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オーバーレイ・マネージャーが語る真実

以下は、2023年6月13日にラッセル・インベストメント(米国)のHPに掲載された英文記事を翻訳したものです。原文はこちら。

概要:

  • デリバティブは驚くべきもので、長期的パフォーマンスの足かせとなる要因を最小化しながら現金を保有するメリットを事実上享受することが可能。
  • ラッセル・インベストメントは、ポートフォリオの変更やキャッシュフローから生じるリスクをどのように管理するかについて全身全霊で取り組んでいる。
  • オーバーレイ・マネージャーは信頼できるアドバイザーや、投資スタッフ同然の役割にまで発展することがよくある。
  • 多面的なポートフォリオ・ツールを活用することで将来の困難に備えることが必要になる。

ラッセル・インベストメントのカスタマイズド・ポートフォリオ・ソリューションおよびオーバレイ・ポートフォリオ・マネジメントのディレクターであるブライアン・コージーが、20年間にわたるオーバレイ・ソリューションの経験から得た重要な知見を共有します。

真実1:現金はあらゆるポートフォリオにとって必要悪であり、時には親友にもなる

 

世界で最も有益な発明の中でも現金はきわめて重要なものであり、生活必需品の購入や一回限りの支出から引退計画まで、生活のほとんどの面で物事を円滑に進めるためには不可欠な存在です。それはポートフォリオ・マネジメントにおいても同じです。現金は、経費の支払い、キャピタルコールへの対応、受益者への支払いのために必要であり、運用会社の解約、プライベート・マーケット商品の分配、年金基金スポンサーの拠出にも主な方法として利用されます。

 

現金を敵と考える仕事は多くありません。実際たいていの仕事は、より多くの現金を得ることを追求します。しかし、オーバーレイ・マネージャーである私は、ポートフォリオ全体の観点から現金をパフォーマンスの長期的な足かせとなる要素と認識して、排除することに努めています。ここで言う敵は現金という足かせであり、それは決して些細なものではありません。過去40年間、典型的な機関投資家ポートフォリオは年間で15.3ベーシスポイントを失っています1。金額に直すと、50億ドルのポートフォリオが年間770万ドルの利益を失ったことになります。幸いなことに大部分の機関投資家は、現金がポートフォリオで果たす必要悪を認識しています。彼らは現金をオペレーションのために必要としますが、より高利回りの資産に投資する方がずっと良いと思っています。これはジレンマです。しかし、新たな発明のおかげで現実的なソリューションが生まれました。デリバティブです。オーバーレイ・マネージャーは、デリバティブを使用することで、現金のほんの一部を使用してマーケット・リスク・プレミアムを捕捉することができます。金融の世界では、これは、ケーキ(マーケット・リスク・プレミアム)を持ち、食べる(オペレーションのために必要な現金を手元に保有する)こともできることを意味します。私は20年を超える期間デリバティブに取り組んでいますが、いまだにそのシンプルな利点には感嘆させられます。

また、オーバーレイ・プログラムには、少ない現金残高で運用することに対するストレスが緩和されるといった副次的な利点もあります。危機時には現金は王様のような存在になります。そのため、ポートフォリオでより多くの流動性を持つことで、少しだけ危機を乗り切りやすくなります。

真実2:ポートフォリオの変更やキャッシュフローに関係するリスクは過小評価されている

これまで、ポートフォリオ・リスク・マネジメントと言えば、トップダウン・アプローチ(例えば、資産配分)かボトムアップ・アプローチ(例えば、銘柄や運用会社の選択)のことを指していました。投資委員会は、会議の時間のほとんどをそれらに費やす傾向がありますし、そうすることがおそらく正しいのでしょう。しかし、ポートフォリオの日々の管理においては、ポートフォリオの変更やキャッシュフローに関連したリスクを減らすことができる機会が頻繁にあります。注目を集めることはないかもしれませんが、それらの問題に関するデューデリジェンスは、投資のリターンとリスクに大きな影響を及ぼす可能性があります。

ここで問題なのは、機関投資家や年金基金スポンサーは長期投資家であり、複雑なポートフォリオを管理する日々の中で生きていかなければならないということです。これは学校の小テストではありません。現代のポートフォリオはあまりにも複雑なのです。日々の市場ボラティリティ、運用会社の定期的な評価、コーポレートアクション、キャピタルコール、分配、運用会社の変更、給付金の支払いなどを含むポートフォリオに影響を及ぼす項目は無数に及びます。オーバーレイ・マネージャーと初めて接点を持つお客様は、私たちがこのような問題に日々どれだけ精力的に取り組んでいるかを知ってよく驚かれます。私たちが本気になる理由は、ポートフォリオ変更をいい加減に管理してしまうと、リターンに寄与しないリスクを高めるだけになることを知っているからです。

ラッセル・インベストメントの実務上の目標は、ポートフォリオが日中のどの時点でもレバレッジを持たず、過剰な水準の現金を持たないように適切なベンチマークに沿った取引を用意することで意図しないエクスポージャーをとるリスクをヘッジすることです。ポートフォリオのエクスポージャーがたった1時間カバーされないだけで損失が生じる可能性があります。例えば、米国株式へのエクスポージャーを持つ5,000万ドルのキャッシュフローがたった1時間カバーされないだけで、20万ドル超の損失が生じることがあり得ます2。それは運用会社のその年の報酬に匹敵し得るものです。調整されていない、あるいはいい加減に調整されたポートフォリオの変更は機会費用を生じさせます。これは、特に一瞬のリスクが影響し、パフォーマンスがベーシスポイント単位で測定されるような細かく管理されるポートフォリオにおいて顕著になります。リスク・マネージャーである私は、機会費用はしばしば部屋の中のゾウ(誰もが認識しているが話したくない重要な問題)であるものの、ほとんどの投資家はそれが思い通りにならない場合、絨毯の下に隠したがるものでもあるということを知っています。

