アジア太平洋地域
OUTLOOK

習近平氏の景気刺激策を待つ

2019年初来、中国の景気刺激策の効果は期待を下回るものとなり、米中貿易摩擦が熾烈化し、当地域の経済データは失望的なものとなっています。各国の中央銀行は利下げを行い、より景気に支援的な政策を採っています。貿易協議の進展と中国政府のさらなる政策発表が引き続き重要な注目点と考えます。

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習近平氏の景気刺激策を待つ

2019年初来、中国の景気刺激策の効果は期待を下回るものとなり、米中貿易摩擦が熾烈化し、当地域の経済データは失望的なものとなっています。各国の中央銀行は利下げを行い、より景気に支援的な政策を採っています。貿易協議の進展と中国政府のさらなる政策発表が引き続き重要な注目点と考えます。

ご留意事項 必ずお読み下さい 

習近平氏の景気刺激策を待つ

ラッセル・インベストメントは、2019年央の当レポートで、当地域、特に中国と韓国からのデータが期待外れであったことに言及しました。どちらの国においても、未だ確固たる改善の兆候は見られず、その他の国の一部では景気が悪化しています。香港の政情不安は同地域の景気に打撃を与えているためラッセル・インベストメントでは、中国政府の対応だけでなく台湾へ飛び火しないかという点も注視しています。重要性では米中貿易戦争に及びませんが、日韓の貿易摩擦問題も浮上しています。貿易と当地域の経済成長を脅かすリスクに対応するため、当地域の中央銀行は利下げを敢行しており、今後当地域を下支えすると見ています。

中国経済は、製造業の落ち込みが顕著となり、鈍化が続いています。世界的に見られるサービス業と製造業の乖離は、中国においても顕在化しています。雇用統計は経済全般に渡る雇用の悪化を示しており、中国政府にとっては、なんらかの貿易協定を結ぶか新たな景気刺激策の導入が避けられない状況となっています。

中国政府は、預金準備率のさらなる引き下げや貸出市場報告金利(ローンプライムレート、LPR)と呼ばれる最優遇金利の見直しなど、新たな景気刺激策を幾つか発表しました。しかしながら、現在の信用創造(銀行貸出が伸びていない)問題の背景にあるのは、資金不足ではなく需要不足です。LPRの見直しは実質的には利下げと同様に作用するため、需要押し上げ効果が期待できるはずですが、その効果は経済データに未だ現れていないため、ラッセル・インベストは中国経済の見通しに対する警戒感を若干強めています。景気刺激策の効果が最初に現れるのは月次の信用(貸出)データとの見方を維持し、今後も同データを注視してまいります。

韓国と台湾では輸出需要が軟化しており、これが両国経済に重石となっています。輸出需要の減退をもたらしたのは、貿易戦争と両国の主要輸出品であるスマートフォンの需要鈍化です。韓国経済は、2020年に予定されている財政拡大の恩恵を享受すると見られる一方、台湾経済においては、焦点はまもなく2020 年の大統領選挙に転じると見られます。台湾では、香港の抗議運動に関して中国に強硬姿勢を取っている現職の蔡英文総統に対する支持率が上昇しています。

インド経済においては、年央の選挙前の不透明感と自動車セクターの規制変更という二つの逆風に注目してきましたが、政府支出の拡大がもたらす追い風がこれを相殺し、GDPにポジティブに寄与してきました。インド準備銀行は 2019年に入ってから1%ポイントの利下げを実施しており、年末までにさらなる緩和を提供する公算が大きいと考えます。

2019年央の当レポートで強調した通り、オーストラリアの住宅市場は安定し始めています。しかしながら、家計の債務残高が積み上がり、住宅建設件数が低下しているため、オーストラリア経済の見通しは引き続き精彩を欠くものとなっています。豪州中銀 (RBA) は行動する準備が整っていることを示しており、ラッセル・インベストメントでは、2020年半ばまでに2度の追加利下げを見込んでいます。この緩和的な金融政策は当地域の株式市場を支えてきましたが、ファンダメンタルズが軟調なことから上昇余地は限られると見ています。

ニュージーランドも同様で、ニュージーランド準備銀行 (RBNZ) は、7月に政策金利を50ベーシスポイント引き下げ、市場を驚かせました。金利の低下とニュージーランドドルの下落により、債券代替および海外投資家が高い比率を占める株式市場は上昇しました。

このような状況下、世界経済が次の景気後退期に入る前またはその最中に、RBA、RBNZ共に非伝統的な金融政策を採る可能性がますます高まっています。ただし、両者の間には違いがあります。ニュージーランドは、強力な国内銀行セクターを持たないため、RBNZがマイナス金利を採用する可能性が高いと考えられる一方で、オーストラリアでは、国内の銀行セクターが強いため、何らかの量的緩和を検討する可能性が高いと考えられます。

最後に、日本経済は、今年10月に消費税の税率引き上げを控えています。前回2014年の消費増税時に見られたような駆け込み需要は観察されておらず、日銀は金融政策を緩和する可能性が高いものの、金利は既にマイナス圏にあることから金融政策を大幅に緩和できる余地は限定的と見られます。このようなことから、日本株式は、引き続き若干割安圏にあるとみています。

投資戦略

  • ビジネスサイクル:貿易戦争を取り巻くリスクを考慮し、同地域の目先の見通しについては警戒感を強めています。しかしながら、中国が景気対策を実施する見通しや中央銀行の政策緩和など、プラスのサーキットブレイカーは依然認められます
  • バリュエーション:アジア新興国市場の株式と日本株のバリュエーションは引き続き適正な水準から若干魅力的な水準に位置していると考えます。年初来の堅調なパフォーマンスにもかかわらず、中国の株価もまた適正水準にあるとみています。ニュージーランド株式は割高感が非常に際立っています。先進国地域の債券も割高圏にあると思われます。
  • センチメント:貿易が引き続きリスクとなるものの、同地域の投資家センチメントは警戒スタンスが続くでしょう。貿易交渉のポジティブな進展があれば、同地域への興味と楽観主義に拍車がかかり、それにより同地域がアウトパフォームする可能性が高まるとみています。
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