2026年グローバル・マーケット・アウトルック

市場の大転換点

2025年前半は政策の混乱により市場が揺さぶられる展開となりました。4月には1930年代以来最大の追加関税が発表され、1950年代以来最も厳しい移民規制、さらに1980年代以来最も積極的な規制緩和策が実施されました。加えて、米国とドイツでは景気刺激策の法案が成立しました。

しかし、市場はこうした混乱に適応力を示しました。2025年を象徴するテーマが市場の「レジリエンス(強靭性)」であるように、世界の株式市場は4月の安値から大きく回復し、年後半に向けて史上最高値圏に到達しています。当社の予想は比較的強気であったにもかかわらず、実際のファンダメンタルズは予想を上回り、経済成長率と企業収益のコンセンサス予想値は4月以降の下落分をほぼ取り戻しました。

The year of resilience 2025 chart

市場の強靭性は新たな局面に突入し、大きな転換点を迎えようとしています。2025年の政策ショックは金融システムに試練を与えただけでなく、テクノロジーの進化や世界経済の成長構造の変化、世界的な資本フローの転換と加速をもたらしました。先行きの不透明感が後退する中で、政策混乱への過剰な反応は緩和傾向となり、市場は新たな展開に備える局面へ突入しています。

2026年以降の投資環境を左右する転換点は3つあります。第一に、生成AIの導入が加速し、エネルギー需要、生産性および収益構造の変容が幅広い産業で見られる可能性があります。第二に、関税問題や政策に対する懸念が後退し、緩和的な金融環境や財政出動といった好条件が生じることにより、米国経済が力強さを取り戻す可能性があります。第三に、世界的な経済成長が新たな局面に突入すると、新たな市場の牽引役に投資資金が分散されることで、市場の集中度が緩和され、投資機会が多様化する可能性があります。

生成AIの進展:生産性の革命

2026年にはAIの導入が加速すると予想されます。AIインテグレーションは、これまで中心であったテクノロジー産業から、他の産業にも拡大する見通しです。テクノロジーによって多種多様な業務が補完される中で、AIインテグレーションの拡大により、労働需要や企業の成長構造が変容する可能性があります。また、企業間では、AIをうまく活用できるかによって業績の差が広がると考えられます。

企業は新しいテクノロジーにより既存の労働力を増強することに成功しており、「同じ人数で多くを実現」しているように見えます。また、一部の学術研究では、AIの影響を受けやすいソフトウェア・エンジニアリングやカスタマーサービスなどの職種で、AIが新卒採用の状況を変化させ、テクノロジーにより生産性が大きく向上していることが示されています。AIの導入がテクノロジー産業以外にも拡大する中で、このような労働と生産性の構造変化は、経済成長と企業業績に影響を与える重要な要因になると考えられます。

2026年には、AIの効果により経済全体で生産性や収益性が向上すると考えています。重要な点は、新しいテクノロジーが導入された際の生産性サイクルは、いわゆるJカーブ効果により、当初はマイナスの結果となるものの、その後次第に上昇する場合が多いということです。企業が新しいシステムを導入して実験的に展開していくには初期コストがかかる一方で、労働者は新しいタスクを学習しなければならないという点が背景にあります。では、足元の経済環境はどの段階にあるのでしょうか。コンサルティング会社や資産運用会社などの調査によると、全般的に、企業でAI投資による収益化の兆候が見られ始めていることがうかがえます。

Rising ROI from generative AI adoption

評価できるポイントは2つあります。1つは、AI投資とAIの普及は持続的である可能性が高いことです。もう1つは、AIによる恩恵が、AIの提供者からAIの利用者へと拡大し始めている点です。これにより、企業のファンダメンタルズとパフォーマンス双方に恩恵がもたらされる可能性があります。

AI関連の設備投資やデータセンター建設はすでに米国や中国の成長に寄与しています。しかし、経済や市場に対し重大なリスクをもたらす可能性もあります。例えば、AIの導入が想定以上の速いペースで進んでいる場合、労働市場に混乱が生じる可能性があります。また、これまで長い間続いてきたビジネスモデルを終焉させる可能性もあります。オンライン・データ管理プラットフォームの一部では、既にウェブ・トラフィックの収入が大幅に低下しているという報告もあります。さらに、AIの構築には巨額の資金を要するため、資金調達市場を圧迫することも考えられます。AI向けの設備投資には、現在のところ企業の内部キャッシュフローが充当されていることが多い一方で、2030年までには資金調達需要が1兆米ドルを超える可能性があると考えます。

