不確実性の時代におけるポートフォリオ構築方法

以下は、2022年6月21日にラッセル・インベストメント(米国)のHPに掲載された英文記事を翻訳したものです。原文は こちら

様々な資産クラスを活用して投資ポートフォリオを分散化すれば、長期的な投資リターンを平準化できるとともに、単一の資産クラスのパフォーマンスに対する依存も減らすことが可能です。しかし、債券と株式が同時に下落してしまう状況では、どのような対応が必要でしょうか?

重要なのはバランス

長期にわたって投資で成功する方法とは、最高のパフォーマンスを上げる投資対象を当てることではありません。資産を長期的に成長させるには、様々な市場環境に対応できるポートフォリオを構築することが最も確実な方法なのです。

つまり、可能な限り広い分野に投資することにより、特定のセクター、企業、ファンドが急落した場合でも、影響を最小限に抑えられるようにします。できるだけ多くの対象に投資しておけば、新たな機会が出現した際に取り逃さないというメリットもあります。

短期的には、特定のセクターや企業が大きなリターンを上げる可能性はあるでしょう。最近急騰している原油価格が好例です。しかし、パフォーマンスが良好な銘柄を的中させるのは難しく、安定した成果は望めません。また、銘柄選択に関する直感が当たっていたとしても、上昇と下落のタイミングを正しく判断するのは困難です。

バランスの良い分散化アプローチを採用する(つまり単一の資産クラスへの集中投資を避ける)ことにより、ポートフォリオが長期にわたって安定したリターンを達成できる可能性が高まります。

厳しい視線を浴びる債券

国債や社債に投資すると、満期日まで一定の利子を受け取れ、満期日に元本が償還されるため、一般的に「fixed income(固定インカム)資産」と呼ばれます。株式市場が急騰する環境では、債券は株式に対してアンダーパフォームすると想定されますが、債券のリスクは株式よりもはるかに低水準です。ポートフォリオを適切に分散化するには、株式市場におけるパフォーマンスの急激な変動を避けるために、債券にも投資する必要があります。

最近の株式市場の下落局面における債券市場のパフォーマンスを見ると、この資産クラスによって適切な分散化を実現できるのか疑問が生じてきます。現実として、債券投資は特殊な市場環境というパーフェクト・ストームに年初から見舞われています。新型コロナウイルスのパンデミック後に発生したインフレは、ウクライナ戦争(コモディティ価格の高騰)や中国のさらなるロックダウン(世界中のサプライチェーンの更なる混乱)により、悪化し続けています。このように急変する市場に対応するため、各国中銀は超低金利政策の終了を余儀なくされ、ベンチマーク金利を引き上げてきました。その結果、債券投資の価値が低下しました。同時に、ウクライナ戦争の影響や、金融政策の急速な変化に伴う景気減速のリスクが嫌気され、株式市場も急落しました。つまり、激しいボラティリティを背景として債券と株式が同時に売られたため、債券は安全性の高い資産としての役割を果たせなかったのです。

それでも債券は長期的にリターンを平準化

特定の投資対象の価値を考える際に重要なことは、大局的な観点から眺めることです。債券は2022年第1四半期(1-3月期)の株価下落を相殺できませんでした。しかし、より長期の投資期間でのリターンの観点からは、債券をポートフォリオに一切組み入れなければ、組み入れた場合よりもパフォーマンスが劣後しています。新型コロナウイルスのパンデミック時も同様で、株式は35%近く下落しましたが、債券を保有することでリターンを平準化できました。

1976年以降債券と株式のパフォーマンス比較を調査してきました。株式がマイナスとなった四半期について、50回中47回で債券は株式をアウトパフォームしています。これは資産クラス間に存在する最も強い相関性の一つです。

今年初めの債券と株式の同時急落は、世界の状況が大きく変わる中で発生しました。金融政策と市場は、金利上昇、インフレ高進、成長鈍化に適応する必要に迫られました。しかし、長期的に見れば、エクスポージャー全体をコントロールする上での債券の価値は明白です。

不確実な時代のリスク管理

今日の投資家は、1980年代以降では初めての環境で取引をしています。1980年代も高インフレ・低成長の時代でした。現在活動している投資家のほとんどは、当時投資しておらず、生まれていなかった人もいるでしょう。

ラッセル・インベストメントは、リスクツールの重要性がこれまで以上に高まっていると考えています。現時点でポートフォリオにコモディティを多く組み入れるべきだと言うのは簡単ですが、それでは過去8年間にわたってコモディティのパフォーマンスが一貫して悪かったという事実を無視することになります。これまでの10年間にわたり、パフォーマンスがトップの資産クラスは毎年変化してきました。

コモディティ価格は、イメージの悪化や再生可能エネルギーへのシフトにより、長年にわたり低迷していました。その間、低金利環境は銀行などのバリュー株にとっては逆風でしたが、社会のデジタル化に貢献するテクノロジー企業の台頭を促進しました。現在のような形勢逆転が起きるとは、誰も予想していなかったことでしょう。

勝ち組は入れ替わります。ある年に正しい銘柄を選べたとしても、将来も成功する保証はないのです。単一の資産クラスに投資している投資家は、風向きの変化には弱い可能性があります。

結論

特定の資産クラスや運用機関のパフォーマンスが他を上回ると確信できれば、それに賭けることも大事ですが、バランスは欠かせません。長期的な成功とは、一つのシナリオだけでなく、複数のシナリオにおいて優れたパフォーマンスを発揮できる、弾力性のあるポートフォリオを構築することを意味します。

一つの籠にすべての卵を盛っても、しばらくは問題ないかもしれません。しかし、市場が反転した場合(市場はやがて必ず反転するものです)、適切な分散を施していなければ深刻な影響を受けます。戦略的な分散化アプローチでは、短い投資期間でトップのリターンを上げることは不可能かもしれませんが、最下位になることは回避できます。しかも、長期的に見れば、十分に分散化されたポートフォリオに投資することによって、過大なストレスを感じることなく目標を達成できる可能性は非常に高いでしょう。