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なぜ、今日の高度に集中した株式市場において、熟練したアクティブ・マネージャーを利用するのか

概要:

  • 今日の米国株式市場は一部のメガキャップ銘柄への集中度が高く、ラッセル1000指数の年初来リターンの96%を7銘柄が占めるという驚異的な状況にある。
  • 時価総額が高度集中している時期は、多くの株式マネージャーがメガキャップ企業をアンダーウェイトする傾向があるためアクティブ運用には厳しい環境となる。
  • このような傾向があるため、メガキャップ企業間の特異な差異を識別し、それに応じてウェイトを調整できるマネージャーと組むことが重要であると考える。

以下は、2023年6月21日にラッセル・インベストメント(米国)のHPに掲載された英文記事を翻訳したものです。原文はこちら。

Appleをもっと身近に取り入れたい人は誰でしょうか。10才の私の娘と友達、それとも株式アクティブ・マネージャーでしょうか。

その答えは意外なものかもしれません。しかし、その前に両者の背景を少し説明します。

娘は最近、私たち夫婦にAppleのiPhoneを欲しいとせがんでいます。その主な理由は友達の多くがすでにiPhoneを持っているからです。彼女のこのお願いで、この数十年でAppleというブランドがいかに世界の家庭に浸透したかを実感しました。そして、Appleだけでなく米国の一握りのメガキャップ企業が、この期間に消費者や投資家に与えた影響は実に驚くべきものです。

例:過去8暦年のうち6暦年において、ラッセル1000® グロース指数とラッセルトップ50® メガキャップ指数は、ラッセル1000® 指数をそれぞれ年率平均3.15%、1.34%アウトパフォームしました。2022年には利上げの影響により、複数回にわたってこのメガキャップ成長株は縮小してきましたが、今年に入ってからはすさまじい勢いで盛り返しています。例えば、2023年5月31日まででNVIDIA、Meta、Tesla、Amazon、Alphabet、Microsoft、Appleはいずれも36%超の上昇率となりました。

今日の市場は、どの程度メガキャップの成長株に集中しているのか。

そして、現在の米国株式市場では再びメガキャップのハイテク企業への集中が高度に進んでいます。この驚くべき統計をご覧ください。5月末までのラッセル1000指数の年初来リターンの96%は、なんとわずか7銘柄に起因するものです。1,000銘柄のうちの7銘柄です。

Stock Name R1000 Avg
Weight
Stock
Return

R1000
Contribution

NVIDIA CORP 1.6% 158.9% 1.6%
META PLATFORMS INC. 1.1% 120.0% 0.9%
TESLA INC. 1.2% 65.6% 0.6%
AMAZON.COM INC. 2.4% 43.5% 0.9%
ALPHABET INC. 3.1% 39.3% 1.1%
MICROSOFT CORP. 5.5% 37.6% 1.9%
APPLE INC. 6.2% 36.8% 2.0%
Sum of Top 7 Stocks' Return
Contribution to Russell 1000 Index
9.0%
Russell 1000 Index Return
9.3%

Top 7 Stocks YTD Contribution

96.3%

出所:Bloomberg, 2023年5月31日時点、米ドルベース。インデックスは資産運用管理の対象とはなりません。また、インデックス自体は直接的に投資の対象となるものではありません。インデックスには運用報酬がかかりません。

別の言い方をすれば、この7銘柄を指数から除外した場合、指数に含まれる他の993銘柄の実際のリターン寄与度は、わずか+0.34%にとどまっています。実際の指数のリターンである+9.30%との差を考えてみてください。驚きです。市場集中が著しいことがわかります。

さらに言えば、ラッセル1000均等加重インデックス(各セクターを均等加重し、各セクター内の各構成銘柄を均等加重したインデックス)は、5月末までの累計で時価総額加重型のラッセル1000指数に10.90%も大きく水をあけられており、これらのメガキャップ成長企業がトータルリターンに与えた大きな影響力を浮き彫りにしています。実際、下の図が示すように、Appleの2023年の躍進によって、現在の同社の時価総額は2.7兆ドルに膨れ上がっています。この金額は今やラッセル2000の市場時価総額よりも大きくなっています。