市場の強靭性を再考する

世界経済は転換点にあります。市場は依然としてテクノロジー要因と政策要因が複雑交錯する状況に直面していますが、成長要因は変化しつつあります。米国では、貿易協定によりここ数か月は関税率が安定しており、2025年前半に市場を混乱させた政策的な不透明感が後退しています。これは関税による悪影響がすでにピークを過ぎたことを示しています。一方、高所得層を中心とした経済成長は極めて緩和的な金融環境(特に株式市場の堅調さを背景としたもの)に支えられることが予想されます。逆風が弱まり追い風が強まる中で、私たちの分析では、リスクのバランスが市場の強靭性から経済の再加速へと移行していることが示唆されています。2026年の実質GDP成長率は2.25%から2.5%となり、トレンドを上回る可能性があると予想しています。

Policy implications

2025年は市場の強靭性がテーマとなりましたが、今後は堅調な経済ファンダメンタルズが企業業績を支え、雇用の解雇サイクル発生を阻止する可能性が高いと考えています。雇用の弱含みなトレンドは重大なリスクとなりますが、最近の雇用増加率下落のうち、85%は移民制限と政府雇用の縮小によるものであると考えています。言い換えれば、この減速は大半が政策によるものであり、循環的な低迷の兆候ではないと考えます。米国連邦準備制度委員会(FRB)は、労働市場の軟化を注視しながら利下げを実施していますが、FRBは2026年年初にかけて利下げのサイクルを減速または停止する可能性があります。現在、米10年債利回りは4.1%付近で取引されており、デュレーションリスクを選好するサポート材料となっています。

欧州経済は、良好な状態にあります。インフレ率は目標値の2%付近で推移し、労働市場は健全でバランスが取れています。欧州中央銀行(ECB)の政策金利も正常であり、経済成長も堅調です。欧州について注視すべきは、ドイツの財政刺激策による防衛投資やインフラ投資に関する点です。一部の推定によれば、来年のドイツ経済成長は倍増される可能性があることも示唆されています。

一方、新興国市場では経済状況がまちまちです。中国は、政府目標である5%に近い成長率を当面は維持すると予想されます。企業収益が新興国市場における明確な好材料となっており、中国テクノロジー企業による大幅な業績上方修正サイクルや、韓国の構造改革などが挙げられます。新興国株式は、2026年の当社グローバル株式戦略においても、引き続き優先的なオーバーウェイトです。

大規模なリバランス

AIの活用が広がる中、幅広い産業で企業の成長と収益改善が実現されている点は、市場のけん引役が米国の一部ハイパースケーラー企業からそれ以外へと分散化される転換点を示していることがと考えられます。今後は市場の分散が拡大し、選別投資の機会が生じると見ています。

株式市場は史上最高値圏で推移しており、バリュエーションも過去と比較して高水準にあります。一方で、S&P 500種指数に対する投資家センチメントは楽観的な水準にある兆候を示しておらず(当社推計)、慎重な見方が推奨される水準には至っていません。この心理水準を前提とすると、今後1年間は株式が債券を通常程度アウトパフォームすることが予想されます。個人投資家も機関投資家も、戦略的な目標に近いリスク水準で投資を継続すべきと考えています。

Equity market contrarian indicator

グローバルな分散投資を推奨する根拠は、世界的な企業のファンダメンタルズの改善と、貿易加重ベースでの米ドル下落の可能性にあります。新興国市場は、アクティブ運用の投資機会があると考えます。

米国債は、イールドカーブ全体にわたり当社のフェアバリュー近辺で推移しているため、債券およびマルチ・アセット運用においてデュレーションを選好しています。一方、パブリック市場のクレジット・スプレッドは過去最もタイトな水準にあります。一部の運用会社は、株式、証券化クレジットおよびプライベート・デットに対するエクスポージャーのローテーションを投資機会と捉えているようです。特にプライベート・デットは、パブリック市場と比較して引き続き大幅に優位な利回りとなっています。

また、地政学リスクの上昇、サプライチェーンの回復、政府債務の記録的な水準の長期化などの不確実性に対応して、実物資産、プライベート市場およびオルタナティブ資産への資金配分を通じ、ポートフォリオの強靭性を高めることが重要となっています。

