2020 グローバル・マーケット・
アウトルック

 

2020年 4 ‐ 6月期アップデート:さらに中断された景気サイクル

新型コロナウイルス によりミニサイクルの回復*が失速し、世界的な景気後退の可能性が高まっています。パンデミックがどの程度の期間持続するかは予測不可能であるものの、景気刺激策、蓄積された潜在需要に加え、経済に重大な不均衡が起きていないことは、ウイルスの脅威が解消されれば、世界経済には回復余地があることを示唆していると考えます。

* 訳者注:小さな景気循環における拡大局面を指す。

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headshot of Andrew Pease, Global Head of Investment Strategy

アンドリュー・ピーズ 

投資戦略グローバルヘッド

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"メインシナリオでは、今年後半にウイルス感染拡大が収束に向かい、世界経済は回復し始める。"

- アンドリュー・ピーズ

 

はじめに

2020年 4 ‐ 6月期アップデート:さらに中断された景気サイクル

"Events, dear boy, events(何が起こるかだ、親愛なる皆さん、何が起こるかなんだ)"ハロルド・マクミラン元英国首相は、政治が予測不可能であることをこう表現しましたが、投資戦略においても同じことが言えると考えています。2月中旬時点で、ラッセル・インベストメントは、世界経済はミニサイクルの回復局面にあると予測し、世界経済は予測通りに動いていました。製造業の指標には回復の兆しが現れており、米中は貿易協定の「第 1 段階」の合意に達しました。

 

しかし 3 月中旬、ウイルス感染が世界に拡大し、各国政府が厳格な封じ込め政策を取るとともに、急速に経済的ショックへと発展しました。国境は封鎖され、学校や大学も休校となり、市場はウイルスの脅威と封じ込め政策がいつまで続くかわからない不安でパニックに陥っています。さらに、世界の中央銀行がゼロ金利へと移行したことで、金融政策が限界に達したという危機感からこの不安は一層高まっています。ラッセル・インベストメントは、より大規模な財政出動が金融政策の火力不足を補うと考えていますが、これに対する主な不確定要因として、ウイルスに端を発する景気後退の長さと深度が挙げられます。私たちは、メインシナリオとして、今年後半にはウイルスの感染拡大が収束に向かい、世界経済は回復し始めると考えていますが、ウイルスの脅威がどの程度長引くかに関しては専門家の間ですら見解が分かれる所となっています。

以下の図表は、ウイルス感染拡大の結果が2月19日に米国株式が最高値を更新して以降、重大なリスクオフのイベントとなっていることを示しています。

Asset performance

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"ウイルスの脅威が完全に去ったとのシグナルが現れれば、大規模な景気刺激策を受けて投資家心理は回復する。"

- アンドリュー・ピーズ

 

2020 年景気後退入りの可能性

全世界で実施されている新型コロナウイルスの封じ込め対策は経済に大きな打撃をもたらしています。

 

今年第1四半期のGDPは、おそらく全世界でマイナス成長となり、ウイルスの封じ込め対策による経済活動の停止により、第2四半期のマイナス成長もほぼ確実と見られます。ウイルス感染者数は、この先も増加すると見込まれるため、この先さらに思い切った封じ込め対策が実施される可能性もあり、さらに信用市場のストレスがもたらすデフォルトや流動性を巡る問題の波が資本市場に押し寄せる可能性もあると見ています。

一方、中国の状況は、ウイルスが収束可能であることを示唆しています。ウイルス感染に見舞われた湖北省外の省では、3月の最初の18日間で見つかった新たな感染者は中国全土で 1日当たり平均10人に留まっています。韓国もまた、感染拡大の封じ込めに成功しています。さらに、ウイルス感染による致死率も当初恐れられていた水準より低く、現在では多くの予想が1%以下と見込んでいます。現在までの死亡者の多くは高齢者や持病を患っていた人たちに集中しています。

新型コロナウイルスが一過性のもので、おそらく第 2 四半期には抑制されるとの前提に立てば、世界経済は 2020年下半期には回復すると思われます。2月に中国でウイルス感染が拡大する以前は、世界の経済指標には回復の兆しが現れていました。2019年は、世界の中央銀行による緩和が2008年の金融危機以降で最も多い年でした。

