2019年度1–3月期株式運用機関レポート
※以下は、2019年4月22日にラッセル・インベストメント(米国)のHPに掲載された英文記事を翻訳したものです。原文はこちら。
ラッセル・インベストメントの運用機関調査チームによると、2019年1–3月期の株式運用機関の成績はまちまちであった。米国大型株式、カナダおよび日本株式の運用機関にとって、今期の市場環境は厳しいものだった。一方、オーストラリア株式、新興国株式および米国小型株式の運用機関の成績は比較的良好で、欧州および英国の運用機関の多くがMSCI ヨーロッパ指数ならびにFTSEオールシェア指数をそれぞれ上回った。大半の地域において、弊社の運用機関調査ではバリュー株式よりもグロース株式がアウトパフォームする結果となったが、どちらの運用スタイルの運用機関も2018年10–12月期の調整局面では投資を行っていた。
ラッセル・インベストメントは運用機関との関係を活かし、運用の専門家による洞察を得た。市場のボラティリティが高まっている時こそ、こうした洞察から学ぶのに最適なチャンスであろう。以上を踏まえ、地理的および株式の重要な地域の2019年1–3月期の主な戦術的見解をまとめた。
オーストラリア株式
中国を信頼
- 運用機関は中国が予想通り成長することを確信しており、それが資源株を十分下支えするだろう。
オーストラリアの消費関連株には慎重
- 運用機関はオーストラリアの消費関連株(銀行を含む)についてはアンダーウェイトを据え置いている。海外で高収益株を引き続き選好。
景気後退の準備
- 期待外れ、または予測を下回る結果が多かった決算シーズンの後、運用機関各社は次の景気後退時に株式がどのような動きをとるのか検討している。有利子負債が少額もしくはゼロであり、業界で確固たる地位を築き、コストアウトまたは戦略的改善を通して自立することのできる会社を選好している。また、過去にディフェンシブだったセクターが、今後そうならない可能性があることにも留意している。
カナダ株式
非パイプライン関連エネルギー株に上昇余地
- 2019年1–3月期の原油価格の高騰を受け、石油関連株が大幅に上昇することは想定内であった。しかし、その上昇はサービス提供および生産関連銘柄よりもパイプライン関連銘柄に集中していた。こうした比較的ディフェンシブな銘柄は金利の低下による恩恵も享受した公算が高い。結果として、非パイプライン関連エネルギー株、特にパイプラインに対抗する株にとっては有意義な上昇余地があると思われる。
大麻関連株は行ったり来たり
- 2018年10–12月期の低ボラティリティ環境下で非常に弱含みに推移した後、大麻関連株は2019年1–3月期に再び堅調に推移した。大半の運用機関は依然バリュエーション、経営者の質および競争環境の面で懸念を持ちつつも、一部の運用機関ではリスク・マネージメントの観点から大麻関連株のポートフォリオへの追加を検討し始めている。
新興国株式
バリュエーションにより警戒感高まる
- 1–3月期における地合いの強さと市場回復の後、グロース株式運用機関は価格上昇後バリュエーションが素早く修正された株式に対する警戒を強めた。
国内のツールキットを誇示する中国
- 貿易摩擦への緊張の高まりと景気減速懸念を受け、中国政府は消費税引き下げ、ソーシャルレンディングの強化と実体経済に役立つ貸付緩和などの景気刺激策を盛り込んだプログラムを実施した。
低成長グループに逆戻り
- 運用機関各社は早期のサイクルから中期のサイクルや成長志向の銘柄へとローテーションさせている。米連邦準備理事会(FRB)の緩和的な金利環境が続く中、新興国市場のファンダメンタルズに対しより前向きな見通しとなっている。昨今の政治不安が収束しつつあることで、質を重視するアイデアは好まれていない。
欧州および英国株式
ブレグジットのためのポジション
- 英国の運用機関はおしなべて英国が穏健な方法で欧州連合(EU)を離脱するであろうという立場を取っている。横断的なパフォーマンスの差は、ポンドに対するポートフォリオの感応度によってもたらされている。大半の運用機関は英国株をオーバーウェイトとしている。
M&Aにポジティブな見通し
- 低利の借り入れを伴ったプライベート・エクイティ・ファンドによる過剰な資金調達と企業のキャッシュフロー改善が企業によるM&Aの可能性を支えている。これは、キャッシュ保有率が高い欧州の医薬品セクターにおいてこの傾向が顕著である。
欧州の金融株