投資家への示唆

2026年は、景気後退よりも経済の回復と再加速に備える必要があります。さまざまな市場での積極的な銘柄選択の機会を追求すると同時に、多様な収益源泉の確保を通じて、リターンを獲得と、投資の継続を追求してまいります。

株式見通し

ウィル・ピアース、ミーガン・ローチ、ピエール・ドンゴ・ソリア

パブリック市場とプライベート市場にわたる市場のけん引役多様化

堅調なファンダメンタルズと市場のけん引役の多様化を背景に、株式市場は新たな拡大局面に突入しています。パブリック市場とプライベート市場のいずれにおいても、AI投資サイクルの次段階や世界的な市場環境の回復に楽観的な見方が生じ、市場の追い風となっています。市場のけん引役が分散されることで、上場市場とプライベート市場のいずれにおいても、アクティブ運用機関に投資機会が台頭していると考えています。

キーポイント

  • AIの導入が「提供者」から「利用者」へと拡大する中で、市場をけん引するセクターが多様化する
  • 欧州、日本および新興国市場での投資拡大が予想される
  • アクティブ運用機関では、バリュエーション格差や市場の集中度の緩和により投資機会が台頭
  • プライベート・エクイティやベンチャーキャピタルは、AIが主導する投資機会の第二波を捉えようとしている

資本フローとAIの次期サイクル

AI投資は引き続き株式市場を決定付ける要因となっていますが、その影響は変化しています。初期サイクルではハイパースケーラーや半導体企業が主導していましたが、現サイクルでは幅広い企業への導入が見られています。今後は、生産性や利益率の向上を図るためにAIを活用する企業が恩恵を受ける可能性があります。

このような環境変化により、グローバル株式の勝者も変化しつつあります。米国の超大型株企業の影響力は衰えていませんが、AIインフラやAIの普及を背景とした投資意欲は、米国外の地域や先進的な中型株企業にも及んでいます。このような動きは、AIプラットフォームの提供者といった従来の狭い範囲から、AIの導入を通じて業績の改善や業務の効率化を図る広範囲な投資機会へと移行していると考えます。

多くの運用機関は、市場の集中度が緩和する局面を、銘柄選択の機会と捉えています。企業のファンダメンタルズは改善しているものの、バリュエーションはまちまちであることから、乖離性から利益を得るには規律あるアクティブ・ポジショニングが引き続き重要になるでしょう。

グローバルな投資機会の拡大とアクティブ運用の投資機会

バリュエーションは依然として高水準にありますが、市場参加者は改善傾向を示しています。欧州と日本では、政治改革と財政モメンタムが引き続き好材料であり、アジアではテクノロジーおよび製造業が業績予想の上方修正をけん引しています。企業業績の改善にもかかわらず、株価に割安感が見られる企業、例えば新興国市場のテクノロジー企業、欧州の景気敏感企業、AI導入による効率改善を進める米国企業などに、投資妙味があると考えています。

このような市場環境は、アクティブ運用に有利に働くと考えています。ポートフォリオ・マネージャーは、銘柄の分散、バリュー株とクオリティ株に対する緩やかなオーバーウェイト、小型株および中型株への選別投資などを重視しています。高モメンタム銘柄は引き続きアンダーウェイトとし、収益の持続性や地域的なバランスに焦点を当てています。当社プラットフォーム全体では、ファンダメンタルズがバリュエーションよりも速く改善している企業に投資することが、現在の投資環境下では良好な成果をもたらす可能性があると考えています。

グロース運用機関とバリュー運用機関の双方が、AIの発展に対応する取り組みを始めています。グロース運用では、生産性の顕著な向上と紐づいた業績成長の可能性を持つ企業を重視しています。バリュー運用では、AI導入を加速する企業の中で、ファンダメンタルズや価格決定力が改善している企業に投資機会を見出しています。こうしたスタイルのバランスを通じて、アクティブ運用ポートフォリオではクオリティや持続性を重視する規律ある運用への取り組みが見られています。

プライベート市場における同様の動き

プライベート市場でもパブリック市場と同様の動きが進んでいます。AIインフラの波は、データセンター、オートメーション、エネルギー転換技術などの分野における新規案件フローを押し上げています。ベンチャーキャピタルやグロース株式投資家は、上場市場の主要企業の周辺領域でのイノベーションを目標とし、プライベート・エクイティ運用機関は、市場のけん引役が米国の超大型株以外へと多様化する中で、改善したエグジット環境の発掘に注力しています。

