OCIOのアップマーケット拡大は、より大規模で複雑な機関投資家が、カスタマイズ性とガバナンス重視のパートナーシップを求めていることにより促進されています。米国のOCIO資産は現在3兆ドルを超え、標準化されたアウトソーシングから戦略的統合への移行が進んでいることを示しています。機関投資家は、インフレ不確実性、地政学的複雑性、人的リソースの制約に直面しており、規模、透明性、機関投資家水準の実行能力に対する期待が高まっています。
Stacey Bro
Co-Head of OCIO
Kevin Turner
Co-Head of OCIO
要点
- より大規模で複雑な機関投資家が、OCIOパートナーシップにおけるカスタマイズ、ガバナンス、透明性に対して新たな期待水準を設定しています。
- 実行力(インプリメンテーション)および統合的なリスク管理は、現在では中核的な差別化要因となっています。
- シニア人材による専門的知見が、機関投資家からの信頼を獲得するうえで決定的な要素として浮上しています。
OCIO(アウトソース型最高投資責任者)サービスの導入が進み、より大規模なアップマーケットへと拡大する中で、業界はこれまでにない新たな期待に直面しています。その期待は、より大規模かつ複雑なアセットオーナーによって定義されています。
多くの組織にとって、もはや問題は「外部委託を行うべきかどうか」ではありません。むしろ、限られたリソース、技術革新の加速、そして地政学的な複雑性に特徴づけられる環境において、自らの投資プログラムをどのように構築し、適切に運営していくかを、アウトソース型ソリューションによってどのように確実に実現するかが問われています。AI主導の生産性変化、インフレの不確実性、そして 同期性が低下した世界経済秩序 といった構造的要因が、あらゆるポートフォリオ決定の重要性を一段と高めています。
同時に、組織は本業を守り、リソースを再配分し、受託者責任を維持するための運営面および管理面の圧力にも直面しています。これらの力学が相まって、カスタマイズ性、柔軟性、そして規模対応力を備えたパートナーを求める機関投資家の間で、OCIOのアップマーケット成長が加速しています。
OCIOの運用資産残高は過去10年間で3倍以上に拡大し、米国では3兆ドルを超えました。1 これは、標準化されたアウトソーシングから、より高度にカスタマイズされた内部スタッフの延長としての役割への明確な転換を示しています。そこでは、投資スキル、インプリメンテーション、さらにガバナンスに対する期待が一段と深まっています。
本稿「2026年OCIOアウトルック」では、アップマーケット化の進展がもたらす5つの主要な示唆を取り上げ、より大規模な投資家がどのように期待水準を再定義し、OCIO市場を再形成しているのかを考察します。
1. 高まるカスタマイズ需要
OCIOのアップマーケット拡大がもたらす主要な影響の一つは、カスタマイズの高度化です。アウトソースを選択する機関投資家がより大規模かつ複雑になるにつれ、各組織の固有の目標や流動性ニーズを反映した投資ソリューションが求められています。従来型のOCIOソリューションやサービスモデルでは、多様な組織特性、複雑なレガシー投資ポートフォリオ、あるいは多層的な流動性要件といった繊細なニーズに十分に対応できなくなっています。
アップマーケットのアセットオーナーが方向性を示しています。彼らが求めているのは、画一的なモデルではなく、自らのガバナンス体制の運営サイクルやリスク許容度に適応する枠組みです。大企業、非営利団体、保険会社、その他のアセットオーナーは、投資方針と実行の完全な統合を志向しています。
足元において特に異なるのは、このカスタマイズがどこまで拡張しているかという点です。それは単なる資産配分の問題ではなく、企業全体の統合に及んでいます。医療システムにおいては、投資プールと運転資本ニーズとのより緊密な整合を意味する場合があります。企業年金スポンサーにとっては、グライドパス(資産配分の段階的移行設計)やヘッジ戦略の個別最適化が含まれる場合があります。大学基金においては、プライベート市場への投資のペーシングを安定的な支出計画と結び付けることが重要となります。
現在では、カスタマイズはポートフォリオ構築のあらゆる要素に及んでいます。成熟した、あるいは想定外に流動性が低下したポートフォリオを管理する大規模機関投資家は、OCIOパートナーに対し、エクスポージャーの再調整や運営上の複雑性の精緻な管理をますます強く求めています。
