・ウクライナ戦争は解決の兆候がなく、インフレ圧力は上昇し、欧州中央銀行(ECB)はタカ派色を強め、イタリア国債のスプレッド拡大により欧州域内周縁国の信用問題が再燃しています。

欧州にとって最も大きなリスクは、ロシアがEUによる石油禁輸措置に対抗して天然ガス供給を途絶することです。欧州はロシア産天然ガスに大きく依存しているため、報復措置や天然ガス価格の大幅な上昇は、ほぼ確実に欧州を景気後退に陥れると考えられます。

欧州では、欧州中央銀行(ECB)がタカ派的スタンスに転じており、7月に0.25%の利上げを行う可能性や量的緩和策の終了を示唆しています。先物市場では、ECBの政策金利が現在の-0.5%から、2023年半ばまでに2.0%に上昇すると予想されています。一方、ユーロ圏の5月の消費者物価指数の前年同月比の伸び率は8.1%に達し、米国や英国に匹敵する水準となりました。しかし、食品とエネルギーを除いたコアインフレ率は3.8%と、米国や英国の6%前後よりは抑えられています。そのため、ECBは、FRBやイングランド銀行(BoE)よりも緩やかな金融引き締め政策を実施していくことが可能と考えられます。

ECBのもう一つの問題は、イタリアの債務リスクが再燃していることです。イタリア国債とドイツ国債のイールド・スプレッドはこの2か月間で大きく拡大しています。これに対応すべくECBは緊急理事会を開催しており、必要に応じてイタリア国債を追加購入し、ECBの政策がユーロ圏全体に波及することを阻害する要因を取り除く意向を強調しました。緊急理事会によりイタリア国債のスプレッドは0.4%縮小しています。しかし、この出来事は、景気減速により支払能力に疑問が生じた場合のユーロ圏の脆弱性を改めて浮き彫りにしました。

エネルギー価格が抑制され、景気後退も回避されるならば、欧州経済は引き続き過去のトレンドと同水準の成長が期待できます。そうなれば、欧州株式を示すMSCI EMU指数も回復することになるでしょう。欧州株式は、金融セクターに加え、資本財・素材・エネルギーなどの景気敏感セクターの比率が高く、テクノロジー関連株の比率は相対的に高くありません。そのため、欧州における経済活動が活発化し、地政学的リスクが後退するような状況になれば、欧州市場にとっての追い風になることが予想されます。

black and white map of Europe

英国

英国経済は弱含みとなっており、第2四半期にはGDP成長率も低下したと見られます。インフレ率は高い状態が続き、5月のコア消費者物価指数(CPI)は前年比6%近く上昇しました。失業率については、4月は3.8%となり、約50年ぶりの低水準です。2021年12月以降、イングランド銀行は利上げを5回行い、現在の政策金利は1.25%です。先物市場では、同金利が来年半ばに3.5%まで上昇することが予測されています。

英国では、住宅ローン金利の上昇、エネルギー価格の高騰、さらには4月に発効した国民保険料の1.25%引き上げが家計を直撃しており、景気減速が続くと見られます。BoEは最近、タカ派的な表現を和らげており、インフレ期待の抑制と急激な景気後退の阻止との間で、難しいかじ取りを迫られています。

今年のFTSE 100指数は、主要株式市場の中で今年最も良好なパフォーマンスを上げています。FTSE 100指数を構成する大半の企業が、英国外で収益を上げています。金利上昇から恩恵を受ける金融株やコモディティ関連株へのエクスポージャーが高く、下押し圧力のかかっているテクノロジー株へのエクスポージャーは僅少であるため、同指数は主要株式市場の中で最も割安感が認識され、配当利回りも2022年6月中旬現在で3.9%となっています。

black and white map of United Kingdom

日本

日本経済はエネルギーや食料価格の高騰という課題に引き続き直面しており、その状況は大幅な円安で一層悪化しています。日本経済の構造変化により、円安による輸出へのプラスの影響は徐々に弱まっているものの、2022年後半にかけては輸出関連企業の追い風になると見られます。