Graph showing central bank easing in 2020

ウイルスの感染拡大が始まって以来、世界の主要中央銀行は金融緩和を加速し、各国政府は大規模な財政刺激政策を取り始めています。スティーブン・ムニューシン米財務長官は、米国 GDP の 5.5%にあたる 1.2 兆ドルの経済対策を提案しました*。世界中の財務当局や中央銀行が、"いかなる措置もとる"との声明を発表しています。中国は、既に大型の金融および財政刺激策を実施しています。

*訳者注:その後2兆ドル(約220兆円)に増額され、議会で承認され、トランプ大統領が3月27日に署名しました。

米中貿易戦争の緊張緩和に加え、昨年の各国中央銀行による金融緩和策に続いて、さらに追加的な金融政策および財政刺激策が実施されることから、ウイルスの危機が後退すれば、本格的な景気回復が見込めると考えられます。

しかし、第3四半期の景気回復見通しには、以下に挙げるリスクが認められます。

  • ウイルスの進行は予測不可能である上、米国の感染者数は過小報告されている可能性があり、今後感染者数が急増する可能性がある。封じ込め措置がさらに厳格化し、第3四半期も景気後退が継続する可能性がある。
  • 新型コロナウイルスが経済に及ぼす影響が予想以上に大きくなる可能性がある。雇用市場は既に被害を被っていることを示すデータが出ており、消費者および企業景況感が急激に落ち込み、自律的な景気後退に向かう可能性がある。信用市場でデフォルトや流動性が枯渇する問題が増加するようなイベントが起こる可能性もあり、2008年のような景気低迷を招く可能性も考えられる。世界のサプライチェーンの混乱が、世界経済の成長に大規模で長期に亘りマイナスの影響をもたらす可能性がある。
  • 米連邦準備制度理事会(FRB)、イングランド銀行、日銀、および欧州中央銀行(ECB)は、政策金利を既にゼロ金利等下限レベルに誘導しており、過去の景気後退期と比較すると、各国中央銀行の金融政策余地は限定的である。

最も重要なリスクとして、ウイルスの感染者数が急激に増加すること、そしてウイルスの封じ込め政策が第3四半期まで継続することが挙げられます。その他のリスクが顕現する可能性は比較的低いと見ています。ラッセル・インベストメントは、ウイルスの脅威が完全に去ったとのシグナルが現れれば、投資家心理は大規模な景気刺激策を背景に回復すると見ています。一方、サプライチェーンを取り巻く問題は、より長期に亘ると見られます。しかしながら、この問題は今に始まったことではなく、米中貿易戦争の勃発当時から懸念されていたもので、ウイルスの感染拡大はそれを助長することにはなるものの、サプライチェーンの混乱自体が景気の回復を妨げる要因になるとは考えていません。

そして、2008年の金融危機が再び繰り返されるとも考えていません。米国の大手銀行のティア 1 自己資本比率は 2007 年から大幅に改善しており、深刻なドローダウンリスクに対するクッションとなると見られます。銀行の住宅ローン貸出は一貫して慎重であり、消費者のバランスシートは健全です。中央銀行には政策金利引き下げの余地があまり残されていないものの、必要であれば量的緩和を初めとする非伝統的金融政策に転じることが可能です。また、政府には財政政策を促す相当の圧力がかかると見ています

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バイデン前副大統領とトランプ大統領の対決が金融市場に与える影響は概ねニュートラル。"

- アンドリュー・ピーズ

 

バーニーの気配はなし

新型コロナウイルスの感染拡大や原油相場が大きく下落するなかで見落とされがちですが、市場にとって重要な出来事のひとつとしては、民主党大統領候補指名争いにおける人気が民主社会主義者を自認するバーニー・サンダース議員から中道派のジョー・バイデン前副大統領に移っていることが挙げられます。

 

サンダース氏が大統領に選出されれば、米株式市場に構造的な変化をもたらす可能性があります。同氏は、大手テクノロジー企業の規制と解体、民間健康保険の廃止、そしてドランプ大統領が敷いた大規模な法人税減税の撤回を考えているためです。しかしながら、市場予測ではバイデン氏が民主党候補の本命となりつつあり、そのような変化の可能性は低下しています。新型コロナウイルスにより生じた経済的混乱は、11 月の大統領選でバイデン前副大統領がトランプ大統領に打ち勝つ可能性を高めたのかもしれません。ラッセル・インベストメントは、バイデン前副大統領とトランプ大統領の対決が金融市場にもたらす影響は、概ねニュートラルと見ています。一方、サンダース議員とトランプ大統領の選挙戦となった場合、今後の市場の反発力に対して不透明感が生じ、市場にとっては追加的な懸念事項になっていたと考えています。

