不安定な市況における優秀なOCIOの特徴

以下は、2025年4月28日にラッセル・インベストメント(米国)のHPに掲載された英文記事を翻訳したものです。原文はこちら

通常の市況でさえも、資産運用の管理は難しい仕事である。関税や貿易戦争まで加わるとなれば、眠れない夜が続いても不思議ではない。本稿では、OCIOプロバイダーが不眠の特効薬となる可能性について解説していく。


OCIOプロバイダーは、市場が乱高下する時期に役立つか?

間違いなく、答えはイエスだ。私は以前に最高投資責任者(CIO)を務めており、2008年の世界金融危機をOCIOに頼らず乗り越えなければならなかった。今、異なる立場にいる者として思い返せば、当時の私にOCIOの知識があればどれほど役立っただろうかと感じている。具体的に説明しよう。

まず、熟練したOCIO(外部委託最高投資責任者)を活用すれば、事態が悪化する前に適切な投資戦略を策定できる可能性がある。資産運用の成否は、戦略的な資産配分や債務面も考慮した運用目標設定に大きく左右されるため、これは非常に重要である。戦略的な資産配分の影響は大きいが、頻繁な意思決定が必要なものではない。適切な資産配分になっていれば、世界的な貿易戦争の最中でも、それほど変更は必要ないはずである。

協調における混乱

重大な市場イベントが直撃した場合、超過リターンを得ることはますます難しくなる。CIOとして、優秀な複数の運用会社と連携して自力でリターンを高めようとすると、一つの恐ろしい真実が浮かび上がる。運用会社間での協調は限定的だということだ。

例えば、運用会社Aが、運用会社Bのポートフォリオに関する情報を把握したり、理解したりする責任を負うことはないだろう。複数の運用会社のエクスポージャーが組み合わさることで、高いボラティリティやベータ、モメンタムといったアクティブ・マネジメントにありがちなバイアスが生じた場合、CIOである私の責任となる。それは常に理解していた。しかし、そうした困難な課題に対処するための準備が不足していたことには、最も困難な時期において厳しい質問を突き付けられるまで気づかなかった。そう、世界金融危機の時期である。

CFOから自社のエクスポージャー、つまり保有資産やその価値を尋ねられたとき、運用全体に対する私の視点が限定的であったため、質問に答えるのは困難だった。レビューサイクルの頻度は最高でも四半期に一度で、現状を適時に把握できていなかった。明らかに過去の情報だったのである。

可視性

幸いなことに、投資ソリューション会社に入社してから、別の方法もあることを学んだ。世界トップクラスのOCIOプロバイダーは、ポートフォリオの保有銘柄を個別銘柄レベルですべて可視化できる堅牢なリスク管理ツールを備えている。

例えば、ラッセル・インベストメントでは、OCIOクライアントが任意の時点でどれだけの銘柄を保有しているのかについて、METRiQプラットフォーム(当社独自のリスク管理プラットフォーム)で正確に把握できる。この情報は、要望に応じてクライアントに共有可能である。関税に関するニュースが流れると、資産運用委員会から現在の保有銘柄にどのような影響があるのかと尋ねられることは容易に想像できる。OCIOプロバイダーに緊急依頼を送れば、会議までに詳細な分析結果を得ることもそれほど難しくないだろう。

リバランスにおける障壁

私がCIOを務めていた2008年、所属していた組織の保有株式が急落し、資産配分が許容範囲を逸脱したことがあった。したがって、リバランスの問題に対処する必要が生じた。当時はOCIOを活用していなかったため、こうした決定は基本的に資産運用委員会の承認や議論を経る必要があった。

この場合の問題として、資産運用委員会は複数の人間で構成されているため、議論のプロセスが必要になる。したがって、リバランスの意思決定プロセスは市況が安定している時期に設計されたものであるため、恐怖心から妨害や遅延が発生し、特定のリスク・バジェットを維持できなくなることが頻繁にあった。

多くの場合、恐怖に立ち向かい、計画していた戦略に立ち戻ることが回復への最善の選択肢となる。優秀なOCIOならそれを心得ており、感情を介在させずに適切な行動を取ることが可能である。

感情を排除する

ラッセル・インベストメントでは、リバランスの責任を引き受け、クライアントの投資方針における重要な要素を文書化することで、感情を介在させない意思決定を実現している。ラッセル・インベストメントのクライアントにおいては、方針通りに投資を実行できないことはほとんどない。ただし、不安定な市況では、リスクを管理し、買いのチャンスを逃さないよう、さまざまなことに目を配ってもいる。

ラッセル・インベストメントの目標は、可能な限りコスト効率の高い方法で上記を実現することである。取引コストを最低限に抑えるには、世界トップクラスの取引能力が必要となる。また、数十年間にわたり、弱気相場、急落・急騰、多くの予期せぬイベントを経験し、「予期せぬことを予期する」ことを学んだトレーダーの存在も不可欠である。OCIOパートナーが、通常の市況で資金を動かす際のコストだけでなく、混乱した市況で資金を動かす際に立ちはだかる障壁について、経験を通じて理解していることが重要だ。

その他の要素

リバランス以外の要素として、多くの資産運用の管理では、債券のみに注目したヘッジ戦略から一歩進んで、トータル・ポートフォリオ・アプローチを取ることがメリットにつながる可能性がある。通常、米国債などの債券に資産を配分すれば、資本効率の高い利回りとダウンサイドリスク管理の両方を実現できる。しかし、トータル・ポートフォリオを見据えたOCIOのソリューションは債券だけにとどまらず、オルタナティブやオーバーレイ、その他の非伝統的分散投資も含まれる。

結論

今日の世界情勢を鑑みると、日々の資産運用の管理は極めて困難な仕事に思えるだろう。しかし、必ずしもそうとは限らない。OCIOプロバイダーと連携すれば、枕を高くして眠れるようになるかもしれないのだ。