2023年2月 株式市場見通し:欧州と中国に対して慎重ながらも楽観視

以下は、2023年2月3日にラッセル・インベストメント(米国)のHPに掲載された英文記事を翻訳したものです。原文は こちら。内容は作成時点のもので今後市場や経済の状況に応じて変わる可能性があります。また、当見解は将来の結果を保証するものではありません。

2022年は株式にとって非常に厳しい年となったが、運用機関は2023年に一部地域で株価が反発するとの楽観姿勢を強めているだろうか?

ラッセル・インベストメントの最新の株式市場見通しによると、特にヨーロッパと中国に対しては楽観的になっているようだ。

景気後退をめぐるマクロ経済の不透明さが続いていることから、2023年前半は市場のボラティリティが高い状況が続くと予想されるが、株式運用機関は一部の地域について慎重ながら楽観的に転じている。具体的な地域としては欧州と中国が挙げられる。欧州では懸念されていたほどには景気後退が深刻化しない見通しになっており、中国では広範なコロナ規制の緩和によりポジティブなセンチメントが生まれている。中国については、昨年10月の全国人民代表大会後に政府の景気刺激策や西側諸国との関係改善が進展したことも、運用機関のセンチメント改善につながった。また、欧州と中国はバリュエーション面でも楽観視できる根拠があり、足元のドル安トレンドの恩恵も受けたと考えられる。

ラッセル・インベストメントの見通しによれば、今年も投資家にとって最大の懸念事項となるのは、最近のインフレ緩和傾向が反転すること、および予想以上に急激な景気後退に陥ることである。運用機関は、終わりの見えないウクライナ戦争がもたらすロシアとの緊張悪化にも懸念を示している。一方、中国と台湾との紛争発生に対する懸念は第4四半期に薄らいだ。

全体としては、2022年第4四半期は楽観的な見方が広がり、さまざまな市場の回復につながった。第4四半期には全ての株式市場が大きな絶対リターンを実現し、この時期の米ドル安も追い風となり米ドル建てでのリターンが特に大きかった。中でも、突出したパフォーマンスを見せたのは欧州だった。当四半期の市場環境は、グローバル株式、米国を除くグローバル株式、米国大型株、米国小型株、欧州株式、英国株式、新興国株式、カナダ株式、日本株式のアクティブ運用機関にとって比較的良好であったが、ロング/ショート戦略、オーストラリア株式、上場リアル・アセットの運用機関にとっては比較的難しい環境だった。

バリューファクターは全ての地域で突出したパフォーマンスを示した一方で、グロース、クオリティ、低ボラティリティはほとんどの地域で大なり小なりの出遅れとなった。米国株式については、運用機関がポジションをよりディフェンシブに傾向してきたことから、低ボラティリティのパフォーマンスが比較的良好だった。このように、戦略(スタイル・ファクター)がパフォーマンス差異の主要因となる状況は変わっていない。

エネルギーセクターは、第4四半期にもほとんどの地域で最もパフォーマンスが良好なセクターとなった。ただし、新興国市場とオーストラリアは例外だった(この2市場では景気後退懸念が従前の予想ほどは深刻にならなかった)。金融、素材、資本財・サービスなど景気循環性の強いセクターも、すべての地域で全般的にアウトパフォームした。

本レポートは、ラッセル・インベストメントが運用機関との間に築いた独自の関係を活用して、運用機関のスペシャリストの見解を読みやすい形にまとめたものである。2022年第4四半期の世界の主要な株式市場と地域について、主な戦術的見通しを以下で紹介する。


オーストラリア株式

オーストラリアは景気後退を回避できる見通し

  • 世界経済の減速と金利上昇にも関わらず、運用機関はオーストラリア経済が景気後退入りするとは予想していない。天然資源に対する需要と好調な雇用が消費者の生活コスト上昇を補うことが根拠となっている。
  • 投入コストの上昇を転嫁できない企業、負債比率の高い企業、一般消費財セクターで事業を展開する企業については、運用機関は慎重な姿勢を崩していない。

