2018年 ESG運用機関アンケート調査

ご留意事項 必ずお読み下さい 

2018年11月27日
プーニート・ティアラ、ラッセル・インベストメント(米国) 米国株式リサーチ・アナリスト

※以下は、2018年9月5日にラッセル・インベストメント(米国)のHPに掲載された英文記事を翻訳したものです。

 

ESG運用機関アンケート調査:調査内容と背景

投資における「環境、社会、ガバナンス(ESG)」要因の重要性は、ここ数年で飛躍的に増加しています。そのため当社は、かねてより債券運用機関に対するESG調査を毎年行ってきました。しかし、今年はより広範な調査範囲をカバーし、包括的な理解を得たいと考え、すべての資産クラスのあらゆる規模の運用機関を対象に、299社がESGの考慮事項を投資プロセスにどのように組み込んでいるのかのアンケート調査を実施しました。

本レポートでは、以下の点を中心に全体的な結果を報告いたします。

  • 国連責任投資原則(以下UNPRI)の採択状況
  • 責任投資方針の実践
  • 専任の投資プロフェッショナル
  • 投資プロセス:動機、データおよびリサーチ 

UNPRI署名機関の動向および責任投資方針

UNPRIは、責任投資方針の実施を積極的に支援する、世界的に認知された基準です。したがって、世界中の運用機関のうちどの程度がUNPRIに署名し、責任投資方針を策定したのかを、調査から確認することが重要です。

アンケート回答運用機関の大半が実際にUNPRIに署名しており、責任投資方針を採用していることが明らかになりました。しかしながら、これは地域、採択時期、運用資産残高(AUM)によって、大きく異なることも明らかになりました。

 地域差

図表1と2で分かるように、米国、カナダ、アジア(日本を除く)を拠点とする運用機関は、他の国・地域の同業他社に比べて責任投資への取り組みがかなり遅れています。今後12カ月間に責任投資方針の採用を予定している運用機関(図表2)を含めても、上記の国・地域における取り組み状況は依然として最低水準にあります。

 

 

 

UNPRIの採択の時期

この傾向は、該当する国における運用機関がUNPRIに署名した時期とも一致しています。北米地域(米国とカナダ)の回答機関のうち50%以上が、2015年以降にUNPRIに署名しました。一方、全回答者のうち、日本、オーストラリア、ニュージーランド、英国、欧州大陸の大半の運用機関が、2015年より前からUNPRI署名機関となっています。UNPRIの署名機関数は、2006年以来急増しています。また、運用機関が署名した時期と、どの程度責任投資方針を実践しているか、には明確な関連性があります。つまりこれは、UNPRIに署名することは重要なポイントにはなりますが、実際のESGの運用へのインテグレーション(統合)*を明確に示すものではない、ということを示唆しています。

*ESGのインテグレーション:既存の投資先判断の中に、財務情報だけでなく、非財務情報、すなわちESG情報をともに織り込んで判断していこうというアプローチ。どのような非財務情報をどれだけ重視するかは個々の機関投資家の判断となるため、ESGインテグレーションの在り方は様々となる。

UNPRI採択と運用資産残高は確実に相関

また、UNPRIへの署名と責任投資方針の普及が、運用機関の運用資産残高に伴って増加することも見いだされました。当社の調査によると、責任投資方針を持つUNPRI署名機関の割合は、運用資産額が5,000億米ドルを超える運用機関の場合、資産額100億米ドル未満の運用機関に比べて2倍高いことが分かりました。これは、大手運用機関にはUNPRI署名者になるために必要な責任を果たし、詳細な責任投資方針を持つためのリソースがあり、おそらくはビジネス上のインセンティブもあることが背景にあると考えられます。

投資プロセス:専任のESGプロフェッショナル

運用資産規模がカギ

当社の調査によると、業務時間の90%以上をESG特有の課題に費やすESG専門家がいる運用機関は36%に留まります。地域別で見ると、米国、カナダ、アジア(日本を除く)の運用機関は、他の調査対象地域と比較して、ESG専門家を抱える割合が低いことが分かりました。この点については、運用資産残高が非常に強力な要因と見られます。

  • 運用資産残高が5,000億ドルを超える運用機関の92%に、ESG専任プロフェッショナルがいます。
  • 一方で、運用資産残高が100億ドルを下回る運用機関の91%は、ESG専任者がいません。

大規模な運用機関に比べ、小規模なブティック型運用機関では従業員数が限られていることが多いため、この関係性は驚くべきものではありません。

投資プロセス:インテグレーション(統合)への旅

動機は? 顧客ニーズと優れたリスク調整後リターン

35%の運用機関にとって、ESGを投資プロセスに統合する当初の動機は、主にビジネス関連と顧客ニーズへの対応でした。一方、28%の運用機関は、優れたリスク調整後リターンに対する信条が動機となっていました。