岸田首相は先日、経済に関するグランドデザインであるいわゆる骨太の方針を発表し、賃金上昇と金融イノベーションに注力すると強調しました。ラッセル・インベストメントでは、7月に行われる参議院選挙後の発言動向について注目しています。

日本銀行は、非常に緩和的な政策を維持している点において、他の中央銀行(中国人民銀行を除く)とは引き続き異なっています。コアインフレ率が依然として僅か1%前後であることから、日本銀行は利上げに消極的な姿勢を続けるとラッセル・インベストメントは考えています。日本円には割安感が認識されますが、このような金融政策の動向やエネルギー価格の高止まりが長期化する可能性を考慮すると、円安がまだ続く可能性も認識されます。

black and white map of Japan

中国

中国では、ロックダウンの影響から経済活動が大幅に低下しましたが、暫定的な経済再開の兆候が現れ始めています。しかし、高齢者のワクチン接種率が低いため、接種率が相当程度上がるか、新型コロナウイルス治療薬の生産が十分な量に達するまでは、さらなるロックダウンのリスクが残ると考えられます。

景気刺激的な政策発動が予想されたように、中国人民銀行は利下げを行い、中国政府も追加的なインフラ関連支出を公表しています。中国では、消費券支給との形で追加的な景気刺激策が実施される可能性が高いと考えています。さらなる緩和策は、ストレス下にある不動産市場が年後半に向けて安定化することに寄与すると見ています。

最後に、新興国市場の株式にとって重要な点として、中国政府によるテクノロジー関連企業規制の見通しが挙げられます。中国政府は規制に関する不透明感を払拭するとの意向を発表しており、これはポジティブな材料となるでしょう。

black and white map of China

カナダ

カナダ経済はコモディティ価格の上昇によって恩恵を受けており、2022年のGDP成長率は3.5~4.0%になると見られています。カナダ銀行(BoC)は近年になく高まっているインフレを抑制すべく、積極的な利上げに踏み切り、政策金利を0.25%から1.5%に引き上げています。マックレム総裁は、今後の利上げは「より素早く」「より大きく」なり、目標金利は2~3%のニュートラルレンジを「若干上回る」水準に設定する可能性があると示唆しました。

BoCが、住宅市場のファンダメンタルズが悪化する兆候が現れている中で、明確なタカ派色を示したのは驚くべきことでした。業界調査からは、金利上昇によって家計や消費動向を制約しつつあることが明らかになっています。カナダの住宅市場の不安定化がBoCのタカ派的な政策を最終的には制約することになるとラッセル・インベストメントは考えていますが、BoCが政策を転換するためには、さらに決定的な調整の兆しが必要になるのかもしれません。このため、政策転換が起こる前に、政策金利が中立金利を超えて上昇するリスクが認識されます。ラッセル・インベストメントでは、引き続き米国株式よりもカナダ株式を選好しています。カナダ株式は相対的なバリュエーションが魅力的であり、コモディティ価格の高騰からも恩恵を受けているからです。

black and white map of Canada

オーストラリア/ニュージーランド

オーストラリアは天然ガスや小麦の輸出国であることから、ウクライナ戦争によって経済面では恩恵を受けています。コロナ禍からの経済活動再開による追い風は続いており、消費者支出も引き続き旺盛です。しかし、金利上昇と燃料コストの高騰により、消費者信頼感は悪化しています。

オーストラリア準備銀行(RBA)は金利を0.1%から0.85%に引き上げていますが、市場では来年早々に政策金利が4%に達すると予想されています。しかし、オーストラリアでは変動金利型の住宅ローンが多いため、家計の可処分所得に与える影響を考慮すると、それは過度に積極的な利上げを織り込む見方であるとラッセル・インベストメントは考えています。

オーストラリア株式はグローバル株式に比べて割安感があり、国債についても他国よりバリュエーションが魅力的です。ラッセル・インベストメントではコモディティ価格の高騰を踏まえ、豪ドルは今後上昇すると考えています。同国では先日の総選挙で政権交代が起きましたが、これに伴う経済見通しの変化はありません。主要政党はいずれも同じような政策を選挙で訴えていたからです。ラッセル・インベストメントは、11月の予算案の中間期アップデートにおいて、新政権の政策イニシアチブを吟味する予定です。