Apple's market cap overtakes the Russell 2000 Index

出所:Bloomberg, 2023年5月31日時点、米ドルベース。インデックスは資産運用管理の対象とはなりません。また、インデックス自体は直接的に投資の対象となるものではありません。インデックスには運用報酬がかかりません。

時価総額が高度に集中する時期には、一般的にアクティブ運用はどうなっているのか。

今日の米国株式市場が高度に集中していることは紛れもなく明らかです。しかし、これは一般的にアクティブ・マネージャーのパフォーマンスにどのような影響を与えるのでしょうか。そして、それは良い意味での影響なのか、悪い意味での影響なのでしょうか。

さらに詳しく調べてみると、時価総額が高度に集中している時期は、アクティブ運用にとって厳しい環境になる傾向があり、逆もまた然りであることがわかりました。例えば、ラッセル1000指数の上位10%の銘柄のウェイトが大きくなってくると、アクティブ運用はそれに引きずられるように苦戦する傾向があります。そして市場集中度がピークに達すると、その後は市場集中度が後退するのと合わせてアクティブ運用は強い結果を出す傾向になります。

この関係の一例として、以下の図では、米国大型株市場志向、バリュー、グロースのラッセルユニバースのパフォーマンスが、指数の集中度のピークレベルによってどのように影響を受けるかを示しています。

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Excess return chart vs. Russell 1000 Index

出所:ロンドン証券取引所グループに属する会社、ラッセル・インベストメント、期間:2000年3月31日~2023年3月31日、米ドルベース。
ラッセル・インベストメントの保有する米国大型株ユニバース、中央値(1/3市場志向、1/3バリュー、1/3グロース)はラッセル1000指数との相対比較によって測定。パフォーマンスは基本的に運用報酬控除前のリターンを利用、運用報酬控除前のリターンのデータがないプロダクトは運用報酬控除後のリターンを利用。運用成果は過去の実績であり、将来の結果を保証するものではありません。インデックスは資産運用管理の対象とはなりません。また、インデックス自体は直接的に投資の対象となるものではありません。インデックスには運用報酬がかかりません。

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Forward 3 year excess return vs. Russell 1000 Index

出所:ロンドン証券取引所グループに属する会社、ラッセル・インベストメント、期間:1999年3月31日~2020年3月31日、米ドルベース。
ラッセル・インベストメントの保有する米国大型株ユニバース、中央値(1/3市場志向、1/3バリュー、1/3グロース)はラッセル1000指数との相対比較によって測定。パフォーマンスは基本的に運用報酬控除前のリターンを利用、運用報酬控除前のリターンのデータがないプロダクトは運用報酬控除後のリターンを利用。運用成果は過去の実績であり、将来の結果を保証するものではありません。インデックスは資産運用管理の対象とはなりません。また、インデックス自体は直接的に投資の対象となるものではありません。インデックスには運用報酬がかかりません。

最初の図が示すように、市場の集中度が高まるまでの3年間(1999年以降の四半期ごとの上位15期間を示す。例えば再右端の2022/3/31は、それ以前の3年間の市場集中度の高まり度と当該期間のアクティブ運用機関の超過収益の中央値を示す)は、アクティブ・マネージャーにとって市場の集中度に引きずられるように顕著な足かせとなっていることがわかります。例えば、米国ラージキャップのアクティブ・マネージャーの中央値は、1999年以降、ラッセル1000指数が最も高い15段階の集中度を示した直近3年の関連期間において、同指数に年率平均90ベーシスポイント(bps)の差をつけられました。

次に、市場集中度が高い状態が長く続いた直後の3年先までの期間を示した図を見てみましょう。この図は、1999年以降、3年先のデータが入手可能な上位15期間(例えば再右端の2003/9/30は、それ以降の3年間の市場集中度の減少度と当該期間のアクティブ運用機関の超過収益の中央値を示す)を取り上げたもので、これらの期間はアクティブ・マネージャーにとってプラスであることがわかります。この図が示すように、(3年先のリターンを示すのに十分なデータあった)1999年以降、ラッセル1000指数が最も高い15段階の集中度を示した3年先の関連期間において、米国の大型株式マネージャーの中央値は、年率換算で平均60bps同指数を上回りました。