より大規模な機関投資家がOCIOプロバイダーに対してビスポーク(オーダーメイド)設計を求めることで、その恩恵はミッドマーケットの顧客にも波及しています。かつては大規模資産に限定されていた高度に個別化されたアプローチへのアクセスが広がっています。アップマーケットの勢いは、現代のOCIOパートナーシップにおける基盤として、カスタマイズの重要性を再定義しています。
要点
アップマーケットのアセットオーナーが方向性を示しています。彼らが求めているのは、画一的なモデルではなく、自らのガバナンス体制の運営サイクルやリスク許容度に適応する枠組みです。
2. 高度化するガバナンスと透明性基準
OCIOのアップストリームへの拡大がもたらすもう一つの結果は、ガバナンスおよび透明性に関する期待水準の高まりです。より大規模なアセットオーナーは、高度に洗練された調達プロセスおよび受託者監督体制を備えており、情報開示、独立性、説明責任に関して新たな基準を設定しています。
オープンアーキテクチャー(外部も含めて運用者を選定できる体制)は、もはや単なる「あると良い設計上のオプション」ではなく、ガバナンス上の優先事項と見なされています。機関投資家は、ポートフォリオ構築や運用会社選定に関する意思決定の全体像を把握できること、ならびにソリューション全体の経済性を理解できることを求めています。機関投資家にとって、プロプライエタリー商品(自社商品)はもはや当然の選択肢ではありません。それらを採用するためには、顧客成果にとって明確に有益であることを実証する必要があります。
運用会社選定における独立性は、重要な差別化要因となっています。ポートフォリオが公開市場およびプライベート市場へと拡大する中で、機関投資家は、リサーチ、助言、商品組成の間に明確な分離があることを求めています。OCIOは、運用会社および商品の選定が実力に基づき、かつ受託者責任に沿ったものであることを示さなければなりません。
この変化は、機関投資家がコストをどのように評価するかにも影響を与えています。焦点は、OCIOプロバイダーの手数料という狭義の観点から、総保有コストへと移っています。これには、基礎となる運用報酬やプラットフォーム費用に対する交渉力も含まれます。顧客はまた、理解しやすい料金体系を期待しており、明確な価値を示さないコストについては厳しく精査しています。
多くのアップマーケット投資家は、関係のあらゆる段階において透明性、明確性、説明責任をもって運営するOCIOパートナーを求めています。これは、明確な文書化、アクセスしやすい報告体制、さらに投資意思決定のプロセスに関する開かれたコミュニケーションを意味します。
このような環境において、ガバナンスは監督の問題であると同時に、パートナーシップの問題でもあります。独立性、開放性、そして受託者規律を示すプロバイダーこそが、能力と同様に信頼性が重視される市場において、機関投資家からの信頼を獲得する最適な立場にあります。
要点
機関投資家は、ポートフォリオ構築や運用会社選定に関する意思決定の全体像を把握できること、ならびにソリューション全体の経済性を理解できることを求めています。
3. 強固なインプリメンテーション能力への注目の高まり
OCIOがより大規模な機関投資家へと拡大するにつれ、投資家は インプリメンテーションへの関心を高めています。プライベート市場への配分拡大、デリバティブのオーバーレイ戦略、複数プール構造の採用などによりポートフォリオが複雑化する中で、執行の質はパフォーマンスおよびリスク管理を直接左右する要因となっています。
当社の調査によれば、現在機関投資家は、売買、トランジション、流動性管理をシームレスに遂行できる、統合型かつ社内完結型の実行能力を備えたOCIOを選好しています。「アウトソーシングの再アウトソース」は、規模志向の投資家のニーズをもはや満たしていません。高度なオペレーションインフラは、リアルタイムのリバランス、リスクを抑制した資産移管、そしてプライベート市場へのコミットメントの効率的な資金手当てを可能にします。