オーストラリアよりも懸念されるのがニュージーランドです。同国はエネルギーの純輸入国であることから、原油価格の高騰による悪影響が多いにもかかわらず、ニュージーランド準備銀行(RBNZ)はRBAよりも積極的に利上げを行っています。インフレ率はオーストラリアよりもはるかに高い状態です。この12ヵ月間で新規住宅ローン件数の伸びが鈍化する中、販売物件の供給は大幅に増加しているため、住宅価格の下落圧力を示す兆候が増えています。RBNZはタカ派のシグナルを出し続けており、さらなる住宅価格の下落と消費者支出の減少が予想されます。

black and white map of Australia/New Zealand
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"欧州はロシア産天然ガスに大きく依存しているため、報復措置や天然ガス価格の大幅な上昇は、ほぼ確実に欧州を景気後退に陥れると考えられます。"

- アンドリュー・ピーズ

資産クラスの選好

今年は、グローバル株式が弱気相場入りし、債券利回りも上昇しており、投資家にとって逃げ場のない状況が続いています。しかし、景気サイクル(中期/景気循環)、バリュエーション(長期/割高・割安)、センチメント(短期/投資家心理)(CVS)から成るラッセル・インベストメントの投資戦略決定プロセスは、あまりにも悲観的になるのは危険であることを示唆しています。センチメント上は極端に売られ過ぎている状態にあることが示唆され、2020年3月のコロナショック時以来の水準となっています。また、バリュエーションの観点からは、米国債は割安圏にあると判断されます。

PERと利益率の平均回帰性について先行きが読みづらいため、株式のバリュエーションに関するベンチマークを定めるのが難しい状況です。テクノロジー企業は、従来型の企業に比べて引き続き利益率が高く、米国株式インデックスの大きな部分を占めています。6月中旬時点におけるS&P 500銘柄の予想PERは約16倍で、年初の21倍から低下しています。割高感は明らかに解消されてきましたが、1990年以降のPERの中央値は15.4倍ですので、現在の米国株式が完全に割安かどうかの判断は容易ではありません。

景気サイクルに対する見通しの不透明さが問題となります。中央銀行による積極的な金融引き締めと、ロシア・ウクライナ戦争に伴うエネルギー価格の上昇により、米国が2023年に景気後退入りする可能性もあります。

強気の見方としては、米国のコアインフレがすでにピークアウトしたとの見方があります。労働市場の逼迫もある程度解消され、エネルギー価格も落ち着けば、FRBは2022年後半にタカ派色を弱められるかもしれません。インフレ率が低下すれば、実質所得が増え、株式市場の再上昇につながる可能性が考えられます。売られ過ぎを示すセンチメントと、FRBによるタカ派的姿勢がピークを迎えたとの市場予想が組み合わさって、株式市場が反発するきっかけになる可能性もあります。これは魅力的なシナリオですが、各国中央銀行がまだ積極的に利上げを続けている中では、実現までに暫く時間がかかるかもしれません。

米ドルは今年、大きく上昇しました。その要因としては、FRBのタカ派的スタンスや、市場のボラティリティが高い期間における安全な逃避先としての魅力があります。ユーロ、円、英ポンドは、長期的な観点からはかなりの割安感が認識されます。米ドルが年後半にかけて弱含むとの議論は、株式や債券に対する強気の見方と同じ論拠です。つまり、インフレ圧力が和らぎ、FRBのタカ派色が薄れることを前提としています。米ドルが弱含むと、非米国市場、特に新興国市場にとっては追い風になると見られます。

コンポジット・コントラリアン指標:株式市場の「センチメント」は「パニック」のレベルを超えている

Chart 4 Composite contrarian indicator: Sentiment for equity markets still below panic level

出所:ラッセル・インベストメント、2022年6月16日時点。投資家センチメントを測るコンポジット・コントラリアン指標は市場参加者の多くがどの程度悲観的または楽観的であるかを指数化したものです。