ESGの統合を維持する上での現在の動機について尋ねると、優れたリスク調整後リターンの獲得が主な動機となっていた運用機関の数は、約4%増加して32%になりました。ビジネス関連および顧客ニーズという理由は、35%から33%に若干減少しています。こうした変化は小さいものの、ESGの統合は、ビジネス主導型と言うよりは、やや投資主導型になりつつあることを示唆しています。

 

個々のESG要因と投資判断—ガバナンスが圧勝

個々のESG要因のうち、投資判断に最も大きな影響を与えるのはどれかを尋ねると、91%の運用機関がガバナンスを挙げました。一方で、35%の運用機関は、ESGの考慮事項が証券特有のリスクを増加させる場合に限り、ESGの考慮事項が投資判断よりも重要になると述べました。これに対して、ESGの考慮事項が、優れた証券リターンを生み出す場合にのみ、ESGの考慮事項が重要になると回答したのは、僅か16%でした。興味深いことに、49%は証券特有のリスクを増加させる、または優れたリターンを生み出す可能性の有無にかかわらず、ESGの考慮事項が投資判断よりも優先されることは認めていません。

投資プロセス:データとリサーチ

情報源

調査によると、ESGデータとインサイト(洞察)に関する一般的な情報源は、ESGリサーチベンダー、企業への直接のエンゲージメント、および企業の法定開示書類です。運用機関に多く利用されいる主要なESGリサーチベンダーは以下の通りです。

  • MSCI(モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル)
  • ブルームバーグ
  • ISS
  • サステイナリティクス

その他には、Trucost、Ethix、CDP、グラスルイス、RepRisk、Vigeoが挙げられました。

ESG定量データの利用

全社的な投資プロセスにおけるESG定量データおよびスコアの利用は、グローバルに見てあまり進んでいないようです(欧州本土を除く)。当社の調査では、合計56%の運用機関がESG定量データを投資プロセスに組み込んでいます。投資プロセスにおいてESG定量データを利用している運用機関の80%は、社内データと外部データを併用している一方、12%は外部データのみに依存しています。

資本市場リサーチ

より幅広い市場に関するインサイト(洞察)という視点では、31%の運用機関が独自のESG資本市場リサーチを実施し、自社の運用へのESGインテグレーションへの取組みを支援しています。運用資産規模が低下するにつれて、資本市場リサーチの実施は減少します。さらに、米国、カナダ、アジア(日本を除く)に所在する運用機関は、(より先行している同業他社と比較した場合)独自のESG資本市場リサーチを優先付けしていないことが分かりました。これらの結果は、地域別や資産規模別でも同様の傾向を示している、上記の図表1および2と同じ傾向を示しています。

ESGのインテグレーション(統合):地域、資産残高、リスク管理

地域

地域別に見てみると、ESGのインテグレーションの度合いには明確な差があることが分かりました。欧州本土、英国、日本、オーストラリア、ニュージーランドは、米国、カナダ、アジア(日本を除く)の同業他社に比べ、ESGへのリソース配分やインテグレーション基準に関する複数項目において、一貫して優位となっています。とはいえ、米国とカナダに拠点を置く運用機関も、ESG要素の取り入れやインテグレーションにおいて改善している兆候が見られました。米国、カナダ、アジア(日本を除く)が、他の地域の同業他社に追いつく努力をする中、こうした国々の進捗状況をより明らかにするためにも、ESG統合における毎年の変化を確認することが重要と考えます。

運用資産残高

運用資産残高の水準を見てみると、残高水準が低い運用機関は、高い運用機関よりもESGへのリソース配分が少なく、ESGの統合が低い傾向にありますが、これは直観的に理解できます。小規模の運用機関の投資プロフェッショナルは複数の業務を兼任し、従業員数も少ないでしょう。一方、大手運用機関では、すべての商品により多くの注意を払える集中的なリソースチームを有しています。

リスク管理

ESG要因が投資判断よりも重要となるような状況を考えた場合、運用機関はESGの考慮事項を、優れた証券リターンを生み出す要素としてではなく、証券特有のリスクを生み出す要素として、より強く懸念するようです。これは、ESGの統合が、潜在的により高い収益を生み出すチャネルではなく、リスク管理の実践として広く見なされていることを示唆しています。

原文はこちら

 

(注)本レポートはラッセル・インベストメントが2018年に実施した運用機関宛てのアンケートに基づき作成したものです。アンケートは、ラッセル・インベストメントとして株式や債券の運用戦略において一定以上の評価をしている運用機関を対象とし、299社から回答を得ました。回答運用機関の地域配分は、北米約61%、欧州約24%、豪州・ニュージーランド約10%、日本を含むアジア5%でした(拠点ベース)。運用資産規模別では、100億米ドル未満の運用機関が約34%、100億以上300億米ドル未満が約23%、300億米ドル以上が約43%です。運用戦略数で1,723戦略がカバーされ、回答運用機関の50.5%は株式・債券の両方の運用戦略を運用、38.8%は株式戦略のみ運用、10.7%は債券戦略のみを運用、となっています。

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