ユーロ圏
OUTLOOK

世界的な貿易摩擦が緩和し中国が景気刺激策を強化すれば、欧州の見通しは改善すると考えます。信用(貸出)の伸びと自動車生産の底入れを示す一時的な兆候が楽観主義の根拠となっていますが、ECBの政策の有効性は限界に達しています。

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世界的な貿易摩擦が緩和し中国が景気刺激策を強化すれば、欧州の見通しは改善すると考えます。信用(貸出)の伸びと自動車生産の底入れを示す一時的な兆候が楽観主義の根拠となっていますが、ECBの政策の有効性は限界に達しています。

ご留意事項 必ずお読み下さい 

ドラギ総裁は任期満了

マリオ・ドラギ氏は、ECB総裁としての8年間の任期中に金融政策の手段を拡大し、そして枯渇させました。クライマックスは、2012 年央のユーロ危機のピーク時に発表した「ECBはユーロ維持のために何でもやる」という声明でした。この声明は市場を鎮静化し、最後の貸し手としての中央銀行の実力を示しました。

しかしながら、ドラギ総裁が2019年9月に行った政策対応は、中央銀行の限界を示す好例を後世に残すことになりました。ECBは昨年12月に累計2.9兆ユーロに及ぶ資産を購入 (大半が国債)した後、量的緩和プログラムを終了しましたが、2019年9月、(ユーロ圏19カ国の民間銀行がECBに預ける際にかける)預金金利を10ベーシスポイント拡大してマイナス0.50%とし、毎月200億ユーロの量的緩和 (QE) を再開しました。

しかしながら、マイナス金利の深堀りと量的緩和の再開が、果たして景気に刺激を与えるかについては疑問が残ります。中央銀行の専門用語に最近新たに加わった用語に「リバーサル・レート」がありますが、これはマイナス金利が景気の下支えではなく押し下げ効果をもたらすポイントを示しています。銀行の調達コスト (主に銀行預金) と平均貸出金利のスプレッドが縮小し利鞘が縮小し始めれば、銀行は貸出を渋ることになり、経済には引き締め政策と同様の押し下げ効果を与えることになります。

リバーサル・レートがどの水準なのかについては確信があるわけではありませんが、概ねマイナス0.5%近辺だと推測されます。金融政策の残りの伝達経路である量的緩和 (QE) と通貨切り下げについても、限界に近い水準にあります。独10年国債の利回りはマイナス0.45%とさらなる低下余地は限定的で、ユーロは対米ドルで 1.1と、既に非常に割安な水準にあると考えられます。

幸いなことに、ユーロ圏の信用状況は、ECBのこの動きの前に改善していたと言える証があります。銀行による個人及び非金融機関向けの毎月の貸出額は、2月以降増加しており、今や400億ユーロに迫っています。これは2008年の金融危機以降で最も高い伸びとなっています。

イタリア中央銀行が発表する月次のユーロコイン指数 (ユーロ圏各国のGDP成長率伸びを反映する) は、2018年初頭以降に見られた成長鈍化が底打ちし始めた可能性を示唆しています。

景気の弱さを見る際には、製造業が焦点となります。ドイツの製造業が受けた打撃が最も深刻となっており、自動車生産は EUの新排ガス規制後の減少から未だ回復しておらず、自動車輸出は貿易戦争により打撃を受けています。しかしながら、世界的な自動車需要は旺盛で、生産高を上回っていると言うデータが出ており、2019年10-12月期には、(自動車生産と輸出が)回復する可能性があると見られます。

ラッセル・インベストメントが前四半期に懸念していたリスクの一つは緩和されました。左翼政党「5つ星運動」が中道左派の民主党と新たな連立政権を樹立したことで、イタリアの政治危機は少なくとも一時的に解決しました。好戦的なマッテオ・サルヴィーニ氏率いる右派ポピュリスト政党「同盟」が政権を退いたことで、予算ルールを巡り欧州委員会と膠着状態に陥る懸念が緩和されました。その結果、イタリアの国債利回りは大幅に低下しています。新政権は長く続かないかもしれませんが、これにより新たな選挙が開催されるリスクは、2020年のかなり先まで先送りされました。

欧州の他の2つのリスク、即ち貿易戦争とブレグジットについては、さほど見通しが明確ではありません。トランプ大統領が2020年の大統領選再選に集中し始めたために、米中を巡る緊張は緩和されているように見受けられます。欧州は、その輸出依存性から貿易摩擦の主たる被害者となったため、休戦となればその恩恵も享受すると見られます。欧州自動車に対する関税に関する米国の決定は、米中貿易交渉が継続されれば2019年11月14日以降まで先送りされる可能性が高いと見ています。

ブレグジットの問題は、いつ収束するのかを予測することは困難です。無秩序の合意無き離脱は、最も実現可能性が低いと見られますが、2019年10月31日の期限が迫りながらも、確実なことは何1つ見当たりません。

投資戦略の見通し

  • ビジネスサイクル:景気サイクルは、予想外に時間がかかっているものの、自動車生産の回復により向こう数カ月間に若干回復すると見ています。新興国市場への輸出はユーロ圏GDPの約10%に迫っており、貿易摩擦のさらなる熾烈化が重大なリスクとなっています。裏を返せば、欧州は、貿易摩擦の緩和と中国における大規模な景気刺激策の恩恵を享受する主な国の一つとなると考えられます。
  • バリュエーション:ラッセル・インベストメントの試算によれば、欧州株式は割高な米国株に比べ適正価格近傍にあります。独10年物国債の利回りが 9月中旬にマイナス0.45%になるなど、コア国債は長期的に見て割高な水準にあり、さらなる低下余地も限定的とみています。
  • センチメント:逆張りシグナルは、9月半ば時点で概ねニュートラルを示しています。株式には買われすぎの兆候も売られすぎのサインも出ておらず、欧州株式の価格モメンタムは若干ポジティブとなっています。
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