以下は、2025年9月23日にラッセル・インベストメント(米国)のHPに掲載された英文記事を翻訳したものです。原文はこちら。
要点
• オーバーレイとは、デリバティブを活用してポートフォリオのエクスポージャーの管理やリスクの調整を図り、資産を守るための手法です。
• オーバーレイへの需要が急増しています。これは、迅速なリスク管理の必要性、投資家のオーバーレイに対する理解や安心感の高まり、そして現在の投資環境下でより高いリターンが求められていることが背景にあります。
• 確定給付年金では、オーバーレイによりデュレーションの長期化やキャッシュの株式化が容易になります。また、大学基金では非流動性リスクのヘッジやインテリム・ベータ(待機資金の暫定的投資)の積み増しなども可能になります。
ラッセル・インベストメントは9月9日にオーバーレイに関するウェビナーを開催し、オーバーレイ・ソリューションへの需要拡大や戦略の進化、そして機関投資家による活用状況について検討しました。
このディスカッションには、オーバーレイ・サービス担当シニア・ディレクターであるブライアン・コージーと、カスタマイズド・ポートフォリオ・ソリューション担当シニア・ポートフォリオ・マネージャーであるクリスティーナ・ショックレーが出席し、それぞれの見解を語りました。また、マネージング・ディレクター兼機関投資家サービス担当グローバル責任者のシェリー・ハイアーがこのウェビナーの司会を務めました。
本記事では、今回のウェビナーの主なポイントをご紹介します。
オーバーレイの仕組み解説
まず、コージーがオーバーレイの仕組みを解説しました。オーバーレイはポートフォリオ・マンデートの一形態であり、主にデリバティブを用いてエクスポージャーの管理やリスクのヘッジを行うものです。オーバーレイは既存の投資プログラムを置き換えるのではなく、それらと並行して機能します。その一般的な例は「キャッシュの株式化」です。これは、先物を利用してキャッシュに対する市場エクスポージャーを獲得し、パフォーマンスの低下を防ぐ手法です。また、戦術的なポートフォリオの調整や、負債ヘッジのためのエクスポージャーの構築、目標資産配分を維持するためのシステマティックなリバランスなども活用例として挙げられます。
金融機関によっては、特定の目的でオーバーレイを活用する場合もあれば、リスクやエクスポージャーの管理を目的としてポートフォリオ全体に適用する場合もあります。基本的にオーバーレイは、目立たない形でポートフォリオの整合性を維持しながら、意図しないリスクを軽減する役割を果たしています。
過去にない関心の高まり
ラッセル・インベストメントは1980年代中盤からオーバーレイを導入していますが、コージーによれば、現在はこれまでに比べて大きく需要が盛り上がっており、そうした関心の高まりには主に3つの理由があります。
1. 柔軟性
機関投資家は、リスクヘッジやポートフォリオ調整を機動的に行えるような柔軟性を求めています。そのため、機関投資家に提供されるソリューションは、高い流動性や資本効率を持ち、低コストである必要がありますが、デリバティブはそれらの条件をすべて満たしています。
2. オーバーレイへの理解と安心感の向上
近年、投資家は市場のボラティリティが高まる局面を繰り返し経験しており、その結果、リスクを抑えたりリターンを高める手段としてデリバティブを活用することに抵抗がなくなり、より積極的に利用するようになっています。
3. リターン向上のニーズ
より高いリターン(超過収益)を得るために、従来とは異なる手法を探す機関投資家が増えています。投資家によるヘッジファンド、プライベート市場あるいはクオンツ投資戦略の利用が拡大する中で、オーバーレイはポートフォリオのベータを管理する有効な手段となり、また、流動性の高い形で特定のエクスポージャーを取ることを可能にします。
さまざまなメリット
ショックレーは、オーバーレイの主な3つのメリットを挙げました。
• リスク低減
オーバーレイは、特定の目的に絞った顧客指示による取引から、ポートフォリオ全体を対象としたルールベースの戦略まで、幅広く対応しています。どちらの場合も、オーバーレイの利用目的は、ポートフォリオの実際のエクスポージャーを目標と一致させること、および期待リターンに寄与しない意図しないリスクを排除することにあります。
• リターン向上