中国からの追い風

  • コロナ禍後の中国経済の再開や、中国とオーストラリアの外交関係の大幅な改善が、オーストラリア経済にとって追い風となってる。
  • 1月に中国企業から2年ぶりに石炭を受注したことは外交関係の雪解けを裏付けるものである。
  • オーストラリアにとって、教育は輸出品目の上位5項目に入っており、コロナ禍前は留学生の3分の1を中国からの留学生が占めていた。しかし、中国人留学生はまだオーストラリアに戻っておらず、2022年9月の中国人留学生数は2019年9月から53%減少している。

運用機関は資源株とエネルギー株のオーバーウェイトを維持

  • 運用機関は第4四半期も資源株とエネルギー株の保有を継続し、一部は新規銘柄も組み入れた。資源関連の保有銘柄では、鉄鉱石よりも、電化のテーマに関係する金属のウェイトが高くなっている。そのような金属は堅調な需要が予想されている一方で、供給は限られている。

金への注目が集まる

  • バリュー重視・グロース重視のどちらの運用機関も、金鉱会社へのエクスポージャーを維持するか積み増した。企業ごとの保有理由については金属鉱業会社と似ているが、運用機関は金セクターがインフレ環境から恩恵を受けると予想している。

カナダ株式

投資家は金融セクターに投資機会を発見

  • 景気後退リスクや住宅ローンへのエクスポージャーがあるが、運用機関は現在のバリュエーション水準であればカナダの銀行株は魅力的なリターンにつながると考えている。
  • 住宅ローンのヘッドラインリスクはあるものの、深刻な景気後退が生じたとしても資産担保ローンの損失リスクは限定的だと投資家は考えている。その理由は、自己資本比率が高水準を維持しており、バリュエーションも歴史的な低水準となっているからである。

利益予想の確度が高い企業への注目は高まる

  • 景気後退リスクが生じているため、運用機関のポートフォリオの全体的なポジショニングとしては、利益が安定している企業が選好されている。
  • 投資家はシクリカル性の高いセクターへの投資には慎重になっているが、比較的安定した企業に対する投資機会については、これまでの下落で魅力的な株価水準となっている。
  • 消費者の間には安価でベーシックな商品への買い替えを進める動きが発生しており、それに関係している一般消費財銘柄は比較的注目度が高い。

エネルギーを含む資源関連銘柄は引き続き魅力的だが、投資家は銘柄を厳選する傾向

  • 世界的な需給の不均衡が続いていることから、運用機関は全体としてエネルギー関連銘柄に強気の姿勢を保っている。セクター全体の見通しは良好だが、運用機関の銘柄選別は厳しくなっており、コモディティ価格上昇への依存度が低い産業セグメントを重視している。
  • その他の素材株の見通しはまちまちである。農業関連企業や銅に対する投資家の見方は概ね強気であり、銅については脱炭素化のトレンドや電化の拡大などが主な材料となっている。一方、金やその他の金属に関する見通しはそれほど良好ではない。

新興国株式

中国に関する見通しが改善

  • 中国では3年間続いたゼロコロナ政策が完全に終了した。事業活動は再開し、海外旅行の規制も緩和されている。.
  • 経済活動の再開と国内需要の拡大から最も大きな恩恵を受けるのは、消費者関連の大企業だと考えられる
  • 米中間の緊張緩和により、多くの運用機関が中国ADR(米国預託証券)に対する前向きな姿勢を強めている。
  • 不動産セクターについては、新政策により銀行に開発業者への融資を奨励するとともに、消費者需要の回復を支援することで好転する可能性がある。

課題が待ち受けるインド株式

  • 割高な市場バリュエーション、世界的な景気後退の可能性、2022年の資金移動が反転して中国への再流入が始まる可能性など、さまざまな影響が複合して何らかの逆風が生じると予想されている。

ブラジルで政治リスクが再燃

  • ルーラ・大統領の当選により当初は楽観論が広がったが、積極的な財政政策を発表し財政不均衡の可能性が生じたことから、市場では売りが強まった。
  • 運用機関は引き続き楽観的だが、慎重な姿勢も保っている。

コモディティ市場の強気サイクルが拡大

  • 素材企業は2022年に好調だったが、大半の運用機関はアンダーウェイトを続けている。
  • 数年にわたるコモディティ市場低迷により、鉱業会社はコストやファンダメンタルズの強さに関して規律を改善してきたが、投資家はその点を見過ごしてきた。バリュー株運用機関は、素材株に関してポジティブなアーニング・サプライズがあり得ると考えている。

半導体の下降サイクルは2023年に底を打つと予想

  • 半導体サイクルは2023年後半に底を打つと予想する向きが多いことから、半導体サイクルに対するエクスポージャーの保有を検討する運用機関が増えている。

欧州および英国株式

欧州の時代が到来か?

