米国
OUTLOOK

たわむか、壊れるか。

米中貿易戦争が世界経済の成長と企業収益見通しに影を落とすなか、米国の多国籍企業は強硬な向かい風に直面しています。これまでのところ、米国経済は2016年初頭からの定石に従って推移してきました。すなわち、製造業は景気後退を示唆する一方、消費は引き続き堅調に推移し抵抗力を見せています。しかしながら、労働市場が軟化の兆しを見せ始めるなか、資産価格を下支えするファンダメンタルズを再び高めるためには、貿易協議が進展することが不可欠と見られます。

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たわむか、壊れるか。

米中貿易戦争が世界経済の成長と企業収益見通しに影を落とすなか、米国の多国籍企業は強硬な向かい風に直面しています。これまでのところ、米国経済は2016年初頭からの定石に従って推移してきました。すなわち、製造業は景気後退を示唆する一方、消費は引き続き堅調に推移し抵抗力を見せています。しかしながら、労働市場が軟化の兆しを見せ始めるなか、資産価格を下支えするファンダメンタルズを再び高めるためには、貿易協議が進展することが不可欠と見られます。

ご留意事項 必ずお読み下さい 

変曲点

2019年10-12月期に入る局面で、金融市場は変曲点を迎えています。米中貿易戦争を巡る不透明感が企業の景況感に影響を与え、設備投資は鈍化、企業収益の伸びは低迷し、米国債は逆イールドとなり、10月初旬に予定されている米中閣僚級貿易協議の行方を見守るしかなくなりました。

ワシントンDC発で占う将来の状勢は、9月にはよりバラ色に見えます。2019年10月1日に予定されていた関税税率の引き上げを延期するというトランプ大統領の「善意のしるし」を受け、中国は米国の農産物の輸入に向けた好意的な対応を検討し始めました。市場のコンセンサスは、こうした前向きな方向性の延長線を予測したものと思われ、足元では2019年10月15日と12月15日に予定されている関税の段階的な引き上げが中止される「ミニ・ディール」の可能性に焦点が当たっています。そうなれば、2019年7-9月中に見られた報復合戦から歓迎できる展開に転じることが予想されますが、企業部門を前進させるほどの規模にはならないと見られます。企業の経営陣は、今後5年間の見通しに対して投資の決断に十分必要なだけの自信を持つ必要があり、特に貿易摩擦の影響をすでに受けたセクターにおいては、その自信を再構築するために現在かけられている関税の部分的な排除と、明確で信じるに足る撤廃計画が必要になると考えます。

年末までに不透明な霧が晴れれば、世界経済は再び加速すると考えます。米国株式は、ファンダメンタルズが強いこの期間に反発する可能性が高いものの、バリュエーションがより魅力的な水準で取引される他地域の株式市場と比べ、回復のタイミングは遅れると見られます。

一方で、貿易交渉が決裂し、関税のさらなる引き上げがあれば、米国および世界経済は容易に景気後退入りすると考えられます。一部の重要な指標は既にそうした状況を示唆しています。信頼できる米国債の利回りが5月以降逆イールド化、全米供給管理協会 (ISM) による製造業の新規受注指数は8月に47と、景気後退を示す水準まで大幅に低下しました。

FRBは、こうした展開の中で脇役に留まっています。貿易戦争の下方リスクに抵抗するため今年7月と9月に利下げを実施しましたが、インフレ期待が非常に低水準に留まっていたため、利下げ方向への方向転換は難なく行うことができました。ラッセル・インベストメントは、ベースライン・シナリオとして、年末までにあと1回追加利下げを行うと予測しています (10月中に実現する公算が最大) 。金融政策を巡る不透明感が強く、あと何回追加利下げが必要なのかを明確に予測することは難しいものの、(25bpsずつの利下げであればあと8回利下げできる余地があるため)1回から8回のどれかになることは確実です。FRBによる見通しを見極めるために投資家が使用できるベンチマークの一つに、米国債のイールドカーブがあります。貿易を巡る見通しが不透明ななか、イールドカーブの逆イールド化は(景気後退入りに対する政策余地を残しておくため)金融政策が引き締め的になる可能性を示唆しています。ただし、FRBは緩和的政策を維持することを望んでおり、現在の金利水準を考えると、あと2回の追加利下げが必要と見ています(ラッセル・インベストメントのベースライン・シナリオ)。米国債のデュレーションに対してはニュートラルに見ており、ラッセル・インベストメントは、マルチアセット・ポートフォリオにおいて、下方リスクが強まる局面で債券が依然として非常に重要な分散の役割を担うと考えています。

投資戦略の見通し

  • ビジネスサイクル:若干ネガティブと見ています。 米国経済は景気サイクルの終盤にあり、今年8月に見られた貿易戦争の熾烈化は米国の製造業と世界の設備投資を圧迫すると見られます。今後の景気見通しは米中貿易政策次第になると見ており、ネガティブな結果になった場合、米国株が下落する可能性の方が(そうでない場合に上昇する可能性より)高いと言うリスクの非対象性が認められることから、足元ではダウンサイドリスク・バイアスがあると考えています。イールドカーブの警戒シグナルとBCIモデルは、これを支持するデータを提供しています。ラッセル・インベストメントは、2020年に米大統領選挙を控えていることから、最終的に貿易協定が成立するシナリオの可能性の方が高いと見ています。しかしながら、上述の様々なリスクを鑑み、景気後退に向けて前もって準備をするより、各リスク要因の進展を見極めつつ、状況に応じて判断していくことを選好します。
  • バリュエーション:割高と見ています。年初来の反発により米国株式のバリュエーションは大幅に押し上げられています。これまでは割引率の低下が支えになってきましたが、向こう10年間に企業の利益率が平均回帰 (低下) すると想定すると、ラッセル・インベストメントが予想するS&P 500®指数のリスクプレミアムは歴史的な標準的水準を下回っています。
  • センチメント:ニュートラルと見ています。米国株式は過去12カ月間で2.6%とわずかなリターンとなり、ラッセル・インベストメントのモメンタム指標に、10-12月期を迎える時点で目新しい点はありません。自社開発した総合的な投資行動指標は、8月に相場が乱高下時した際にもパニックや高揚感を警告することなく、ニュートラル圏に留まっています。
  • 結論:米国株へのネガティブな見通しは、割高なバリュエーションに起因するもので、中長期的にはリターンドライバーは報われると見ていますが、短期的には米国株への配分への確信度は高くありません。
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