バリュエーションの調整が生じた場合、長期的なプライベート投資家にとっての規律あるエントリーポイントが台頭する可能性があります。多くの運用機関は、プライベート市場のエクスポージャーを上場市場のテーマと整合させる建設的な機会と捉え、次世代のイノベーションと成長の波を捉えるうえで、プライベート資産が果たす補完的な役割を強調しています。

投資家への示唆

株式市場は新たな局面に移行しつつあると考えています。この移行は、成長性の改善、市場の集中化の緩和、そして地域、スタイル、資産クラスを横断するけん引役の多様化によって特徴づけられています。こうした環境は、投資家にとってバランスの取れたアプローチを採用する根拠となります。具体的には、分散効果が期待できる高クオリティ株式へのエクスポージャーを、プライベート市場戦略やグロース・ステージ戦略で補完し、構造的なイノベーションを取り込む手法です。

ラッセル・インベストメントでは、市場の集中緩和局面に対応し、新たな投資機会が台頭する分野をパブリック市場とプライベート市場の両方で発見することにおいて、アクティブ運用が引き続き中心的な役割を果たすと考えます。

AIが主導する変化の激しい環境を的確に捉えるためには、パブリック市場とプライベート市場の投資機会に関する知見を統合し、グロースのイノベーションとバリューの規律を両立できる運用機関を選別することが重要であると考えます。

債券見通し

ヴァン・ルー、リティ・サマンタ、キース・ブレイクビル

 

デュレーション、デットおよび乖離性

政策金利の低下と財政動向の変化により、グローバル債券市場は変化しています。パブリック市場とプライベート市場は、それぞれ異なる出発点から2026年を迎えますが、両市場にとって乖離性、選択性、再調整がキーワードとなる1年になる見通しです。

キーポイント

  • 米国債は引き続きフェアバリュー圏にあり、デュレーション調整やポートフォリオの安定の観点から寄与する見通し
  • 各国の金融政策に非対称性が生じることで、レラティブ・バリュー戦略の投資機会が台頭
  • パブリック市場のクレジット・スプレッドがタイトな状況は、アクティブ運用を通じた銘柄選定や証券化クレジットへのエクスポージャーに有利と考える
  • プライベート・クレジットおよびアセットベース・ファイナンスは、引き続き構造的な高利回りと分散効果の源泉となる見込み

移行期にある市場

政策金利の低下とクレジット・スプレッドのタイト化を背景に、債券市場は2025年後半に堅調なリターンを記録しました。インフレ圧力は緩和され、投資家の関心は先進国市場の財政見通しへとシフトしています。

現在、パブリック債券市場とプライベート債券市場は乖離しつつあります。パブリック市場では、FRBの利下げを受けて米国債が安定を取り戻しています。プライベート市場では、高金利環境が長期化し、長期投資家にとって魅力的な投資機会が引き続き存在しています。両市場は、パブリック市場がデュレーションと分散化の役割を担い、プライベート市場が構造的な高利回りを提供することで、相互補完的な関係を形成しています。

オールイン利回りは魅力的な水準が継続する見通しです。AAA格の投資適格債は米10年債に対して約50ベーシスポイントのスプレッドを維持し、信用力が比較的高いハイイールド債については6%超の利回りを示しています。ファンダメンタルズは引き続き堅調で、レバレッジは管理可能な水準、インタレスト・カバレッジも良好です。新規発行は安定しており、応募超過の状態が続いています。多くの運用機関は、スプレッドのタイト化を受けて米国債への資金配分を高止まりさせていますが、一部では短期的な下落によりリラティブ・バリューの投資機会が台頭しています。サブプライム層の借り手におけるストレス兆候は、限定的かつ局所的にとどまっています。

現地通貨建て新興国債券については、米ドル安が追い風となり、2024年を通じて縮小していた投資機会が再び拡大しました。米国経済指標の遅延など、政策やデータに関する不透明感は依然として残っているため、投資家が次の金融緩和に備える上で注目すべき要因となっています。

金融緩和と財政圧力

FRBが金融緩和に転換した際、最も恩恵を受けたのは短期債および中期債でしたが、その他の先進国市場では財政圧力を背景に新たな乖離性も生じました。10年物では、英国債と米国債の利回りに約50ベーシスポイントの差があり、インフレや成長シナリオの乖離が投資機会を生み出していることが示唆されています。

