/// REGULAR POST ///

補完ポートフォリオ:ポートフォリオと戦略的信条を正確に整合

以下は、2022年10月17日にラッセル・インベストメント(米国)のHPに掲載された英文記事を翻訳したものです。原文は こちら。

機関投資家にとって、投資戦略の確立、エクスポージャーの効率最大化、戦略的信条の定義ほど重要なものはないでしょう。しかし、ポートフォリオが戦略的ポジショニングと整合していなければ、このような全体的な投資目的達成のための取り組みが水泡に帰すことなる可能性があります。

非常に優れた設計のマルチマネージャー・ポートフォリオでも、望ましいポジショニングから逸脱してしまうことはあります。最初は軽微な乖離であっても、時間の経過とともにやがては意図しないリスクが生じ、戦略的な投資信条から大幅に外れかねません。

そのため、カスタム・エクスポージャーを利用することが可能な包括的な補完ポートフォリオ・ツールを提供するプロバイダーとの連携が重要と考えています。このアプローチにおいては、実際の投資ポートフォリオと投資信条を正確に整合させることを目指します。また、マルチマネージャー・アプローチの潜在力をさらに高いレベルに引き上げることも可能になります。

課題:意図しないエクスポージャー・ギャップとリスク

アセットオーナーが複数のマネージャーに資金を配分した瞬間に、交互作用効果が生じ、ポートフォリオ全体の運用成績に影響を及ぼします。マネージャーの組み合わせによって、どのような意図しないリスクが発生するのか? 望ましいエクスポージャーのどの部分がカバーされないのか? 投資家はこうしたギャップやオーバーラップをどのように管理すればよいのか? このような疑問はいずれも、トータル・ポートフォリオの運用成績を管理する際に解決しなければならない重要な疑問です。残念ながら、個々のマネージャーは、アセットオーナーに代わってこれらを解決することはできません。

なぜでしょうか? マネーマネージャーは設計上、互いの保有銘柄を知ることができません。それぞれが専門とする投資分野で超過リターンを上げることに集中しています。このため、投資に関する独自の洞察力を各分野で発揮することができるのです。しかし、いわゆるエージェンシー問題という欠点も存在しています。マネージャー間の交互作用効果により、意図しないリスクがポートフォリオ全体に生じることがあります。簡単に言えば、すべてのマネージャーのポジションを合計した場合に、セクター、地域、ファクターに関して、特定のリスクへのバイアスが生じるかもしれないのです。こうしたリスクは、長期・短期の投資機会や望ましいリスク配分の観点から、投資家が目標とするポジショニングと完全には整合しない可能性があります。

それでは、投資家はどのような対策をすべきでしょうか? 意図しないリスクやバイアスを取り除き、ポートフォリオを望ましい戦略的ポジショニングに整合させる方法はあるのでしょうか?

ソリューション:補完ポートフォリオ

補完ポートフォリオは、複数のマネージャーの戦略に資金配分する投資家にとって強力なツールとなります。既存のマネージャーを補完し、トータル・ポートフォリオを望ましいリスクとエクスポージャーに整合させるという明確な役割があります。補完ポートフォリオを活用すれば、交互作用効果を管理することが可能です。

補完ポートフォリオの概要

1

サードパーティのアクティブ・マネージャーと組み合わせて利用するカスタマイズされたエクスポージャー。

2

マルチマネージャーで戦略的信条を反映した望ましいポジショニングの実現が可能。

3

銘柄選択効果を損なうことなく、ポートフォリオの好ましくないバイアスを除去することが可能。

補完ポートフォリオの3つの利点

  1. エクスポージャーのコントロール改善:ポートフォリオ全体と戦略的信条を整合させ、意図しないリスクによる影響を排除。
  2. リスク調整後リターンの向上:効果的なリスク管理によってリスク調整後リターンの向上を実現。
  3. ポートフォリオ構築コストの削減:多くの場合、補完ポートフォリオの活用によりマネージャーの総コスト額が減少。

補完ポートフォリオの特徴

エクスポージャーのコントロール改善

補完ポートフォリオ戦略は、ポートフォリオ・エクスポージャーの不整合を解消するための体系的な方法です。ポートフォリオ全体を望ましいポジショニングに整合させることができます。そして、投資家のポートフォリオの全体的なリスクとリターンを改善します。ラッセル・インベストメントのお客様は、意図的なエクスポージャーと意図しないエクスポージャーを慎重に判断し、プラン全体のエクスポージャーを管理できるように補完戦略を活用しています。また、補完ポートフォリオから一部銘柄を除外する、またはESG関連銘柄を組み込む場合もあります。

