投資戦略の見通し
OUTLOOK

The pause that refreshes
回復に向けての小休止

世界の中央銀行はハト派に転じており、中国の景気刺激策は予想以上に強く、貿易戦争の緊張は緩和の方向に向かうなど、景気サイクルは株式をサポートするものとなっています。しかしながら、世界経済は現在景気サイクルの後半にあるため、アップサイドは限られると見ています。

ご留意事項 必ずお読み下さい 

S&P500®指数は、2018年9月20日から12月24日の間に19.8%下落し、かろうじて弱気相場(直近高値から20%下落)入りを免れた後、3月12日現在で18%上昇するなど、ボラティリティの高い相場展開となっています。これは、投資家の移り気度合いが高まっていることを浮き彫りにしています1

現在、市場は世界経済の鈍化を示すデータと、今年後半の改善を示唆する要因との間で方向感を決めかねている状態にあると考えられます。FRBがよりハト派にシフトし、中国政府が景気刺激策の発動に動き、世界経済の成長を抑制していた一連の一過性の要因が過ぎ去り、反発が期待できることから、ラッセル・インベストメントは世界経済のサイクルは穏やかに改善すると見ています。一時的要因の後退としては、EUの新しい排ガス規制がもたらした低迷からの欧州における自動車生産の回復、米国内生産に影響を及ぼした一連の自然災害の影響の減退、米連邦政府による35日間の操業停止後の米国生産の回復などが挙げられます。

また、米中間の貿易戦争を巡る緊張は緩和の方向に向かっており、世界貿易や景況感を抑制していた要因が外れることも期待されます。

しかしながら、株式市場におけるチャンスは限られているように見られます。米国では、失業率が4%を下回るなか、余剰生産能力は限られています。賃金上昇はすでに企業の利益率を脅かし始めており、最終的にはインフレ率が上昇し、FRBは行動を起こす可能性があると見られます。ラッセル・インベストメントは、政策金利が2019年中に一度引き上げられ、2020年にさらに2度引き上げられると予想します。これが現実のものとなれば、金融政策はわずかに引き締め領域に入り、2020年後半または2021年中のいずれかに景気後退入りするリスクを生み出すことになります。

現在、市場にはゴルディロックス2、適温相場が戻ってきているように見えます。歴史は、世界株式が景気サイクルの後期においても、たとえ引き締め政策下にあったとしても、上昇を続ける可能性があることを物語っています。後期サイクルで犯しがちな過ちは、最後の上昇を追いかけず早めにディフェンシブな姿勢に転じることです。1-3月期を終える現段階において、ラッセル・インベストメントは、現在の株式に対する配分は適正なものと考えています。今後、インフレ圧力の高まりに合わせ、デュレーションの長い債券のエクスポージャーを減らすことを選好します。

市場予測との乖離

FRBのパウエル議長は、昨年10月に発言した内容について市場からの洗礼を受けました。「中立金利まで長い道のりがある」との発言は、さらに多くの利上げを計画しているとの印象を与え、2018年後半の市場調整を誘発しました。その後、2019年初めに打ち出されたハト派的なメッセージが市場回復の大きな要因となりました。

上図のFF金利先物の動きは、FRBのハト派的な内容の政策をめぐる市場見通しが劇的に変化したことを示しています。昨年11月初旬には、2019年末までにさらに3回の利上げが予想されていましたが、3月中旬時点では2019年末までの利下げ確率が30%、2020年末までの利下げ確率が70%と予測されています。

FF先物市場は一部の軟調なデータやFRBの発表に対して過剰な反応を示していると考えています。米国経済は、昨年の景気刺激策効果の剥落とともに減速傾向にありますが、2018年の国内総生産(GDP)成長率は2.9%と持続不可能なほど力強いものとなっています。ラッセル・インベストメントは、米経済は減速はしているものの、依然として長期トレンドの1.8%を大幅に上回る2.2%近傍の成長が可能と見ています。この水準での経済成長が持続されれば、価格上昇圧力が高まるため、FRBが年内に利上げを再開する可能性があると予想しています。