金融緩和と財政圧力が交錯する状況を踏まえ、今後は長期債の発行増加に伴い、イールドカーブは緩やかなスティープ化が続くと予想されます。米国では、米国債はフェアバリュー圏で推移しており、デュレーションに関して中立的な姿勢を取る材料となっています。英国では、財政要因によるボラティリティの上昇を受け、債券利回りが魅力的な水準にあり、予算の明確化に伴って回復の余地が生じています。債券市場全体では、投資家が金融緩和と財政リスクとのバランスを模索する展開が続いており、その緊張関係は2026年の市場を特徴付けるテーマになると見込まれます。

クレジット市場:スプレッドより構造を選好

パブリック市場のクレジット・スプレッドは非常にタイトな水準にあり、さらに縮小する余地は限定的です。楽観的な見通しが広がる投資適格社債のエクスポージャーを引き下げる一方で、証券化クレジット(特に非エージェンシーMBS)を選好しています。後者を選好する理由は、実物資産へのエクスポージャーと、金利感応度が低いことにあります。証券化商品の約3分の1を占めるローン担保証券(CLO)は、低デュレーションの変動金利構造を持ち、不透明な金利環境に適しています。

プライベート・クレジットは今後も有望な分野と考えています。利回りの優位性や構造的な安全性が魅力となり、有形資産を担保とするアセットベース・ファイナンスを中心に、資金流入が継続しています。AI主導の市場環境が次の段階に移行することで、パブリック市場とプライベート市場の双方で発行が拡大し、複雑な状況や構造に対応できる運用機関にとって新たな投資機会が生じています。

投資家への示唆

パブリック市場とプライベート市場はいずれも重要な役割を担うと考えています。パブリック市場では、金融緩和環境を背景に、デュレーションや流動性は適正圏にあると考えられ、プライベート市場では、利回りの優位性、分散効果、実物資産の活用といった強みがあると考えます。

拡張的な財政政策や債券発行の増加により、長期金利には緩やかな上昇圧力がかかる可能性があり、銘柄選択やアクティブ運用の重要性が一段と高まる見通しです。今後は、流動性、信用力、イールドカーブなどの要素のバランスを重視し、広域な債券市場全体を通して強靭性のあるポートフォリオを構築することが、利回りの追求よりも重要になると考えています。

実物資産の見通し

ベイチェン・リン、ティム・ライアン

 

インフラ、不動産およびAI関連

グローバル経済が回復期から再加速局面へと移行する中、パブリック市場・プライベート市場双方における実物資産は、分散投資の重要な要素として存在感を高めています。パブリック市場のインフラ投資および不動産関連資産投資には、流動性や上場市場での取引機会という利点があります。プライベート市場の実物資産には、持続的なキャッシュフロー、構造的に高い利回り、さらにAI関連投資やエネルギー転換投資への直接的なエクスポージャーといった特徴があります。電力、物流、防衛関連インフラに対する長期的な需要が拡大する中で、こうした分野への投資は2026年を通じてマルチ・アセット・ポートフォリオの下支えになると考えます。

キーポイント

  • パブリック市場の実物資産のバリュエーションは、株式と比較して魅力的ですが、国債との比較では優位性が低下している
  • AI、エネルギー転換、国家安全保障といった分野では、インフラ需要が根強く続く見込み
  • プライベート市場の実物資産は、高い利回りと資産の強靭性が特徴で、パブリック市場には流動性や取引所における取引機会の活用といった利点がある
  • パブリック市場とプライベート市場のいずれにおいても、銘柄選択や各運用機関の運用能力が、引き続きリターン獲得の主要因となる見込み

新しいマクロ経済局面におけるポートフォリオ分散

景気後退懸念が後退し、政策の不透明感も薄れる中、実物資産は再び分散投資の中核的役割を担う見通しです。上場インフラやREITは株式と比べて割安な水準にあり、パブリック市場への資金配分においてレラティブ・バリューの投資機会が生じています。プライベート戦略はボラティリティの平準化に寄与し、上場市場では十分に獲得できない長期的なキャッシュフローの成長機会による恩恵を享受する可能性があります。パブリック市場をタクティカルなポジション調整に活用しながら、プライベート市場は構造的なエクスポージャーの獲得に活用するという、バランスの取れたアプローチを選好します。