また、下図はラッセル1000指数内の上位10銘柄の四半期毎ウェイトの推移を示しています。2020年6月のところには3年先のリターンを提示するのに十分なデータがまだないためカットオフラインを書いています。現在の非常に高い市場集中度と先に示した3年先の超過リターンとの歴史的な関係を考慮すると、おそらく私たちが自問すべきなのは、アクティブ運用が今後数年間で強力に復活する可能性があるのではないかということでしょう。

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Line chart showing top 10 stocks within Russell 1000 Index

出所:ロンドン証券取引所グループに属する会社、ラッセル・インベストメント、2022年12月時点、米ドルベース。
インデックスは資産運用管理の対象とはなりません。また、インデックス自体は直接的に投資の対象となるものではありません。インデックスには運用報酬がかかりません。

なぜ一部のアクティブ・マネージャーはメガキャップ株をアンダーウェイトするのか。

究極の疑問として、なぜ市場集中度が低いときにアクティブ運用のパフォーマンスがよくなる傾向があるのかということです。奇妙なことに、その答えはこの記事の冒頭で述べた「10才の子供と一般的なアクティブ株式マネージャーのどちらがAppleへのエクスポージャーをより切望しているか」という質問の答えにもなっているのかもしれません。

簡単に言えば、その答えはアクティブ・マネージャーはメガキャップ企業をアンダーウェイトする傾向があるということです。つまり、私の娘や友達たちはおそらく平均的なアクティブ・マネージャーよりも、自分たちの生活にAppleをもっと身近に取り入れたいと思っていると言えるのではないでしょうか。しかし、なぜこのようなことが起こるのでしょうか。なぜ多くのアクティブ・マネージャーが、こうした高業績の成長企業をアンダーウェイトする傾向があるのでしょうか。

その理由の一つは、メガキャップ企業を担当するアナリスト数がミドルキャップ企業を担当するアナリスト数よりも格段に多いことです。このため、多くのアクティブ・マネージャーは、例えば、Amazonが高い成長目標を達成し続けるというようなことで差別化した見解を述べるよりも、中堅企業について差別化した市場見解を述べる方が、より利用価値があると考えるようになることがあります。しかし、すべてのマネージャーがこのように考えているわけではないので、こうであることが必然ではありません。ラッセル・インベストメントはメガキャップ企業の特異な違いを理解し、それぞれの投資哲学と基準に従って各企業をオーバーウェイトまたはアンダーウェイトするマネージャーが最良のマネージャーだと考えています。

アクティブなマルチ・マネージャー・アプローチの活用の価値

米国株式市場の時価総額上位銘柄が上昇を続ける中、メガキャップ企業の重要な違いを見極めることのできるベスト・イン・ブリード(要件を満たした最高の銘柄を選択)のマネージャーの採用が重要だとラッセル・インベストメントは考えています。マルチ・マネージャー・アプローチを活用する投資ソリューション・プロバイダーと組むことは、このような時期に非常に重要だと考えています。それは、正当なプロバイダーは、アクティブ・マネージャーの複数のスタイルを活用し、強固な管理能力と組み合わせることができるからです。これにより、メガキャップ企業へのエクスポージャーをより正確に管理することができます。重要なのは、多くのアクティブ・マネージャーが行いがちなメガキャップ企業を単純に避ける事ではなく、個別の運用機関がその(評価されるべき)投資基準に適合する銘柄に対してメガキャップを含めてオーバーウェイト・ポジションを取れるようにすることなのです。

そこで話をもとに戻すと、私の娘と友達は自分たちの生活の中にあるAppleが大好きなのです。しかし、一部のアクティブ・マネージャーもそうかもしれません。すべてはどのマネージャーを採用するかで決まるのです。

 

ラッセル・インデックスに関連するトレードマーク、サービスマークおよび著作権は、ロンドン証券取引所グループに属する会社に帰属します。インデックスは資産運用管理の対象とはなりません。またインデックス自体は、直接投資の対象となるものではありません。