  • ラッセル・インベストメントは米国株式よりも他の先進国株式を選好します。米国以外の先進国株式は相対的に割安と認識され、FRBのタカ派的な姿勢が後退すれば、米ドル安による恩恵を受けると考えられます。
  • 新興国市場株式が回復する条件としては、中国で大幅な景気刺激策が実施され、FRBが金融引き締めのペースを減速させ、エネルギー価格が低下し、米ドルが弱含むことが必要と考えられます。当面はまだニュートラルな評価が妥当と判断しています。
  • ハイイールド債投資適格債は、クレジット・スプレッドが長期的な平均レベルを上回り、魅力的な価格水準になり始めています。米国が景気後退入りする可能性が高まり、ロシア・ウクライナ戦争が一層激化すれば、クレジット・スプレッドは引き続き拡大圧力を受けることになります。ハイイールド債も投資適格債も、FRBがタカ派色を弱め、ソフト・ランディングの可能性が高まれば良好なパフォーマンスを示すことになるでしょう。クレジット市場の見通しに対しては現在ニュートラルとしていますが、米国の景気後退リスクが低下すればポジティブな評価とする可能性もあります。
  • 各国国債 のバリュエーションは、利回りの上昇を受けて改善しています。米国債は魅力的な水準と判断されますが、日本、ドイツ、英国の国債はまだ若干割高感が認識されます。ポジティブ要因としては、市場が大半の中央銀行のタカ派的な展望について織り込んでいるため、国債のさらなる売却圧力は限定的と考えられることがあります。
  • 実物資産:グローバル・リステッド・インフラストラクチャー(GLI) は、エネルギー部門へのエクスポージャーが高いことから、年初来で相対的に高いパフォーマンスを示している資産クラスのひとつです。一方、不動産投資信託(REIT)は20%以上下落しています。ロシア・ウクライナ戦争が終息し、インフレ懸念が継続した場合には、いずれも恩恵を受けることになりますが、GLIはエネルギー・インフラストラクチャーから得たリターンの一部を失うことになると考えられます。コモディティは、ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギーと農産物価格の高騰を受け、これまでのところ最もリターンの高い資産クラスですが、戦争状態が収束すれば、上昇分の一部は反落することになります。コモディティ市場のリスクは、中国経済が引き続き鈍化することです。こうしたことを考慮し、コモディティに対するエクスポージャーについてはポジティブな評価を継続していますが、各国中央銀行の金融引き締め政策により成長率が鈍化すると、需要が抑制されると見られます。
  • 米ドルは今年、FRBのタカ派的スタンスやロシアのウクライナ侵攻を受けた安全逃避先としての魅力から上昇しています。戦闘が沈静化し、年後半にインフレ率が低下していくことでFRBによる金融引き締めが市場で予想されているものよりも弱いものとなれば、米ドルは下落に転じると見ています。このシナリオで最も追い風を受けることになりそうなのは、現在さらに割安感が認識されるユーロ、及び、コモディティ価格の高騰と中国経済の減速懸念により弱含んでいる日本円です。また、英ポンドおよび景気敏感特性のある資源国通貨豪ドル、ニュージーランドドル、カナダドルなど)にはさらなる上昇余地があると考えています。

2022年初来の資産パフォーマンス

Chart 5 Year-to-date returns through June 17, 2022

出所:リフィニティブ・データ・ストリーム 2022年6月17日時点、(L)は現地通貨

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"景気サイクル(中期/景気循環)、バリュエーション(長期/割高・割安)、センチメント(短期/投資家心理)(CVS)から成るラッセル・インベストメントの投資戦略決定プロセスは、あまりにも悲観的になるのは危険であることを示唆しています。"

- アンドリュー・ピーズ

1 硬直的なインフレとは、インフレ率が高止まりし、成長も停滞してしまう場合が多い、望ましくない経済状況を示します。硬直的なインフレは、一般的にコストプッシュの要素があり、インフレ率が上昇していく一方で支出や経済成長率は低下する傾向があります。

2金融政策に関する文脈において、「パンチボウルを片付ける(taking away the punch bowl)」とは、中央銀行が景気刺激策を縮小することを意味しています。

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