キャッシュは意図しないエクスポージャーの代表例です。デリバティブを利用すれば、大きな金額を動かさずに市場エクスポージャーを獲得することができます。オーバーレイは低コストで、必要資金も少ないため、高いコスト効率でリターンの向上を図ることができます。
• 人員の補強
ラッセル・インベストメントのオーバーレイ・チームはお客様のポートフォリオを日次でモニタリングし、必要に応じて調整を行っています。そうした継続的な関与のため、お客様が同チームを利用することはお客様の人員増強と同じ効果を持つことになり、お客様は社内リソースを他業務に回すことが可能になります。
キャッシュ・マネジメント
「キャッシュの利回りが4%~4.5%である現況下でもオーバーレイは有意義なのか」とハイアーが質問すると、コージーは、一部の顧客が絶対的なリスクを低減しつつ、より高い短期利回りを得るために、未投資のキャッシュを多く保有していると述べました。ただし、長期的に見れば、市場のリスクプレミアム(キャッシュの利回りを上回るリターン)の方がやはり高いのです。例えば、キャッシュの利回りが最高水準となった2023年以降、グローバル株式は約40%、債券は約13%上昇しています。つまり、未投資のキャッシュを保有するのは不利だということです。このように、ポートフォリオに高水準のキャッシュが滞留していることを「キャッシュ・ドラッグ」などと呼びますが、これはポートフォリオのリターン目標達成を難しくする要因になります。
また、「オーバーレイが有意義となる可能性はあるのか」という問いに対して、コージーは次のように述べています。ラッセル・インベストメントが提供する単純なキャッシュ・オーバーレイ・マンデートは、過去45年間にわたり、標準的なクライアント・ポートフォリオのリターンを年率でおおよそ0.16%押し上げています。また、株式のみのオーバーレイではそれが年率0.25%になりました。キャッシュの利回りが高い時期でも、オーバーレイは10年のうち約7年についてキャッシュをアウトパフォームしています。
幅広い用途
ショックレーは、お客様の属性別にオーバーレイの利用例を紹介しました。
• 確定給付型企業年金のお客様は、デュレーションの延長および余剰リスクの管理を目的として債務主導型投資(LDI)オーバーレイを利用しています。また、給付金支払いのために保有している手元資金についてはキャッシュの株式化を行う場合もあります。
• 公的年金のお客様は、流動性とリバランスを目的としてオーバーレイを利用しています。
• 大学基金や財団のお客様は、プライベート市場のエクスポージャーを管理する目的でオーバーレイを利用しています。新たにプライベート市場へ投資する投資家は、オーバーレイを活用することで、キャピタルコールまでの期間、未投資のキャッシュで市場プレミアムを得ることが可能です。プライベート市場をオーバーウェイトしている投資家は、オーバーレイを利用することにより、パブリック市場に対するエクスポージャーを回復し、あるいはパッシブなアロケーションをデリバティブに転換することが可能となり、流動性に余裕が生じます。
実際の活用事例
コージーは、オーバーレイがお客様の具体的な課題解決に貢献した事例として、以下を紹介しました。
• セクター先物、NASDAQ先物あるいはカスタム・スワップを利用して、米国テクノロジー株式に対するアンダーウェイトを解消した事例。
• 先物により金に対するエクスポージャーを瞬間的に追加し、その後ETFに移行して長期的保有コストを引き下げた事例。
• オプションのストラクチャーを用いてダウンサイドリスクの「テールヘッジ」(極端な暴落に対するヘッジ)を設計し、あるいはキャリーコストが低くコンベクシティが高い常時稼動型のテールヘッジを実施している例。
お客様と伴走する
コージーによれば、ラッセル・インベストメントのオーバーレイ・チームが提供できる価値の中で最も重要なのは、お客様にとって信頼できるアドバイザーであることだといいます。同チームは、エクスポージャーや入出金フローのモニタリングを日次で行うことを通じて、お客様に伴走するようにポートフォリオ運用を支援します。同チームは、コストとリスクとトラッキングエラーを見ながら、運用会社の変更、資産配分の変更、新規資産クラスの導入などについて先行的に助言を行います。
ポートフォリオの柔軟性
現在のような変化の激しい投資環境において、機関投資家は柔軟性を何よりも必要としています。オーバーレイはまさにその柔軟性を提供するもので、機関投資家のポートフォリオにとってはアーミーナイフのようなマルチツールであるとコージーは述べました。