当デスクに共通する考えは、最高の投資判断であっても下手なインプリメンテーションによって相殺されることがあり得るというものです。ラッセル・インベストメントは、そのようなリスクに全身全霊で取り組み、トレーディングにおける厳格な調整とデューデリジェンスを通してお客様が1ベーシスポイントでも節約できるように支援してまいります。

真実3:オーバーレイ・マネージャーは典型的な運用会社ではない

オーバーレイ・マネージャーとして、私はポートフォリオ内の他のすべての運用会社とは大きく異なるユニークな視点をもっています。これは、すべての運用会社を含むポートフォリオ全体を良く知るコンプリーション・オーバーレイにあてはまります。それらのマンデートでは、ラッセル・インベストメントはお客様のポートフォリオを毎日その資産配分や投資のパラメーターに従って構築できるように日々のカストディ情報を取得しています。最終的な成果物は、ポートフォリオのエクスポージャーを目標対比で示すことです。これは、お客様にとって有益な報告であり、ラッセル・インベストメントとお客様はいずれもポートフォリオ内の各運用会社を認識し、同じような視点からトップレベルのエクスポージャーを模索することができます。

見込みのお客様に、ポートフォリオの日々の管理に関して私たちが投資スタッフとどれだけ密接に協力できているかを説明するのは難しいことです。投資スタッフとオーバーレイ・マネージャー間のつながりは、時間の経過とともに強くなる傾向があります。私たちは、サブアドバイザーではなく、彼らのスタッフのように扱われています。

お客様が目標資産配分を修正する、または運用会社のラインアップを変えることを望む場合、私たちはそれを最初に知る立場にあることが多いです。また、投資スタッフが翌四半期の流動性に関する計画を立てるとき、私たちは決定権を持つことがよくあります。新たな問題が起きたとき、または新たなリスクや新たな資産クラスへのエクスポージャーが検討されるとき、お客様は、それらの変更を実行する最善の方法に関して私たちの考えをお求めになることが多々あります。ラッセル・インベストメントは、世界中の機関投資家と接してきた経験、トレーディング、コンサルティング、オペレーションにおけるスタッフの深い専門知識を活用することで、お客様がその目的を果たすための低コスト、低リスクのソリューションを見つけるのを助けることができます。

真実4:少しの事前準備で後悔を伴うリスクをヘッジできる

投資は難しいものです。一貫して将来を予測することは不可能です。多くの場合、投資家がせいぜいできることは、用意周到に前もって備えることです。これは、現在と将来の問題両方に対処するために適切なポートフォリオ・ツールを備えることを意味します。

オーバーレイ・プログラムの利点はその柔軟性にあり、見込みのお客様に説明するのが困難なのもまた、この柔軟性です。オーバーレイ・プログラムは、最も単純な利用方法としてポートフォリオの現金エクスポージャーを株式化するために使用することができます。同時に、同じプラットフォームが、リバランス、資産配分変更の実行、為替リスクのヘッジ、戦術的ポートフォリオ・ティルトの実行、負債リスクの削減、ダウンサイド・テール・イベントに対するヘッジ、その他多くの目的のために使用することもできます。先物、先渡取引、スワップ、オプションなどのデリバティブ商品は、この点で非常に手間がかかります。しかし、その他のケース(例えば、ライアビリティ・ドリブン・インベストメント(LDI)、移行管理、ファクター・ベース・コンプリーション)は、お客様にとって最高のソリューションとなるデリバティブと現物証券の組み合せです。

事前に準備することで、お客様がそれを最も必要とするときに得ることができる価値を大きく高めることができます。新たな口座を開設する、法律・規制上の手続きを完了する、OTC取引機能を追加するには時間がかかります。そのため、私たちは将来後悔や不安を持つことがないようにすることを目指します。こういった手続きの一部は比較的に早く(数日)完了しますが、数週間あるいは数カ月かかる可能性があるものもあります。

最近、強力で多目的なツールキットを使ってランニングの前にウォーキングすることが流行っています。このような流行は十分に理解できるものです。このことから奨励されるのは、いつ走ることが必要になるかはわからないため書類や口座を準備しておくべきということです。

オーバーレイ・マネージャーであることが好きな理由

機関投資家はあらゆる種類の困難に直面します。私がオーバーレイ・マネージャーという仕事を好きな理由は、様々なアプローチでプラットフォームを活用して、お客様の抱える課題解決のお手伝いをできるところにあります。数々のソリューションは、リターンを向上させること、あるいはリスクを減らすことのどちらかに集中する場合もありますし、この2つを組み合わせる場合もよくあります。いかなる場合でも私たちは、費用対効果と透明性が高い方法でソリューションを実行することに努めています。それこそが、日々ポートフォリオを管理している信頼できるアドバイザーにお客様が期待していることだからです。

1米国株式運用会社で1.5%の現金、国際株式運用会社で2%の現金、オペレーションのために1.5%の現金(ファンド全体で2.5%の現金)を保有した場合を、ラッセル3000に40%、MSCI ACWI(米国を除く)(1998年より前はMSCIワールド(米国を除く))に20%、ブルームバーグ・バークレイズ米国総合に40%投資した場合と比較した影響(1982年12月31日から2022年12月31日まで)。当資料で表示したシミュレーションは、一定の仮定に基づくものであり、その結果の確実性を表明するものではありません。

2現金保有とS&P 500 指数保有の間の時間あたり機会費用(1標準偏差)です。Travis BagleyおよびGreg Nordquist:https://russellinvestments.com/us/blog/q2-2023-update-real-time-risk-exposure-reportをご参照ください。

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