投資戦略の見通し
OUTLOOK

貿易摩擦が世界の製造業の重石となり、米国債が逆イールドカーブに陥るなか、景気後退リスクが上昇しています。ラッセル・インベストメントは、当面警戒スタンスを維持しますが、FRBによる追加利下げに貿易戦争の収束と中国の景気刺激策が加われば、見通しは明るいものとなる可能性があります。

投資戦略の見通し
OUTLOOK

貿易摩擦が世界の製造業の重石となり、米国債が逆イールドカーブに陥るなか、景気後退リスクが上昇しています。ラッセル・インベストメントは、当面警戒スタンスを維持しますが、FRBによる追加利下げに貿易戦争の収束と中国の景気刺激策が加われば、見通しは明るいものとなる可能性があります。

ご留意事項 必ずお読み下さい 

「合意無き離脱」の妙

金融市場は「Deal or No Deal (合意成立か、合意なき離脱か)」で身動きが取れなくなっているように見えます。さらに、米中貿易交渉の行方とブレグジットを取り巻く不透明感が、今後の見通しを困難なものにしています。製造業は世界的に縮小しており、貿易高は縮小し企業収益も圧迫されています。米国債のイールドカーブは景気後退リスクが上昇していることを示唆しており、中国の経済指標は悪化しています。こうした世界的な先行き不透明感が、悲観主義の高まりを通じて、民間部門の消費と設備投資の縮小および失業増という自己実現的なサイクルを生むリスクがあります。これが企業業績の悪化と株価の下落を生み、最終的により深刻な悲観主義を生む可能性が考えられます。

さらに、景気後退に対処するための政策余力が限定的であることも懸念を深めています。日本および欧州では、金利が既にゼロまたはマイナス圏にあり、比較的緩和余地はあるFRBも、ゼロからマイナス金利の縛りに直面している点では、変わりありません。過去の景気後退期には、FRBは平均5%ポイント以上の利下げを実施しましたが、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標が1.75%~2%の水準にある今回は、この規模の金融緩和は不可能になります。

悲観主義を抑制せよ

リスクは高まっていますが、景気後退が回避でき、景気サイクルがあと数年延長される可能性が残されていると言う証も認められます。その証とは、以下の通りです。

第一に、製造業とは対照的に、サービス業は世界の多くの国で10-12月期に入る時点で依然として堅調に推移しています。米国および欧州では失業率が低く、消費者信頼感も比較的高水準となっています。

第二に、多くの中央銀行がすでに利下げを実施している上、さらなる追加利下げを示唆しており、景気刺激策も強化されています。FRBは金融緩和を開始し、欧州中央銀行 (ECB) は量的緩和を再開しています。中国が景気刺激策について積極的に発言をする一方、ドイツでは財政出動が議論されており、スティーブン・ムニューシン米財務長官は2020年の減税を検討しています。

これは、昨年の状況―FRBが金融引き締め局面にあり、ECBは量的緩和を終了、中国では前回の景気刺激策で増加した債務残高が懸念されていた―とは対照的です。時節を得た政府の対応は、限定的な中央銀行の政策余力を補うものと見られます。

第三に、貿易摩擦は、たとえ一時的であっても緩和される可能性が高いと考えられます。トランプ米大統領は、今年に入り株式市場が下落するたびに貿易摩擦を緩和させる対応を見せてきました。2020年に大統領選挙を控え、トランプ大統領には貿易戦争が米国経済に及ぼすダメージを極力抑えたいとの動機があります。そのためには、年内に何らかの貿易取引を成立させる必要があると考えます。

中国のスタンスはより複雑ですが、最終的には歩み寄りを見せるはずです。もちろん、中国がトランプ大統領の攻撃的で一方的な保護主義に屈服するとは思えませんが、中国経済は今も2017年から2018年にかけて行われた金融のデレバレッジ(債務圧縮)と関税双方からのダメージに苦しんでおり、購買担当者景気指数 (PMI) は、労働市場の軟化を示していることから、与党中国共産党のリーダーはこれを深刻に受け止めると考えられます。