キャピタルコールおよび分配の頻度が高まる中で、キャッシュフロー管理の精度も不可欠となっています。OCIOは、投資ペースをモデル化し、資金フローを調整し、流動性階層を管理することで、戦略的整合性を維持しなければなりません。VEBA(従業員給付信託)やキャプティブ保険会社のような課税主体にとっては、税務効率 も執行の質を構成する要素です。これには、益出しの繰延べ、損失の活用、および複数口座間での最適化が含まれます。
トランジション(資産運用の移行)計画 は、現在では標準的な期待事項となっています。トランジションは、運営上のリスクが高まる局面として頻発しており、プロジェクト計画、詳細なコストおよびリスク分析、事前的なコントロール、さらに規律あるベンチマーキングが求められます。オーバーレイ運用(既存のポートフォリオを売却せずデリバティブ等を使ってリスク特性を調整する上乗せ管理)も拡大しており、公的年金における下方リスク戦略から、企業年金におけるLDI(負債連動型運用)オーバーレイまで広がっています。
アップマーケットへの拡大は、コミュニケーションおよび調整能力に対する期待も高めています。インプリメンテーションチームは、財務責任者と取締役会メンバーの双方に通じる言語で説明し、売買や流動性に関する意思決定を戦略的成果へと転換することが求められています。この変化は、より本質的な事実を反映しています。すなわち、執行はもはや戦略と切り離されたものではなく、戦略を実現する手段そのものなのです。
最終的に、テクノロジー、規模、そしてガバナンスに裏打ちされた執行能力は、機関投資家向けOCIOパートナーシップを特徴付ける最も顕著な要素の一つとなりつつあります。
要点
当社の調査によれば、現在機関投資家は、売買、トランジション、流動性管理をシームレスに遂行できる、統合型かつ社内完結型の実行能力を備えたOCIOを選好しています。
4. 包括的リスク管理に対する期待の高まり
OCIOが上位機関投資家市場へと拡大することは、リスク管理にも大きな影響をもたらしています。より大規模で複雑な顧客は、強固な監督体制の在り方を再定義しています。特に、企業全体の可視性、プライベート市場との統合、さらに 現実世界の不確実性を反映した先制的なストレステストを求めています。
過去の相関パターン に基づいて構築された従来型のリスクモデルは、体制変化や多極化が進む世界では十分ではなくなっています。インフレのボラティリティ、地政学的分断、サプライチェーンの再編は、将来志向型のリスク評価を不可欠なものとしています。
現在、取締役会は、流動性階層、シナリオ別エクスポージャー、ならびに公開資産およびプライベート資産の双方にまたがる潜在的ストレス要因をモニタリングする包括的な枠組みを期待しています。機関投資家は、事後分析ではなく、発生前に兆候を捉える早期警戒システム を求めています。
プライベート市場は、バリュエーションサイクルの長期化、キャッシュフローの変動性、運用会社集中といった追加的な複雑性をもたらします。これらに対応するためには、流動性ミスマッチを回避し、支出や負債カバーを確実に維持するための新たなペーシング、モニタリング、ガバナンス手法が必要です。
リスクの枠組みも、セグメントごとに最適化されています。医療システムは、運転資金の流動性確保と投資成長という二重の目的を管理します。大学基金や財団は、プライベート資産のペーシングやドローダウン耐性に関する洞察を必要とします。一方、多くの企業年金は、リスク削減やバイアウトに近づく過程で、金利エクスポージャーおよびトランジションリスクに重点を置いています。
OCIOがアップマーケットへと拡大するにつれ、機関投資家は四半期ごとの見直しではなく、継続的なリスク管理を求めています。彼らは、問題を早期に察知し、その要因を説明し、小さな問題が大きな問題へと発展する前にポートフォリオを調整できるパートナーを求めています。この変化は、リスク管理が単なる報告業務ではなく、日々のポートフォリオ運営の積極的な一部でなければならないことを意味しています。
要点
アセットオーナーは特に、企業全体の可視性、プライベート市場との統合、さらに 現実世界の不確実性を反映した先制的なストレステストを求めています。
5. 人材の厚み、上位性、専門性が一層重視される
最後に、OCIOの拡大は、人材、リーダーシップ、そして顧客対応の在り方にも大きな影響を及ぼしています。関係がより大規模かつ複雑になるにつれ、機関投資家は、深い専門性と投資委員会レベルの信頼性を備えたシニアプロフェッショナルとの対話を期待しています。