 

地域別の見通し

 

米国

米国では、政府のウイルス封じ込め対策からテクニカルな景気後退(GDP が第1四半期および第2四半期に連続してマイナス成長)となる可能性が高いと見ています。S&P500®指標は、2020年2月のピークから29%下落しましたが、これは標準的な景気後退局面で観察されるものと同程度の下落幅で(3月19日時点)、すでに相応の経済的な打撃は織り込まれていると考えられます。

もう一つのリスクとして挙げられるのが、キャッシュフローの急減により債務水準の高い企業がデフォルトに陥り、より広範に経済において信用収縮が惹起されることです。この脅威は、米連邦準備理事会(FRB)による 150bpsの緊急利下げ、資産購入、および金融危機当時の流動性支援策の再開により、軽減されると見ています。

ここから重要になるのは、景気後退の影響を緩和するための財政政策*です。新型コロナウイルスショックに対応するため、大規模な景気刺激策に対する党を超えての合意が期待されます。さらに喫緊の対策として、米国議会および財務省は、資金繰り悪化などの流動性が欠乏する問題に直面している業界に対し、緊急的に融資を提供する制度を設けることも可能です。

これらの金融および財政政策は、ウイルスの混乱が収束した際に、より強固な経済を後押しすると考えられます。アップサイドリスクは、この10年強の期間で最大規模の景気刺激策により、第2四半期中にウイルスの新たな感染者数の減少が始まれば、その後の景気回復が予想以上に後押しされると見ています。

*訳者注:トランプ大統領は3月27日、米議会が可決した新型コロナウイルス禍に対処する2兆ドル(約220兆円)の大型経済対策法案に署名し、同法は同日成立した。家計への現金給付や企業の給与支払いの肩代わりなどに投じられ、売上高の急減や生活の困難に直面する企業や個人への安全網を整備することなどが柱となっている。

*S&P500インデックスに関する著作権等の知的財産権、その他一切の権利は、マグロウヒル・カンパニーズの一部門であるスタンダード・アンド・プアーズに帰属します。

インデックスは資産運用管理の対象とはなりません。また、インデックス自体は直接的に投資の対象となるものではありません。インデックスには運用報酬がかかりません。

black and white map of United States

ユーロ圏

欧州は、中国以外で最も新型コロナウイルスの影響を受けている地域です。欧州は世界との貿易、特に中国との接点が多く、一方、欧州中央銀行(ECB)には金融政策余地があまりなく、さらにユーロ圏における財政規律等の取り決めにより、景気刺激策を実施することが困難になっています。イタリアは隔離措置を取っており、フランスやスペインでは厳重な封じ込め対策をとっています。これらの対策は、その他の欧州諸国でも導入されています。

こうした要因が重なり、主要証券取引所の中でも最も影響を受けたのがユーロ圏の株式です。3 月中旬時点で 高値から35%以上下落しました。

ユーロ圏は、米国よりも深刻な景気後退を経験する可能性が高いと考えていますが、コロナ禍が後退すれば、景気回復は米国に比べ大きくなると見られ、世界貿易の反発による恩恵を最も享受する地域の一つになると見ています。ユーロ圏の株式は、現在非常に魅力的な水準にあり、回復時にはベストパフォーマーの一つとなる可能性が高いと見ています。

black and white map of Europe

英国

欧州に比べ英国経済には主に2つの優位性があると考えています。

  1. イングランド銀行は、欧州中央銀行(ECB)と異なり、2度に亘り合計65bpsの緊急利下げを行い、政策金利を実質的なゼロ金利下限(effective zero-lower bound =ELB*)まで引き下げることができた。
  2. 英国政府は、財政政策を迅速に実施する能力がある。実際、GDPの1%以上に相当する景気刺激策を発表した。

*訳者注:Zero Lower Bound(ZLB「ゼロ金利下限」)とは、マイナス金利にならない範囲で取り得る政策金利の下限を示す。

FTSE100種総合株価指数は、現在以下の3つの課題を抱えています。1) 2020年末まで移行期間中にある英国の欧州連合離脱(ブレグジット)を巡る不透明感、 2) 海外収益の比重が高い多国籍企業に対するエクスポージャーが大きいこと、3) 原油価格の下落により損失を被ったエネルギー企業の経済に占める割合が高いことが挙げられます。2016年の国民投票に続いて、欧州離脱の議論が 3年間続いたことで、英国株式はパフォーマンスが低迷しています。新型コロナウイルスによる下落で、FTSE100 種総合株価指数は、異常とも言える程の割安圏に入りました。実績ベースの株価収益率(PER)は約10倍で、配当利回りは7%に接近しています。