  • 欧州株式に対するネガティブなセンチメントが底を打ったことに加え、バリュエーションは割安で期待値も低いことから、2023年には投資家が欧州株式へのエクスポージャーを引き上げ始めると予想されている。

自動車産業に投資する好機

  • 自動車産業に対するネガティブなセンチメントは過去最高水準となっており、バリュエーションは90パーセンタイルの位置にある。
  • ネガティブな要素も確かに存在するが、自動車産業がシクリカルである点や、現在進行中の電気自動車(EV)によるディスラプション(破壊的創造)を考慮すると、移行期を勝ち抜ける企業が明確になってくるこの時期は投資の好機であると一部の運用機関は考えている。

投資機会の見極めが必要

  • 他の地域や過去と比較すると、欧州株式のバリュエーションは全体として魅力的だが、すべての投資機会について同じというわけではない。
  • 欧州株式市場の中でも高クオリティのセグメントでは依然としてバリュエーションが高く、一部の銘柄はセンチメントが悪化すればさらに値下がりするリスクがある。

資本財やグリーン設備投資を支援する政策が継続中

  • 市場のボラティリティは高い状況が続いているが、欧州各国において資本財やエネルギーインフラに関する支援や増強を進める動きは弱まりそうにない。
  • これらのセクター、特に「グリーン移行」を担う企業に対する財政政策上の支援は今後も継続する可能性が高い。

消費者信頼感の低調が続く英国だが・・・

  • 運用機関は英国におけるインフレ懸念のピークは過ぎたと考えており、2022年に消費者関連銘柄が下落したことでこのセグメントに投資妙味が生まれたと見ている。

グローバル株式

景気後退懸念によりディフェンシブなポジショニングが続く

  • 米国や欧州などの市場におけるインフレ緩和の兆候を受けて世界全体で株価が上昇したが、マクロ経済の悪化や根強いインフレ圧力のリスクは残っているため、アクティブ運用機関は慎重な姿勢を崩していない。運用機関は、安定した利益と強い価格決定力により景気減速を耐え抜くことができる企業を選好する傾向が続いている。
  • グロース株運用機関は、収益性の低い企業のマルチプル縮小を警戒しており、より質の高い複利的成長が可能なレジリエント(強靭性のある)な企業を選好する傾向を強めている。

業績予想の下方修正により投資の好機が生じると予想

  • 企業の業績予想は将来の利益成長を反映しており、足元では下方修正が起き始めている。最近の市場下落やセンチメント改善にもかかわらず、運用機関は投資の好機が生じるのを慎重かつ忍耐強く待っている。

リオープニング・トレード:中国の投資機会

  • 運用機関は中国の投資機会を見過ごす事が多いが、最近のコロナ政策緩和に加えて、経済成長を再び重視し始めたことや海外旅行の再開により、中国株式への関心が高まり資金配分も増加している。特に、中国の主要インターネット企業や国内消費の回復から恩恵を受ける企業に注目が集まっている。

バリュー投資家の投資機会が拡大

  • 市場のバリュエーションが広範囲に低下しているため、バリュー株運用機関にはさまざまな新しいアイデアが生まれており、楽観的な状況である。特にテクノロジー銘柄など、これまで投資を検討しにくかった高バリュエーションのセクターについても、投資機会が見出せるようになっている。

バリュエーション差により欧州株式への移行が進む

  • 欧州市場はセンチメントの弱さと利上げによる悪影響を大きく受けてきた。欧州株式は、米国上場の同業他社と比較してマルチプルが相当に低いため、選好の対象となっている。

日本株式

インフレ圧力はピークに達しつつあると予想

  • 多くの運用機関は、2023年前半に世界経済が減速しインフレ圧力が緩和されると予想している。
  • グロース株運用機関は、政策金利が現在の水準に留まることを前提とした株価となっている高バリュエーション銘柄を警戒している。一方、株価が調整され、魅力的なバリュエーションとなってきた銘柄に関心を示している。
  • バリュー株運用機関は、株価の回復とバリュエーションの上昇に応じてディフェンシブ銘柄を減らし、シクリカル銘柄のエクスポージャーを引き上げている。

