主なポイント:
米国および世界経済は、引き続き堅調さを維持
直近の地政学的動向が、現時点で市場にシステマティックなリスクをもたらす可能性は低い
現環境下では、短期的なポジション調整ではなく、規律のある分散が有効と考える
以下は、2026年1月15日にラッセル・インベストメント(米国)のHPに掲載された英文記事を翻訳したものです。原文はこちら。
2026年は、投資家にとって情報量の多い幕開けとなりました。
地政学面では、米国によるベネズエラへの侵攻、グリーンランドや他国に向けた強硬な発言、イラン国内における抗議活動などが見られました。米国内の政策に目を向けると、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長に対する召喚状、新たな関税措置、不動産、消費者金融、防衛分野を対象とした規制案などが相次いでいます。多くの出来事が、一斉に起きているように感じられます。
しかし、投資家にとって重要なことは、世界が不安定に見えるかではなく、不安定さが市場を揺るがす程度の影響力を有しているのか、という点です。
このような環境下では、二つの視点が必要であると考えます。第一に、市場や経済が出来事を吸収するだけの耐性をどの程度備えているかという「基盤」への評価。第二に、その出来事の本質的な影響力への評価、という点です。
なぜ市場は崩れていないのか
米国および世界経済は、ここ数年にわたり非常に強い耐性を示してきました。2022年以降、急速なFRBの利上げ、ウクライナにおける大規模な抗争、大恐慌以来の大規模な関税引き上げ、そして1950年代以降最も厳しい移民環境といった出来事を経験しながらも、世界経済は広域にわたる景気後退に陥っていません。
こうした状況にもかかわらず、民間部門のバランスシートは健全で、生産性の伸びも改善しています。企業収益は良好で、その裾野も広がりつつあります。
マクロ指標は堅調さを示していますが、すべてが理想的というわけではなく、これまでと同様の課題も残されています。雇用の勢いは落ち着き、住宅の購入については引き続き経済活動の制約要因となっています。また、個人消費は「K字型」の構図を示しており、高所得者層とそれ以外の間で格差が生じています。
それでも、現在の状況は「亀裂」ではなく「摩擦」であると考えます。2025年を振り返ると、米国経済は脆弱な状態ではなく、耐性を備えた状態で終えており、2026年は加速局面に入る可能性があると見ています。
歴史を振り返ると、市場は派手なニュースによってではなく、ファンダメンタルズが知らぬ間に弱っていくことで崩れてきました。
重要なことと、重要でないこと
ノイズとシグナルを見極めることは重要であると考えます。ラッセル・インベストメントでは、現環境下において三つの要素を活用しています。過去の複数の危機局面を乗り越えた経験、市場心理をリアルタイムで捉える指標(価格がファンダメンタルズから乖離した局面における判断補助)、そして世界有数の運用機関の知見を取り入れるオープン・アーキテクチャー・プラットフォームと社内分析の融合、です。
市場心理が過度に悲観的でも楽観的でもない現状では、センチメントではなく、ファンダメンタルズに注目しながら段階的なポジション判断を実施することが重要であると考えます。ここ数週間に起きた出来事は、現時点で市場にシステミックなリスクをもたらす水準には達していないと見ています。
すべての地政学的ショックが同じ重みを持つわけではありません。過去を振り返ると、新興国での出来事が資産価格に大きな影響を与えたのは、グローバル規模でのサプライチェーンや商品市場の実質的な混乱といった場合に限られています。
例えば、ベネズエラは西側の地域との結びつきが限定的で、世界の原油生産に占める割合も約1%にすぎません。イランの原油供給に占める影響力も、長期的には低下傾向にあります。同地域での主なリスクは、生産量そのものよりも、地理的要因、特に世界の原油供給のおよそ25%が通過するホルムズ海峡にあります。このリスクは注視に値しますが、成長と耐性のバランスを考慮したポートフォリオ構築の中で、評価する必要があると考えています。
また、リサ・クック理事やパウエル議長を巡る米政権の動向は前例のないものであり、FRBの独立性に対する懸念が生じるのも無理はありません。ただし、現時点では、これらの動向がFRBの体制に影響を与えるかどうかは不明瞭です。財務長官や複数の共和党上院議員が司法省の調査に不満を示しているとの報道は、一定の安心材料と言えるでしょう。
加えて、金融政策がどのように決定されるかを改めて思い起こす必要があります。金利は連邦公開市場委員会(FOMC)における多数決で決定されます。たとえ5月にFRB議長が交代したとしても、当社が想定するように2026年に景気が強含めば、追加利下げに慎重な委員が多く残る可能性があります。
市場は往々にして、特定の政策担当者の影響力を過大評価し、データ、投票ルール、そして経済そのものが持つ規律を過小評価する傾向があります。
投資環境への見方
当社の見通しは、ここ数週間で大きく変わっていません。世界経済および企業収益の先行きについては、引き続き前向きな見方を維持しており、それに沿った投資を行っています。
一方で、ショックが頻発する環境は、分散投資の重要性を改めて浮き彫りにします。成長へのエクスポージャーを確保しつつ、下振れリスクに対する耐性を備えたポートフォリオを維持することが重要であり、個々のニュースに反応すること以上に、ポートフォリオのバランスが問われています。
足元のニュースの多くは、シグナルというよりノイズの側面が強いと見ています。投資家にとってのリスクは、ニュースの変動を経済基盤の崩れと誤認することです。重要なのは、成長と耐性を意識した戦略的なポートフォリオ運営を継続することであると考えます。