*“FTSE”はロンドン証券取引所株式会社及びフィナンシャル・タイムズ・リミテッドの商標であり、FTSEインターナショナル・リミテッド(以下FTSE)のライセンスのもとで使用される商標です。

インデックスは資産運用管理の対象とはなりません。また、インデックス自体は直接的に投資の対象となるものではありません。インデックスには運用報酬がかかりません。

black and white map of United Kingdom

日本

日本経済は、10 月の消費税増税と 50 年来の大型台風による自然災害の影響から、2019 年末の時点で既に低迷していましたが、新型コロナウイルスによる混乱により、同国経済はほぼ確実に景気後退に陥ったとみられます。

日銀は金融政策余地こそ限定的であるものの、国債、社債、またETF買い入れを通じて株式の購入も増加させています。日本政府は、緊急対策としての財政対策を発表する可能性が高いとみています。金融政策の手詰まり感と根強いデフレとの日本の構造的な脆弱性は、日本経済が引き続き先進国経済対比で低成長に留まることを意味すると考えています。

black and white map of Japan

中国

中国は、新型コロナウイルス危機に最初に直面した国であり、足元では新たな感染者数が減少しつつあります。日常の経済活動を追跡するGPS追跡装置によって、経済活動が徐々に再開されていることが示されています。深圳や上海の交通渋滞は正常な状態に戻り、電力発電のための石炭消費量は回復し始めています。

政府は、間も無く景気刺激策を発表すると見られ、地方の州はインフラ・プロジェクトを発表しています。中国人民銀行は、政策金利と預金準備率を数回にわたって引き下げ、銀行は、現金の流通量に圧力がかかっている間は債権回収を控えるように促されています。主な不確定要因としては、金融及び財政刺激策が、V字型の回復をもたらした2015~2016年時のものと同規模になるかどうかが挙げられます。中国の指導部が依然として過剰債務に懸念を示していることから、ラッセル・インベストメントでは、今回の刺激策は2015~16年当時と同等の規模になるとは考えていませんが、ウイルスの脅威が鎮静化し始めた時には、中国経済が強い回復に向かうに十分な規模になると見ています。

black and white map of China

カナダ

新型コロナウイルスの感染拡大と原油価格の崩落という2つのショックにより、すでに精彩を欠いていたカナダの経済見通しは、一段と複雑なものとなりました。今や同国の経済成長は、ラッセル・インベストメントの予測レンジである1.0%を割り込むリスクに晒されています。カナダ銀行は 100bpsの利下げと流動性供給を拡大する対策を講じ、今後更なる景気刺激策も見込まれています*。ジャスティン・トルドー首相は先日、カナダのGDPの約3%にあたる景気刺激策を計画していると発表しました*。ウイルスを巡る喫緊の懸念を除けば、今後のカナダ経済を見通す上での構造面でのウオッチポイントは、担保価値の低下が高水準の債務を抱える家計に与えるダメージと考えています。

*訳者注:トルドー首相は3月18日、新型コロナウイルス対策に最大820億カナダドル(約6兆1000億円)を新たに拠出すると発表している。

black and white map of Canada

オーストラリア

オーストラリア経済は、かねてより慎重な消費者と住宅市場の軟化から鈍化傾向にありましたが、新型コロナウイルスの脅威はこれにさらに拍車をかけると見られます。オーストラリア準備銀行(RBA)は、2度に亘り合計50bpsの緊急利下げを行い、政策金利の誘導目標を0.25%としました。さらに同行は、同国初の非伝統的金融政策に踏み切ると発表、3年物国債の利回りを0.25%に設定して購入することを明らかにしました。国債の買い入れによる量的緩和が実行に移されるのもそう遠くないことと思われます。

政府は、GDPの1.2%にあたる財政刺激策を発表し、豪ドル安が輸出セクターへの打撃を緩和し、経済に対して緩衝材としての役割を果たしています。オーストラリア経済の2020年の見通しは、最大の貿易相手国である中国が、米国との間で貿易協定の第1段階合意に達したことから明るいものとなっていましたが、ウイルスの感染拡大はこの見通しを大幅に後退させることになりました。

black and white map of Australia/New Zealand

 

