米国
OUTLOOK

Die another day*
景気後退入りは先送り

世界の景気サイクルは、中国のレバレッジ縮小、欧州政治、貿易政策の不確実性などが懸念され、1年以上弱含みで推移しています。米国経済は、2018年最初の11ヵ月は回復基調にありましたが、12月下旬にかけては、地域別の製造業景況調査及び米国サプライ管理協会の製造業景況指数が2008年以降最大の下落となるなど、急激に減速しました。2019年初頭には、関税、政策の不確実性、海外からの需要の低迷を背景に、新規受注とCEO信頼感が低下、景気後退懸念が高まり、政府はこれに応える形で大規模な政策を打ち出しました。この政策効果は景気後退入りを先送りし(die another day ) 、今回の景気拡大を、永遠とまでは行かないまでも、少なくとも史上2番目の長さまで延長すると見られます。

*この例えは、2002年のジェームス・ボンドの映画、Die Another Dayに言及しています。

ご留意事項 必ずお読み下さい 

サーキットブレーカー

米国経済が景気後退期に入るリスクは、以下の3つの政策発動によって軽減されています。

中国:アジア太平洋の章で述べている通り、中国経済は、景気刺激策の本格化を支えに、2019年には6%台の安定した経済成長を遂げると見ています。米大手多国籍企業の収益予測が下方修正されていますが、この背景には外需の低迷があり、2019年のS&P500®指数の収益成長は、中国の景気刺激策の恩恵を受けることから、5%近傍で安定的に推移するものと見ています。

トランプ大統領:トランプ大統領は、2018年の大半において関税やその他の懲罰的措置を積極的に打ち出し、中国から譲歩を引き出す戦略を打ち出してきましたが、年後半には、米株式市場と景況感の悪化を受けて、交渉が前進していることへの自信を定期的に表明する戦略に方向転換しました。この方向転換は、個別企業のファンダメンタルズおよび市場にプラスの効果をもたらしています。ラッセル・インベストメントは、2019年4−6月期には両国間で貿易に関する合意に至ると予想していますが、概略および合意の永続性について、現段階では予測は難しい状況にあります。

パウエルFRB議長:金融市場の緊張、世界経済の減速、そして昨年12月下旬の米景気減速を受け、パウエルFRB議長は急激に方針を転換し、今後の金融政策について、より忍耐強い姿勢で臨むことを強調しました。パウエル議長は、連邦公開市場委員会(FOMC)後の声明文において、コア・インフレ率が2%目標未達が続くなか、今後数カ月は忍耐強い様子見姿勢で経済状況を見極めると表明しました。これは大きな方向変換でした。これまでのFRBは、強い経済環境と労働需給の引き締まりがインフレを徐々に押し上げるとの期待だけで利上げを正当化しているように見えました。現在、パウエル議長は、中立金利を超えた水準の利上げに踏み切る前に、実際のインフレ率が加速する証拠を待つことにしています。これは特に重要なことと考えられます。なぜなら、コアPCEインフレ率1が3月中旬に2%から1.8%に低下するなど、実際には期待と異なるデータが出ていたためです。このため、ラッセル・インベストメントは、現在のFRBの利上げ休止は、世界経済が回復期の初期段階に入っても継続可能と考えています。これは市場にとっては追い風となりますが、私たちは、FRBは年内に利上げを再開する可能性があると考えています。そのタイミングのベースラインシナリオは、当初見込んでいた9月から12月に後ろ倒ししています。引締的な金融政策とイールドカーブの逆転は、景気拡大期が終焉に差し掛かっていることを早期に示す警告とみなされています。ラッセル・インベストメントは、以前は、逆イールドが発生するのは2019年第1四半期と考えていましたが、現在は2019年後半とみています。 3月末に一旦3ヵ月と10年のイールドカーブが逆イールドとなりましたが、すれもそぐに解消されており、当イールドカーブが恒常的に逆イールドを形成するのは早くとも2019年後半、FRBによる金融引き締め政策に転換も2019年後半までは可能性が低いと考えています。これを受けて、景気後退期に入る可能性が最も高いタイミングは、通常のリードタイムを考えると、これまでの想定より6カ月から9カ月遅い2020年後半あるいは2021年となると見ています。

米国経済は、中国の景気刺激策、トランプピボット、パウエル議長の休止に反応しているように見られます。住宅ローン金利の低下は住宅市場の安定化に寄与するという暫定的な証拠があり、また、消費者や企業の景況感を考慮するモデルは、下のグラフが示す通り、2月に上方への変曲点を迎えた兆候を示しています。米国の消費者ファンダメンタルズは、失業率の低下と賃金インフレの加速が家計所得を押し上げるなど、引き続き堅調に推移しています。

投資戦略の見通し

  • 景気サイクル:ニュートラルからわずかにポジティブと見ています。景気はサイクルの後期にあり、財政刺激策の効果が剥落する中、米国経済は2018年に比べて減速する公算が高いと見られます。しかしながら、ラッセル・インベストメントは、利上げの一時休止に加え、世界経済の成長見通しが持ち直してきていることから、米国経済は2019年、長期トレンドを上回る成長を遂げると考えています。2019年のS&P500®の1株当たり利益成長率は5%と、株式アナリストのコンセンサス見解とほぼ同水準を見込んでいます。
  • バリュエーション:割高と見ています。年初来の反発により、米国株式のバリュエーションは大幅に上昇しました。今後10年間の企業の利益率が、ここから平均回帰(低下)に向かうと仮定すれば、S&P500®指数のリスク・プレミアム予想2は魅力に欠けるものとなっています。
  • センチメント:ニュートラルと見ています。モメンタム・シグナルは、2018年10-12月期の急激な低下 と1-3月期の急激な回復により、方向感の定まらない状態となっています。2018年末にパニックに陥った市場は、足元においては、パニックに陥っているようにも、幸福に浸っているようにも見えません。
  • 結論:割高なバリュエーションを背景に、米国株式をややネガティブと見ています。

※ 上記の正式原本は以下英語版のものであり、翻訳文は原本を理解する上での参考資料です。原本と翻訳に矛盾が有る場合は、原本が優先します。
https://russellinvestments.com/us/global-market-outlook/united-states

1個人消費支出インフレ率とは、消費者が経済環境全体で購入する財・サービスの価格変動を示す指標
2リスク・プレミアムとは、現金や国債のような安全資産に対する株式の期待収益率です。

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