これらの関係性は現在、あらゆる顧客セグメントにおいて高度な専門性を求めています。例えば、確定給付型年金は、負債連動型運用(LDI)および資産負債管理(ALM)に関する深い理解を必要とします。一方、保険会社は、バランスシートおよび規制に関する洞察を求めています。医療システムは、エンタープライズ・リスク管理および流動性管理の専門知識に依拠しています。最後に付け加えると、大規模な非営利団体は、支出方針や非流動性資産配分に関する高度な理解を期待しています。
アップマーケットにおけるOCIOパートナーシップは、通常、複数のステークホルダーを伴います。社内スタッフや財務責任者、リスク管理責任者、人事・法務部門に加え、取締役会や受託者委員会も関与します。こうした力学を円滑に運営するためには、経験、調整力、さらに機関ガバナンスに対する深い理解が求められます。
ハイブリッド型や共同委託モデルは、これらの要求をさらに高めています。多くの機関投資家は戦略的統制を維持しつつ、執行、監督、リスク管理を委任する場合があります。この構造では、OCIOチームが社内ステークホルダーの延長として機能し、既存のガバナンス枠組みの中でシームレスに運営できる能力が求められます。
AIや自動化が業務効率を変革する一方で、シニアレベルの判断力が代替不可能であることは変わりません。テクノロジーは分析を加速させますが、信頼感を生み、重要な意思決定を導くのは人間の対話です。投資家がますます重視しているのは、単なる即応性ではなく、視座です。すなわち、市場動向を組織全体の目標と結び付け、それを明確に伝える能力です。
OCIOがさらにアップマーケットへ拡大する中で、機関投資家は、深い技術的知識と信頼構築能力を兼ね備えたプロバイダーを優先しています。最終的に、OCIOプロバイダーを際立たせるのは、プラットフォームだけでなく、チームの経験と判断力です。
要点
機関投資家は、深い専門性と投資委員会レベルの信頼性を備えたシニアプロフェッショナルとの対話を期待しています。
結論
OCIOがより大規模な機関投資家へと拡大することにより、業界の基盤そのものが再形成されています。顧客がより高度な複雑性と高い期待を示す中で、モデルは、より深いカスタマイズ、より強固なガバナンス、統合された執行能力、広範なリスク管理、シニアレベルの専門性へと移行しています。
結論は明確です。より複雑な世界においては、OCIOパートナーシップの強さが成果の質にますます大きな影響を与えます。私たちは、深度、透明性、規模対応力を備えたプロバイダーと協働する組織こそが、持続的な成功を実現する上で最も有利な立場にあると考えています。
1 出所:2025年 The Cerulli Report
よくある質問
カスタマイズは、もはや資産配分にとどまらず、組織全体の整合性にまで拡大しています。機関投資家は、流動性階層、支出ニーズ、プライベート市場のペーシング、ガバナンスの枠組みに合わせて設計されたポートフォリオを期待しています。汎用的なモデルでは、もはや十分とは言えません。現代のOCIOパートナーシップは、各組織の使命と長期的義務に基づいて、方針、実行、報告を統合しています。
アップマーケットの機関投資家は、オープンアーキテクチャー、独立した運用会社選定、完全な手数料の透明性を求めています。焦点は表面的な手数料水準から、基礎マネジャー費用を含む総保有コストへと移っています。今日のガバナンスは、文書化された意思決定プロセス、受託者規律、明確なコミュニケーションを必要とし、機関の監督基準との整合性を確保します。
執行は、パフォーマンスを左右する要因となっています。大規模ポートフォリオでは、精緻な流動性管理、プライベート市場のペーシング、トランジション監督、オーバーレイ調整が必要です。調査によれば、機関投資家は売買、リスク管理、戦略を統合する実行能力を備えたOCIOプロバイダーを選好しており、こうして市場変動および運営上の複雑性の中でもポートフォリオの整合性を確保しています。
機関投資家は現在、公開資産およびプライベート資産全体にわたる継続的かつエンタープライズ水準のリスク管理を期待しています。将来志向のストレステスト、流動性モニタリング、セグメント別の専門性が不可欠です。取締役会レベルの信頼性を備えたシニア専門家は、判断力とガバナンス理解を提供し、機関が複雑性を乗り越えながら受託者責任を維持することを支援します。