不透明な市場環境を前に年金運営を考える

ご留意事項 必ずお読み下さい

2019年4月2日
本部 崇仁、エグゼクティブ コンサルタント

年末年始の国内株は、大波乱であった。2018年12月3日に1,689(終値)だったTOPIXがその後1,415(12月25日の終値)まで急落。年末にかけて少し戻したものの、波乱含みの大発会、そして中国をターゲットにしたトランプ発言などで再び混乱と市場参加者を不安にさせるネタには事欠かなかった。

もっとも、過去からの推移で見れば一株当たり当期利益は大幅には低下していない中、PER(株価収益率)が比較的低いなどバリュエーション指標が良好なためか、足元の株価は、年末の暴落分を約70%程度取り戻している(2019年3月6日時点)。しかし、株価は未来の企業業績の鏡であり、地政学的リスク等を勘案すれば、楽観的な2019年を描く人はあまり多くないだろう。まさしく本格的に不透明な年の到来といってよい。

このような状況で今年の運用のテーマは、昨年度から注目してきたリスク管理やリスク抑制で間違いないと改めて思いを固めた運用担当者も多いのではないだろうか。そして、こんな相場で忘れてはならないことがある。それは、対策のタイミング等で結果に大きな差が生ずる可能性があることだ。

例えば、秋ぐらいから対策の検討を開始して春から実施、というのは一般的だと思うが、相場が年始から春にかけて暴落し、春以降ボックス圏で推移し、秋以降少し持ち直した場合、残念な結果になる可能性が高い。

一般に相場観に過度に頼った運用は賢明でないと言われるものの、ありそうなリスクを抑制するために可能な手を打った方がよいのは事実だろう。年金運用ではプロセス責任が重視され、組織的コンセンサスを得るのに「時間」をかけるのが一般的だ。この行為自体を否定するわけではないが、時としてこの「時間」が災いを招くことがあるのも事実なのだ。

こういう話をすると、年金は長期運用なのだから策を弄するより、信じたものを長期に維持しさえすればよいと推奨しているように思うかもしれないが、そうではない。運用プロセスそのものを見直すことで、より効率的な運用が実現できる可能性があるのではないかと考えているのだ。

プロセス自体に光をあてる

年金運用では、これまでプロセス自体を抜本的に見直すことに光を当ててこなかった。すなわち、3~5年ごとに政策資産配分を設定し、半年近くかけて採用する運用商品を選定し、数年単位で当該商品を評価するというプロセスに盲目的に従ってきた。

経済や市場のスピード感が一昔前と比べて劇的に変化し、よりアダプティブな対応が求められるようになったにも関わらず、年金運用の基本プロセスはほとんど変わっていないのだ。

現実を細かく見れば、リバランスの工夫、資産クラスを広く定義し運用の柔軟性を確保するなど実務対応は進めてきた。しかし、運用プロセスに起因する問題を包括的に考えてきたわけではない。様々な領域でガバナンスはキーワードであり、この機会により新鮮な目で年金運営を考えてみるのもよいと考える。

プロセスを変えるためのアイデア

では、具体的にどのような方法があるのだろうか。戦略的パートナーシップ、アウトソースCIOなど様々なアイデアを耳にするが、いずれもハードルは低くはない。そのような中、マルチ・アセット運用商品(以下、MA)は比較的利用しやすい候補と言える。MAを基金の運用プロセスに起因する非効率性の改善、行動経済学で指摘されるような歪みの低減、そして意思決定の分散のためのソリューションとして利用するのだ。

当たり前のことだが、これは身近にあるMAを適当に組み合せればよいと言っているわけではない。そして、懐古主義的にシンプルなバランスファンドの組合せをイメージしているわけでもない。多様な資産クラスに知見がある運用機関で組成された、戦略・戦術的に特徴があって魅力的なMAを組み合わせ運用全般のレベルアップを図れなければ意味がないからだ。

 

プロセスを再考し、運用機関へ働きかけを!

もしかしたら、このような提言は、現在日本に提供されているMAだけを見ると違和感を覚えるかもしれない。しかし、海外では個人投資家からもMAに対する戦略的なニーズがあり、より戦略的なMAが提供されている。このことはすなわち、日本の投資家も意識やニーズが変われば、海外におけるものと同じような戦略的なMAが利用可能となり、より進化を期待できる素地が国内にもあることを意味する。

そのためにも今一度、現在の運用プロセスの限界等について幅広い投資家としての視点で見つめ直し、よりよい運用プロセスのためのあるべき姿について再考してみてはどうだろうか。そして、是非その議論の結果を運用機関に伝えてほしい。理想の運用プロセスを手に入れるために。

 

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