インプリメンテーションの重要性:貴社のOCIOは執行力を備えていますか?
以下は、2025年6月9日にラッセル・インベストメント(米国)のHPに掲載された英文記事を翻訳したものです。原文はこちら。
要点:
- 投資の成功には、戦略の執行=インプリメンテーションが極めて重要です。優れた戦略も、トレーディングやオーバーレイ、トランジション・マネジメントの執行力がなければ成果につながりません。
- 効果的なポートフォリオのインプリメンテーションには、主に3つの方法があります:運用機関の入替、運用機関の配分調整、デリバティブなどを活用した精緻なポジショニング戦略です。
- 経験豊富なOCIOプロバイダーは、こうした複雑な実務に対応する体制と専門知識を備えています。
ポートフォリオに変更を加える準備が整いました。OCIOはアセットクラスの変更とその構成の見直しを決定し、個別の運用機関調査を行い、実際に採用する運用機関も選定済みです。これで完璧な計画が立てられた――そう思いたくなりますが、果たしてそうでしょうか? 率直に言えば、多くの優れた投資戦略は「執行の失敗」によって成果を上げられていません。トレーディング、トランジション・マネジメント、オーバーレイ、為替対応などの強力な執行体制が不可欠です。戦略を具現化するには、次の3つのアプローチがあります:
- 運用機関の入替
- 運用機関配分の調整
- 精緻なポジショニング戦略の実行
これらの対応には、それぞれ高度なスキルとツールが必要です。経験豊富なOCIOであれば、適切なリソースを用いて効果的に対応できます。
専門性が求められる場面
例えば、ポートフォリオに組み込まれている運用機関を入れ替える必要があるとします。想定どおりの運用がなされていない、チームに不安要素がある、あるいはより確信度の高い運用機関を起用したい――理由はさまざまです。
しかし、代替の運用機関を選定した後に直面するのが、実際に資産をどう移すかという課題です。国、規制、通貨、流動性などの要因によって、プロセスは非常に複雑になります。実行力のないOCIOでは、非効率性、予期せぬ課税、市場エクスポージャーの逸失といったリスクが伴います。
ここで求められるのが「トランジション・マネジメント」の専門性です。対応力のあるOCIOであれば、プロセスの効率化と機会損失の最小化を実現できます。信頼できるかを見極めるには、少なくとも手数料が完全に開示されているか、プロセス全体の透明性が確保されているかを確認してください。
トレーディングは生命線
運用機関の入替は大きな決定ですが、場合によっては一部エクスポージャーを別の運用機関に移すなど、段階的な調整が推奨されることもあります。
こうした調整においても、非効率を避けるためにはトレーディングの専門性が不可欠です。以下のような体制がベストプラクティスとされています:
- 24時間体制のトレーディングデスク グローバル市場の開場に合わせた稼働。米国時間中に取引できるETFや先物がある場合も、現地市場にアクセスする事で、リスクとコストの最適管理が可能に。
- ピュア・エージェンシーモデル 顧客の利益のみを追求する取引体制。運用機関側ではなく、顧客の立場に立った執行を保証。
- アセットクラス別の専門性 債券、株式、デリバティブ、為替など、資産の特性ごとに専門チームが担当する体制。
- リスク管理ツール執行時のリスクをリアルタイムで把握し、軽減するための高度なシステムとテクノロジー。
精緻なポジショニング
ポートフォリオの微調整には、運用機関とは別にOCIO自身が内部でポジショニング戦略を用いることがあります。これにより、スピード・柔軟性・精度が向上し、より望ましいポジションへと調整することが可能です。戦略には、デリバティブベースのオーバーレイやカスタムのクオンツ戦略などが含まれます。
例えば、グローバル株式ポートフォリオで日本株エクスポージャーを高めたいとします。しかし、アクティブマネージャーは日本株を恒常的にアンダーウェイトにしているケースが多くみられます。そこでOCIOは、先物のオーバーレイなどの戦略を用い、ポートフォリオ全体の日本株エクスポージャーを調整することができます。
また、為替リスクを切り離したい場合には、円の為替フォワード契約を活用することで、日本株式エクスポージャーと円建て通貨リスクを分離することも可能です。
このように、ポジショニング戦略はリスク・リターン特性の最適化、とりわけ下方リスクの抑制に寄与します。ただし、その実行には現物とデリバティブの両方のトレーディングに関するリアルタイムの専門知識が不可欠です。
まとめ
どれだけ優れた投資戦略も、適切なインプリメンテーション(執行)がなければ実を結びません。貴社のOCIOプロバイダーが、戦略を確実に実行に移すための強力なツールと体制を備えているか、いま一度ご確認ください。