中国の景気刺激策

中国経済は引き続き鈍化しています。下図は、製造業購買担当者指数(PMI)が昨年12月に貿易摩擦の影響を受けた輸出の急激な減少から景況感の改善と悪化の分岐点となる50を下回ったことを示しています。

これがもたらすポジティブな点として、景気減速期には、当局はより積極的な景気刺激策を取ることが挙げられます。中国で年初に発表されるデータは、旧正月に起因する歪みを持つため常に解釈が難しく、このノイズを考慮すれば、銀行融資およびより広範な社会的融資は1月から2月にかけて拡大したと見られます。

また、中国政府は幅広い領域での減税を発表しており、今後数カ月でインフラ事業への地方政府の支出が増加する可能性が高いと見られます。

中国は、2009年と2015年の経済停滞期において、大規模な財政・信用拡大刺激策を実施しましたが、今回は、高い債務水準と金融の安定性に対する懸念が過去のもの程ではないことなどを考慮すると、それほど大規模なものにはならないと見ています。

ただ、景気刺激策は確実に実行されており、今後数カ月のうちに中国および世界経済を下支えすると見ています。

資産クラスの選好

サイクル、バリュエーション、センチメントの3要素から成るラッセル・インベストメントの投資戦略プロセスは、2019年3月21日現在、世界株式に対して概ねニュートラルな見方を示しています。

  • 主に割高なバリュエーションから、米国株式に対するネガティブな見通しを継続します。FRBの利上げ休止により、サイクルの見通しは若干改善しました。
  • 米国株式より非米国の先進国株式を選好します。日本と欧州の株価は適正水準と判断しています。日本は中国経済の見通しが改善したことによる恩恵を受けると見ており、欧州は財政刺激策を打ち出しており、最大部門である金融セクターにおいて1株当たりの利益が大幅に改善する可能性があると考えます。
  • 新興国市場では、債券より株式を選好します。その根拠として、FRBの利上げ休止、中国の景気刺激策、そして貿易戦争の緊張緩和の可能性が挙げられます。
  • ハイ・イールド債は、割高な状態にあると考えられ、サイクルのサポートを失いつつあります。これは、企業の収益成長が鈍化し、債務不履行が懸念される景気サイクルの後半によく見られる典型的な現象です。
  • 国債については、米国債は適正水準にあると見ています。ラッセル・インベストメントの定量モデルは、米10年物国債利回りの適正水準を2.7%と示唆しています。
  • ドイツ、日本、英国の国債は非常に割高感が強く、利回りは適正水準を大幅に下回っていると見ています。インフレ圧力が徐々に高まるにつれて、景気サイクルはすべての債券市場にとって逆風となります。
  • 実物資産については、ポジティブな見方を継続します。不動産投信(REIT)はやや割安、グローバル上場インフラストラクチャー(GLI)やコモディティは適正水準近傍で取引されており、コモディティは、インフレ圧力が高まるにつれて、サイクル後期の恩恵を受けるのが一般的です。ラッセル・インベストメントは、GLIが、欧州経済の回復に伴い恩恵を受けることを期待していますが、米国債利回りの上昇は、世界のREITにとって逆風となります。
  • 為替市場では、日本円を選好します。日本円は足元でかなり過小評価されており、過度に悲観的な成長期待が修正され、投機筋による大規模なショート・ポジションからの逆張り的なセンチメントに下支えされる可能性があると考えています。ユーロと英ポンドは過小評価されているとみています。欧州経済の回復はユーロを支えるはずで、英ポンドはブレグジットの交渉をめぐって不安定ですが、欧州との合意が固まれば回復が期待されます。その場合、ユーロよりも上値余地が大きいと考えています。

 

※ 上記の正式原本は以下英語版のものであり、翻訳文は原本を理解する上での参考資料です。原本と翻訳に矛盾が有る場合は、原本が優先します。
https://russellinvestments.com/us/global-market-outlook/investment-strategy

1弱気相場とは、悲観論が広がり、投資家心理が消極的になる中で、株価が直近の高値から20%以上下落する状態を指します。
2ゴルディロックスは、過度に暑くも寒くもない経済環境、すなわち、緩やかな経済成長を維持し、インフレ率が低く、市場に優しい金融政策を可能にする成長と定義されています。

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