リスクの追加

ラッセル・インベストメントのサイクル(中期)、バリュエーション(長期)、センチメント(短期)(以下CVS)の3本の柱から成る投資戦略決定プロセスは、戦術的な意思決定を行うために、恐怖や陶酔感が市場をオーバーシュートさせる局面を探るものでもあります。多くの場合、市場のコンセンサスは、"Wisdom of crowds(集団の叡智)"を体現しているため、強力な戦術的機会はありませんが、時として市場は、群衆が戦術的な機会をもたらす"Madness of crowds(集団の狂気)"状態に陥ることがあるとされます。

 

ラッセル・インベストメントのコンポジット・コントラリアン指標は、テクニカルマーケット指標やポジショニングシグナルおよび投資家調査など、多くの指標を統合して算出されています。

世界の株式が 1日で10%下落した3月12日、同指標は非常に強い"買い"シグナルを発しました。

Composite contrarian indicator

CVS投資プロセスが発信するシグナルは、慎重ながらよりリスクの高い資産に高いウェイトを置くものとなっています。株式のバリュエーションは、市場の大幅な下落を受けて改善し、目先は景気後退を予想しているものの、現在実施されている大規模な景気刺激策がサイクルの見通しを支ええています。ラッセル・インベストメントのコンポジット・コントラリアン指数からは、投資家がパニックに陥り、大挙して悲観的な見通しに傾倒したことが読み取れ、コントラリアン的な逆方向の見通しをサポートするものとなっています。

主な不確定要因として挙げられるのは、ウイルスの脅威がいつまで続くのか、そして、多くの国で行われている厳格な封じ込め対策が緩和された際に、ウイルスが再度勢いを増すことはないのかということです。欧州及び米国では、一日の新規感染者数が低下し始めた時に、金融市場が底打ちする可能性が高いと見ています。

 

資産クラスの選好

 

  • 現在、新型コロナウイルス危機の打撃を最も被っている株式こそ、最終的な反発の恩恵を最も享受する資産クラスになると見ています。地域別に見ると、英国およびユーロ圏株式は割安感が認識され、特に欧州は景気敏感株が占める割合が高いため、市場の回復時には他の地域をアウトパフォームする可能性があると見ています。
  • 新興国株式もまた、やがて到来するであろう回復時に恩恵を享受すると考えています。足元で魅力的な割安水準にあるため、貿易戦争の緊張が緩和した際にも恩恵を受ける地域と考えられます。
  • ハイイールド社債は、新型コロナウイルスのショックおよび原油価格の崩落を受けた売却により、足元のバリュエーションが非常に魅力的な水準にあると考えています。ハイイールド債券市場では、エネルギー関連企業が占める割合が高く、3月19日時点における対米国債のイールドスプレッドは 900bps近くと高い水準となっています。この先、ウイルス禍がさらに拡大する場合、このスプレッドはさらに広がる可能性があり、投資家がその機会を利用するかどうかを判断する際には、市場と流動性リスクにかなりの不確実性があることを考慮する必要もありますが、歴史的に見れば、この水準はハイイールド債のエクスポージャーを取得するのに良いエントリーポイントとなってきました。
  • 国債は、地域によらずおしなべて割高水準にあると考えています。今後、新型コロナウイルス危機が深刻化すれば、国債価格はさらに上昇すると考えられますが、ウイルス禍が収束に向かい、景気回復が始まれば、アンダーパフォームするリスクがあると見ています。
  • 為替に関しては、新型コロナウイルス禍が収束し、経済の回復局面が始まれば、安全通貨として米ドルに向かっていた資金の流れは巻き戻される可能性が高いと見ています。このため、大幅に減価し、第1四半期末時点で長期購買力平価対比で見る割安感が著しく高まっていると判断されるオーストラリアドル、ニュージーランドドル、カナダドルおよび英国ポンドのような通貨を選好します。

1 ゼロ金利政策とは拡張的な金融政策のツールであり、必要に応じて景気を刺激するために中央銀行が短期金利をゼロまで引き下げることを指す。ゼロ金利政策を発動せざるを得ない中央銀行は、同時に経済を活性化させるその他の(多くは非伝統的な)手法を推進しなければならないとされる。

2 ティア 1 自己資本比率は監督機関の観点から銀行の財務力を測る目安。主に普通株式と開示準備金で構成されるコア (中核) 資本で構成されるが、償還不可能な非累積優先株式も含まれる場合があるとされる。

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