銀行セクターへの関心の高まり

  • 日本銀行はイールドカーブ・コントロール政策を修正し、長期金利の許容変動幅を50ベーシスポイント(bps)に引き上げた。日銀の金融政策が一段の正常化に向かうとの見方が強まり、銀行セクターのパフォーマンスが堅調となった。
  • 賃金上昇への期待は高まっているが、上昇幅については投資家の見方が依然として分かれている。

テクノロジーセクターに対する見方はまちまち

  • 運用機関の間では、今年の半導体業界は下降サイクルに直面するとの見方がコンセンサスとなっている。ただし、下降サイクルの深さや長さについては見解が分かれている。
  • 比較的強気な運用機関は、半導体の下降サイクルは緩やかだと考えており、生産拠点の多様化による需要拡大が続くと予想している。

日本の業績見通しは比較的堅調

  • コロナ禍からの正常化の進展や、中国の経済再開によるインバウンド旅行者の回復から、日本の国内景気は回復基調が続くと予想されている。
  • コロナ禍からの正常化の進展や、中国の経済再開によるインバウンド旅行者の回復から、日本の国内景気は回復基調が続くと予想されている。

ロング/ショート戦略

ヘッジファンドは歴史的低水準のグロスおよびネットエクスポージャーで新年を迎える

  • 株式ロング/ショート型ヘッジファンドは、2022年全体を通じてレバレッジ取引の解消を大きく進め、10月にはエクスポージャーが歴史的な低水準となった。
  • ディフェンシブなポジショニングが続くことにより、株式ロング/ショート戦略は引き続き逆風を受ける可能性がある。市場が上昇すれば、運用機関はポジショニング調整の必要に迫られるか、短期的にパフォーマンスが劣後することになる。

中国株投資の再開と欧州株投資の拡大

  • ヘッジファンドは、2022年の大半で売り越しだった中国株(主にADRとH株)の買い戻しを始めた。
  • 運用機関はエネルギー銘柄とヘルスケア銘柄を選好し、大型ハイテク株を売り続けている(エクスポージャーは10月に約4年来の低水準となった[1])。

空売りが2022年のパフォーマンスを牽引

  • 2022年はショートアルファの記録上最高の年となり(データのある2009年以降で[2])、ロングアルファについてはグロースファクターのエクスポージャーが高水準であったことから最悪の年となった。
  • 空売りにより大きな超過収益が発生しているが、運用機関は有意義な空売りのアイデアを見つけ続けている。

リアル・アセット

中国の経済再開

  • 運用機関は、中国政府がゼロコロナ政策を終了して経済活動を再開したことの評価をしている。
  • 香港・中国間の渡航が再開されたことにより、そのテーマと経済的に関係しているセクターや企業は恩恵を受けることになろう。
  • 経済再開後に新型コロナ感染が拡大していることから、中国は比較的早期に集団免疫を獲得すると予想されており、人や物の移動制限による悪影響は長期化しないと考えられる。
  • さまざまな経済的結果について予想することは非常に困難であり、運用機関は引き続き独裁政権を重要なリスクと見ている。
  • 中国の経済再開が軌道に乗れば、旅行の増加によりアジア太平洋地域の空港が恩恵を受ける可能性があるほか、小売業者、特に香港や日本の小売業者が3月以降に恩恵を受けるであろう。ただし、これは決して運用機関のコンセンサスではない。

グローバル不動産株

  • プライベート不動産の価値はマクロ経済の状況を反映して下落する可能性が高い。
  • 上場不動産市場はそうした価値の下落をすでに織り込んでいる。
  • セクターレベルや企業レベルでは、(特にプライベートの投資機会と比較すると)割安な投資機会が存在する可能性がある。データセンターとヘルスケアについては、賃料上昇の見込みが高いと運用機関は判断している。

インフラ

  • 運用機関は、特に古いインフラ資産の更新や再生可能エネルギーの普及に関して、公共政策によるインフラ投資支援が今後も世界全体で活発に行われると考えている。
  • 公益事業は数十年にわたる構造的成長の過程にある。ただし、設備投資の拡大については、金額的妥当性、信頼性、持続可能性という観点から管理を行う必要があろう。