リスク調整後リターンの向上

望ましい長期の運用目標を達成するには、長期的な収益源から恩恵を受ける一方で、短期的な市場リスクや機会にも対応できるポートフォリオにする必要があります。それと同時に、市場の変化に応じてリスクを適切に管理することも不可欠です。ラッセル・インベストメントの補完ポートフォリオは、こうした成果を実現するための一助となります。また、ラッセル・インベストメントの分析エンジンやツールによって、お客様はリスクやエクスポージャーをプラン全体でリアルタイムに把握することができます。

ポートフォリオ構築コストの削減

多くの場合、補完戦略を活用することで、マネージャーの手数料関連の総コスト額を削減できます。また、銘柄入替やトレーディングを最低限に抑え、必要な移行コストを最小化することも可能です。

 

 

 

4つの補完ポートフォリオ活用法

投資家がハイコンビクション(確信度の高い)・アクティブ・マネージャーを起用する背景には、銘柄選定能力が超過リターンの主な原動力となることへの期待があります。しかし、こうしたマネージャーの活動には、検討すべき多くのリスクも伴います。補完ポートフォリオを活用すれば、特定のファクター、セクター、地域、通貨エクスポージャーを対象に証券/デリバティブ投資を行うことにより、リスク管理やエクスポージャー・ギャップの縮小を実現できます。その一方で、引き続きマネージャーの銘柄選定能力を全体的なパフォーマンスの主な源泉として維持することができます。

1

ファクター・リスクとポートフォリオ・リスクの管理向上

 

補完ポートフォリオは、トータル・ポートフォリオにおけるファクター・リスクへのエクスポージャーを目標と整合させることができます。その方法として、ボラティリティ・リスクへの意図しないエクスポージャーの削減を実施する場合があります。また、他の戦略ファクター(バリュー、モメンタム、クオリティなど)に対して特定のレベルを目指す場合もあります。さらに、アクティブなセクターや地域リスクについて量的管理も実施します。

 

2

望ましいリスク・プレミアムへの効率的なアクセスの確保

 

補完ポートフォリオには、確信度の高いマネージャーが存在しない場合のギャップを埋める機能もあります。例としては、ディープ・バリューやディフェンシブ・バリューへのエクスポージャー、クオリティ・インカム、インテリジェント・クレジットまたは通貨ファクターなどが挙げられます

3

アルファ機会に集中できるようポートフォリオ・マネージャーの自由度を向上

 

トータル・ポートフォリオ・レベルでのリスク管理を実施することで、ポートフォリオ・マネージャーは意思決定の自由度が上がり、ハイコンビクションのアルファ機会に集中できるようになります。近年の事例においては、ポートフォリオ・マネージャーがグロース・マネージャーを重視できるようにする一方で、補完ポートフォリオはバリューと低ボラティリティのエクスポージャーを提供し、リスクのバランスを維持しました。

 

4

オポチュニスティックな資金配分

 

短期的な市場機会が発生した場合、迅速かつ正確に、費用対効果の高い方法でポートフォリオのリスクを調整することができます。

 

 

ファクター・ケイパビリティ:補完ポートフォリオのベースを構成

補完ポートフォリオは、お客様のポートフォリオと投資信条を正確に整合させ、市場サイクルにおける乱高下や急速な変化の中でも正確な整合をダイナミックに維持できるように設計されています。こうした正確さは、資産クラスの定義だけではなく、バリュー、モメンタム、クオリティ、グロース、低ボラティリティなどの多次元ファクターにまで及びます。これらは、複数のユニバースを横断して、各カテゴリーについて株式や債券のファクター・ポートフォリオを構築することが可能です。

適切な投資ソリューション・パートナーは、カスタマイズされたファクター定義と加重スキームを持つ補完ポートフォリオを提供できるはずだと考えています。また、クオンツの導入や、脱炭素オーバーレイなどの追加的なオーバーレイ戦略も必要な機能であると考えています

結論

最終的な目的は、お客様のトータル・ポートフォリオを投資信条に正確に整合させると同時に、最適化によってリスク調整後パフォーマンスを向上させ、意図しないリスクや、リターンにつながらないリスクを防止することです。私たちは、補完ポートフォリオを提供する熟練した投資ソリューション・プロバイダーと提携することが、これを達成するための重要なステップであると信じています。