- 一部のバリュー株式運用機関は、2018 年にリターンがマイナスとなった金融銘柄についてより積極的になっている。運用機関各社は、欧州系銀行の強固なバランスシート、高い資本水準および収益率の向上をより大きな回復力の指標としている。
グローバルおよびインターナショナル株式
バリューとグロースの運用機関はいずれも2018年10–12月期の調整局面に買い
- ボラティリティは、低価格でキャッシュフローのある企業へと乗り換えたレラティブ・バリューの運用機関などアクティブ運用機関に有利に働いた。しかし、反発の速さは多くを驚かせ、2018年10–12月期に戦術的な買い付けを始めた運用機関は2019年1–3月期にバリュエーションの高い保有株を減らしていた。
大半は緩やかな成長と懸念の後退が続くと予想
- 米中貿易摩擦をあおるレトリックは今や行き過ぎた感がある。今後は米中の経済的な相互依存が二国間の緊張を抑制するだろう。一方、中央銀行のハト派政策はグローバルな成長に前向きな力となっている。バリュー株式運用機関はより高いボラティリティを期待しているが、グロース株式運用機関は依然として追い風を期待している。
テクノロジー関連株は依然人気、ただし中国系を除く
- 政府による介入強化からくるビジネス・リスクを受け、多くのファンダメンタルズ分析を行う運用機関は中国のテクノロジー関連企業を投資対象から外している。
日本株式
リスク選好度の向上
- グローバル経済に対して保守的な立場を維持している運用機関が多いにも関わらず、リスク選好度が若干上昇した。
- グロース株式運用機関は安定成長銘柄を積み増した。これらの株は前の四半期に割高感から急落していた。
- バリュー株式運用機関はシクリカル株の底値買いへ興味を示しているが、一部の運用機関は日銀の金融緩和策が長期化する見通しを受け、銀行株のポジションを縮小した。
景気サイクルの遅れ vs 政策からの下支え
- 運用機関の多くは、景気見通しがまちまちであることを受け、シクリカル株とディフェンシブ株のバランスを取ろうと試みた。多くの運用機関は景気減退を懸念する一方、米FRBの政策変更や中国の景気刺激策の影響から若干の前向きな効果も期待している。
米国大型株式
グロース株式運用機関は依然楽観的
- グロースにけん引された2019年1–3月期の株価反発にも関わらず、グロース株式運用機関は高い収益成長のテクノロジー関連株のビジネス・ファンダメンタルズについて変わらぬ信頼を表明している。
投資家は計算されたリスク姿勢に報われた
- 2018年10–12月期の暴落から一転、株式市場は急激な回復を遂げた。これにより、売り先行の状況下でシクリカルやグロースのエクスポージャーを増やしていた運用機関は報われた結果となった。
クオンツ運用機関には厳しい状況が続く
- 前四半期の結果が響き、クオンツ運用機関は不安定な環境下でまたも遅行した。定量的な投資を行う運用機関の大半は株価トレンドに幾分重点を置いているため、相場の反転では厳しい状況になる。
米国小型株式
伝統的なグロース・セクターに関するグロース株式運用機関の見方はまちまち
- グロース株式運用機関は引き続き テクノロジーをオーバーウェイトとしているが、今四半期のローテーションは各社まちまちだった。モメンタムの運用機関はポジションを引き上げた一方、バリュエーションに敏感なグロース株式運用機関は テクノロジー関連株の上昇を受けてエクスポージャーを減らした。グロース株式運用機関はヘルスケアのエクスポージャーも引き下げた。
バリュー運用機関は強みの最安株を減らす
- ディープ・バリュー戦略は、ダイナミック・バリュー株がアウトパフォームしたためバリュー株の中でも全般的に良い結果を出した。しかし、これらの戦略は反発した最安の銘柄群から利益を上げた。バリュー株式運用機関はイールドカーブの懸念から金融株のエクスポージャーを引き下げたが、市場の反発時に遅行した消費関連株を追加した。
市場型(マーケット・オリエンテッド)運用機関はバリュエーションの好機に機動的に対応
- 市場型運用機関は今四半期中全般的により割安な株へローテーションを行い、自己資本利益率の高いものを選好した。
結論
2018年10–12月期と2019年1–3月期のボラタイルな市場変動は収束したように見えるものの、アウトパフォームのチャンスを見極めるためには、専門家の運用機関の見解に着目することが今まで以上に大切であると弊社は考える。株式市場で唯一変わらず存在し続けるのは「変化」である。運用機関ユニバースからの弊社の見解を引き続き報告していくのでお見逃しなく。