米国大型株式

景気後退に備えたポジショニング

  • バリュー株運用機関は、第4四半期の株価上昇を受けて、シクリカル性の強いセクター(特に消費者支出に依存する企業)へのエクスポージャーを引き下げている。
  • グロース株運用機関は景気見通しについて楽観的だが、IT業界や金融業界の大企業が大量の人員削減を発表していることから推測すると、以前のような高い成長率が近い将来に戻ってくる可能性は少ないと考えられる。

資本配分の優先順位の変化

  • 金利上昇により資本コストが上昇する中で、企業は営業費用や設備投資を削減して借入金の返済を進めている。
  • 運用機関は、低クオリティで負債比率の高い企業へのエクスポージャーを減らし、強力なバランスシートと持続可能なキャッシュフローを持つ企業へのエクスポージャーを増やしている。

変化する競争環境/span>

  • 収益性が低い段階にあるビジネスモデルが、財務状況の悪化やエクイティファイナンスの実施困難による圧力を受けていることから、グロース株運用機関はポートフォリオ企業の競争力の再評価を進めている。
  • さまざまな投資スタイルの運用機関が、支配的な市場シェアを有し、競争上の優位性防御が容易である企業の保有を増やしている。

バリュエーションの重要性

  • バリュー株運用機関とグロース株運用機関はどちらもゼロ金利からの脱却を歓迎している。それにより過剰な投機資金が市場から払拭され、差別化が可能な(つまり詳細な)ファンダメンタルズ分析に付加価値が生じると考えているからである。
  • そうした点から見ると、現在の市場に広がっている大幅なバリュエーション・スプレッドは、一層の超過収益を獲得する機会を豊富に生み出す源泉になり得ると考えられる。

米国小型株式

小型株は米国株式市場で最も魅力的と考えられている

  • 運用機関は、景気後退期には小型株のリスクが本質的に高くなることを認識しているが、そのリスクはすでにバリュエーションに織り込まれているとも考えている。運用機関はこれまで、小型株が大型株より25%以上も割安になっていると強調してきた。また、小型株の現在のバリュエーションは30年間の長期平均より約20%割安であり、それに対して大型株は約10%割高だと指摘している。

運用機関はアクティブ運用が引き続き好調と予想

  • 運用機関は、金融緩和の幕引きの進行が優良株を引き続き下支えすると予想している。小型株の大半は収益性が低い企業であるため、そうした状況は基本的に小型株のアクティブ運用に有利である。

マーケット・オリエンテッドの運用機関は2023年の上げ相場に向けてポジショニング

  • ディフェンシブ銘柄やプロシクリカル銘柄への投資を柔軟に行えるようなプロセスを整備している運用機関は、2023年のシクリカルセクターの大幅反発を見越したポジショニングを行っている。そのような運用機関は、悲観論の大半が織り込み済みであると考えており、経済指標の改善を予想している。

バリュー株運用機関は金融銘柄に慎重となる一方でエネルギー銘柄に追加投資

  • バリュー株運用機関は企業の業績見通しを懸念しており、米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げが経済に影響を与えるまでには時間がかかるのが普通だと考えている。そのため、信用力の問題が近い将来発生すると予想している。バリュー株運用機関は、2022年後半にエネルギー銘柄のエクスポージャーを削減したが、現在では同セクターへの追加投資を開始している。

グロース株運用機関はシクリカル銘柄に投資機会を見出す

  • グロース株運用機関は経済のソフトランディングを予想しており、運輸(トラック運送業者)、半導体、建築資材などのシクリカルなグロース株に投資機会を見出し始めている。一方、ソフトウェアやバイオテクノロジーなどの銘柄には慎重な姿勢を続けている。/span>

結論

インフレが全体的にピークアウトし、景気後退が予想ほど深刻ではないと見込まれるようになってきたため、2023年初頭における株式運用機関の見通しは、特に欧州と中国について慎重ながらも楽観的となっている。ただし、景気後退の深さや長さ、およびインフレ減速の度合いについては依然として非常に不透明である。そのような状況下で、運用機関のスペシャリストの見解は、リスクや投資機会の特定と活用に当たって重要なものと考える。ラッセル・インベストメントでは今後も各運用機関の見解をご紹介していく予定である。

1 出所:Morgan Stanley Prime Brokerage
2 出所:Morgan Stanley Prime Brokerage