インフラ:電力、エネルギー転換および防衛

インフラ投資の魅力には、AIの進展、エネルギー転換、国家安全保障投資の拡大といった3つの主要テーマが絡んでいます。

第一に、生成AI利用の普及に伴いり電力消費が増加しており、容量の限界に近い電力網に負担がかかっています。この結果、発電、蓄電、送配電の各分野で複数年度にわたる投資が進展しており、上場している公益事業会社およびプライベートのエネルギー・インフラ企業を通じた投資機会が広がっています。第二に、エネルギー転換は、地域差こそあるものの、世界的に進展しています。欧州における再生可能エネルギーの推進や電力網の増強は、その一例です。第三に、国家安全保障関連では、防衛費の拡大により、軍用施設、物流、安全なエネルギー設備などへの資金シフトが加速しています。

エネルギー安全保障と防衛の領域では、プライベート資本の流入が増加しており、特に米国市場では展開規模やスピードが欧州の一部地域を上回り、プライベート資産運用機関の活動が活発化しています。

不動産およびプライベート市場:選別投資の重要性

不動産は金融緩和の恩恵を受ける一方、バリュエーションの魅力はサブセクターごとに差が生じています。データセンターは、AIが膨大なデータ処理能力(キャパシティ)を継続的に必要とすることから、確実性の高い分野といえます。また、高齢化は高齢者向け住宅や医療関連不動産に追い風となります。プライベート市場では、公益事業、通信塔、物流、特殊工業工場など、基礎的な不可欠性を備え、契約に基づく安定的なキャッシュフローを生む資産()が選好される傾向にあります。一方、景気循環の影響を受けやすい物件は回避される傾向にあります。

さらに、防衛およびエネルギー安全保障関連資産については、ガバナンスや規制の透明性を背景に欧州投資家の投資意欲が高まっており、機関投資家にとってニッチから主流な投資先となりつつあります。この動きは、運用機関の選定とテーマの一貫性が投資成果を左右することを示唆しています。

投資家への示唆

パブリック市場とプライベート市場における実物資産は、2026年のポートフォリオ運用において中核的な役割を果たすと考えられます。パブリック市場の実物資産は、流動性や価格の透明性に加え公平性、バリュエーションに規律がある点が特徴です。一方、プライベート市場の実物資産では、持続的なインカム、パブリック市場との低相関に加え、AIインフラ、エネルギー安全保障、防衛関連プロジェクトへの直接的なエクスポージャーが得られます。

投資家が留意すべき点は、上場資産とプライベート資産の配分バランスに注視すること、セクターに関する専門性を備えた運用機関を選別すること、そして契約に基づく安定的なキャッシュフローや不可欠性の高い資産を優先すること、です。特に米国市場では、防衛やエネルギー安全保障分野でプライベート資本の展開が加速しており、魅力的なエントリーポイントの機会が生じています。ただし、各地域における法令や実務の違いについては十分な考慮が必要です。

各資産クラスの見通し

本概要では、2025年12月3日時点における各資産クラスの見通しを紹介しています。

地域別見通し

us

米国

米国経済は、金融緩和、税制および規制緩和といった追い風が強まる中、政策による抑制効果が薄れることで、今後さらに力強さを増すと見込まれます。企業業績は好調であり、好業績企業の顔ぶれも広がりを見せています。経営陣による前向きなガイダンスが2026年のコンセンサス予想を押し上げており、ファンダメンタルズの改善が株式市場のリーダーシップ拡大を支えています。一方、FRBは堅調な経済成長と雇用の弱さを注視しています。2027年にかけて米国経済が再び加熱し、FRBは利下げを停止し、最終的には金利政策の転換が想定されると考えています。米国債はフェアバリュー圏で推移しており、企業のクレジット・スプレッドは非常にタイトな水準にあります。リスク要因として、労働市場の急激な悪化、バリュエーションの高止まり、銀行破綻の連鎖による信用収縮、AI投資の資金調達ニーズの急拡大とそれに伴う資金調達市場への圧力、などが挙げられます。

canada

カナダ

2025年9月と10月の2か月連続で雇用創出がコンセンサス予想を大きく上回り、景気循環リスクがピークを過ぎた可能性を示唆しています。ただし、失業率は依然として7%前後にあるため、今後12か月については、カナダは米国より景気後退リスクの影響を受けやすいと考えます。