重要なことは、トランプ大統領には、2020年11月の米大統領選前の米国経済の景気後退入りを回避したいという明らかな動機があるということです。中国は、痛みに耐える力は上昇しましたが、失業と社会不安の高まりは、貿易摩擦を緩和し国内の景気刺激策を推進する動機になります。しかしながら、両国が行動を開始するには、株式市場のボラティリティがさらに高まる必要があるかもしれません。

ラッセル・インベストメントは、今後の行方を見通す上での最大のリスクは米中貿易戦争にあると見ています。貿易摩擦が緩和に向かうことは両国にとって有益なことですが、政治的な不確実性からコントロールが効かない状況まで激化する可能性も考えられます。そのシナリオ下では、米国債のイールドカーブは、景気後退と株式の弱気相場を正確に予想することになると見ています。

以上の点を踏まえ、ラッセル・インベストメントは、貿易戦争の収束と中国の景気刺激策を背景に、2020年には世界的な景気回復に向かう可能性の方が高いと考えます。ただ、もう一方のシナリオとの間に見られる非対象性 ― 即ち、(景気後退入りがもたらす)弱気相場に対し(景気回復がもたらす)アップサイドは限定的 ― を鑑み、貿易戦争の行方と景気刺激策の見通しがよりクリアになるまで、慎重な見通しを継続します。

資産クラスの選好

ラッセル・インベストメントのサイクル、バリュエーション、センチメント(CVS)の3つの柱から成る投資戦略決定プロセスは、世界株式に若干慎重な見方、および債券に比較的ニュートラルな見方をしています。世界株式と国債は中期的な観点では割高と示唆されています。世界の景気サイクルは、貿易戦争と中国経済の軟化が重石となっており、センチメントを示す指標は概ねニュートラルから若干売られ過ぎを示唆していますが、コントラリアンの買いシグナルが発動する悲観水準には未だ近付いていません。

  • 米国株式に対しては、割高なバリュエーション、貿易戦争の激化により高まる景気後退入り懸念、財政刺激策効果の後退や逆イールド化等から、ネガティブな見方を継続します。非米国の先進国株式は、概ねニュートラルと見ています。5%の高い配当利回りに示されるように、英国株には投資妙味があると考えます。日本株のバリュエーションは若干ポジティブ、欧州株はニュートラルと見ています。いずれも最終的な中国の景気刺激策による輸出需要の上昇による恩恵を享受すると見ています。
  • 新興国市場株式には、割安感が認められ、ポジティブに見ています。当地域の中央銀行は金融緩和政策を採っており、新興国市場は中国の景気刺激策からの恩恵を享受すると見ています。しかしながら、貿易戦争の激化と世界のサプライチェーンの混乱から目先のリスクは高いことから、当面は警戒スタンスを維持します。
  • ハイイールド債は若干割高で、収益成長の鈍化リスクに晒されていると考えます。
  • 投資適格債は割高で、対国債スプレッドは若干平均を下回り、平均的な格付けの質も低下しています
  • 国債は世界的におしなべて割高と見ています。8月中旬時点で、世界の先進国国債の発行済み残高の約30%はマイナス利回りで取引されていました。米国債は相対的な割安感から、最も魅力的と考えます。
  • 為替市場では、引き続き、日本円を選好します。日本円は、今年に入り持ち直したものの依然過小評価されており、貿易戦争が深刻化すれば安全な避難先としての魅力が見直されると見ています。米ドルは反シクリカルな傾向があるため、貿易戦争が解決すれば米ドルは軟化する可能性があります。英ポンド は非常に過小評価されていますが、ブレグジットを取り巻く不透明感と年内に総選挙に持ち込まれる可能性から変動性の高い展開が続くと見ています。ボリス・ジョンソン首相が欧州との交渉を成立させるか、再度国民投票が実施される運びとなれば、英ポンドは反発すると考えます。
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