株式市場は、相対的なバリュエーションが米国株式より良好であることが景気循環リスクを相殺しており、中立的な見方を維持しています。国債はフェアバリュー圏で推移しており、タクティカルな分散投資対象としての重要性は引き続きあると見ています。翌日物金利はカナダ銀行が推定する中立金利レンジの下限にあり、追加利下げの可能性は低いものの、マクロ経済の不透明感が長期化し、労働市場も脆弱であることから、2026年にかけて利下げの余地は残されていると考えます。

カナダドルは、短期的には軟調な経済の影響を受ける見通しですが、中期的には対米ドルで上昇する可能性があります。

eu

ユーロ圏

2026年には、ユーロ圏各国間の財政政策の乖離により、経済成長にばらつきが生じる可能性があります。ドイツでは防衛費およびインフラ投資の拡大が見込まれ、域内最大の経済であるドイツの成長を加速させる見通しです。この動きは、オーストリア、ベルギー、オランダなど主要貿易相手国にも好影響をもたらすと考えます。一方、フランス、イタリア、スペインでは財政緊縮が成長を抑制し、2026年のGDP成長率は1%をわずかに上回る水準にとどまる可能性があります。インフレ率はECBの目標値近辺で推移し、労働市場も安定しているため、ECBの政策は適切な位置にあると見ています。ドイツ国債は、フェアバリュー圏で推移しています。ユーロ圏の株式については、スタイル別では、バリューを選好します。

uk

英国

英国経済は引き続き停滞しており、過去数か月間の経済活動や労働市場は弱含みの状態が続いています。2026年の成長要因は、財政政策から金融政策へと移行する見通しです。年次予算案では増税が予定されており、2026年にはそれが経済成長に対して悪影響を及ぼす可能性があります。インフレ率上昇のリスクが後退したことから、イングランド銀行は政策金利を3%に引き下げ、経済の安定を図るとことが予想されます。英国債は、G7各国の国債の中で2026年において優先的にエクスポージャーを確保すべき資産であると考えます。英国株式は、英国経済成長率をアウトパフォームする見通しです。これは、指数構成銘柄のうち大型多国籍企業の比率が高く、回復基調にあるグローバル・ビジネス・サイクルへのエクスポージャーが得られるためです。

china

中国

中国経済は、2026年も軟調な成長が続く見通しです。不動産市場と消費支出の低迷が構造的な重石となっています。政策面では、「反内巻」政策(デフレ要因である一部の過当競争圧力を是正する試み)が注目されます。景気刺激策は目標を絞って実施される見通しですが、大規模な政策は期待できません。また、利下げの可能性も残されています。2025年の中国株式市場はテクノロジー株のけん引を背景に好調でした。バリュエーションは引き続き魅力的な水準にあり、自己資金利益率の改善が支えになる見通しです。

japan

日本

2026年の日本経済は、高市政権の財政政策と金融政策の相互作用が焦点となる見通しです。日本の経済成長率はトレンド並みを予想していますが、財政政策にポジティブなサプライズがあれば、経済成長率はトレンドを上回るリスクがあります。日銀は忍耐強く金融政策の正常化を進めていくと考えられ、2026年内には1回の利上げを実施する可能性があります。日本株式は、引き続きコーポレート・ガバナンスの改善に支えられています。為替については、円は過小評価されていると見られますが、円高のカタリストはグローバル経済の減速を除き限定的であると考えています。

nz



オーストラリアおよびニュージーランド

オーストラリア経済は、過去3か月で改善傾向を示し、オーストラリア準備銀行(RBA)による利下げを受けて消費が拡大しています。労働市場は軟調ですが、雇用意欲は引き続き堅調です。RBAは2026年前半に追加利下げを実施する公算が大きいと見ています。オーストラリア国債は、グローバル債券と比較して魅力的な水準にありますが、株式の上値余地は限定的と見ています。

ニュージーランド経済は、ニュージーランド準備銀行(RBNZ)による大幅な利下げサイクルを経て、景気の底打ちが予想されます。住宅市場は金利低下を受けて回復する可能性が高いと考えます。ニュージーランド・ドルは過小評価されていると考えますが、株式はグローバル株式と比較して依然として割高であると考えます。

グローバル・ マーケット・ アウトルック 2025年中間期

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Paul Eitelman, CFA

Paul Eitelman, CFA

Global Chief Investment Strategist

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