プライベート・マーケット投資におけるファンド・オブ・ファンズ活用の効果
以下は、2024年4月18日にラッセル・インベストメント(米国)のHPに掲載された英文記事を翻訳したものです。原文は こちら。
概要:
- 機関投資家がプライベート資産への投資でファンド・オブ・ファンズを活用すれば、面倒な手間暇に一切悩まされることなく、堅固なオルタナティブ投資プログラムの恩恵を享受できると考えられます。
- ファンド・オブ・ファンズのアプローチを通じて、プライベート資産への投資メリットを享受できる一方で、プログラムの構築・維持といった手間暇から全面的に解放されます。さらにこの効果は、比較的少額のコミットメントであっても享受することが可能なのです。
- プライベート資産では、戦略間のパフォーマンスの良し悪しに大きなばらつきがあります。そのため、意図的に異なる戦略を組み入れることで、投資家はより安定したリターンパターンを享受することが可能です。
ドラッグレースで、1/4マイル(約400メートル)を10秒以下で走るにはどうしますか? オプション1:古いフォード・マスタングを買ってきて、自宅ガレージで何年もかけてドラッグレース仕様に改造する(ただし、資金、道具、技術、自動車メカニックのスキルがあり、リスクを管理できることが前提)。
オプション2:単純にテスラのモデルSを購入する。販売店でこの車を購入すれば、何一つ改造しなくても1/4マイルを9.23秒で走ることができ、極めて簡単に目的を達成することができます。また、レースに勝利した後でも、(公道を使って)学校に子供を迎えに行くこともできるのです。
プライベート資産のポートフォリオ構築は、レーシングカーを製作するのと同じくらい難しく、複雑に思えるかもしれません。ファンド・オブ・ファンズのアプローチはよりシンプルで、手間をかけずにオルタナティブ投資のメリットを享受することが可能です。販売店で購入したテスラ車同様、鍵を回すだけで使える状態と言えるでしょう。
プライベート・マーケット投資の効果と手間暇の比較
周知のごとく、プライベート資産への投資では、リターンの向上、幅広い投資機会へのアクセス、高い分散効果といった特徴が存在します。同時に投資がより複雑になることでも知られており、以下のような検討事項があります。
- どうすれば適切なマネージャーやファンドを選ぶことができるでしょうか?
- どうすれば最上級の投資機会にアクセスできるでしょうか?
- プライベート資産に振り向ける投資金額は十分ですか?
- どのビンテージ・イヤーを選ぶべきでしょうか?
- どのようにリターン源泉を分散すればよいでしょうか?
- 低流動性リスクをどこまで許容できますか?
- 分配金の取り扱いをどうしますか?
多くの検討事項があることは事実ですが、その効用は大変魅力的と言えるでしょう。
問題は、複雑性や手間暇に悩まされることなく、機関投資家が堅固なオルタナティブ投資プログラムの恩恵を享受するにはどうすればよいか、というものです。
そしてファンド・オブ・ファンズの活用が、その回答になり得ます。
プライベート・マーケット:投資対象を見つける方法とは?
現在、プライベート・マーケットの運用資産総額は13兆1,000億ドル以上に達しています(出所:マッキンゼー、2023年6月30日現在)。また、ファンド数は2000年の1,551から2023年には12,500にまで増加しました(出所:ケンブリッジ・アソシエーツ)。それでは、こうした市場拡大がもたらす実質的な影響は何でしょうか?それは、投資家が適切な機会にアクセスするために、専門知識、規模、グローバルなリソースが必要になったということです。
- 投資機会の特定 –何千もの潜在的な機会を選別し、最適な機会を見つけ出すスキルと能力が求められます。
- 評価 – 適切な機会を特定した後、投資機会の質を見極め、ポートフォリオ全体への適合性を判断しなければなりません。
- アクセス – 適切な機会を見つけるだけでは不十分です。トップ・パフォーマンスのファンドにアクセスするためには、往々にして相当の購買・交渉力が求められます。
投資家はこれら全てを自力で試みることもできます。あるいは、一流のファンド・オブ・ファンズ提供者と協力し、課題をプロバイダーに解決させることもできるのです。
また、運用機関の選択はファンドのパフォーマンスにとって極めて重要です。投資家は、オルタナティブ投資のパフォーマンス格差について、伝統的な株式や債券に似ているといった誤解があります。プライベート市場のファンドにおける、過去の上位4分の1と下位4分の1のIRRの格差は25.24%*にも達しています。だからこそ、優秀なファンド・オブ・ファンズ提供者は、優れたリターンを獲得し、下方リスクを最小化するために、運用機関のリサーチに特化しているものと考えています。
ファンド・オブ・ファンズ:オルタナティブ投資プロセスの簡素化
有意義なオルタナティブ投資プログラムを社内で構築するために何が必要かご存じでしょうか?それは、投資専門家の採用、独自デューデリジェンスの実施、運用機関の選定、継続的なモニタリングや報告プロセスの構築、法務費用、資金管理などが必要になります。
弊社は、多くの投資家にとってファンド・オブ・ファンズが優れたアプローチであると考えています。ファンド・オブ・ファンズという投資ビークルを通じて、運用機関の選定、ポートフォリオの構築、継続的なモニタリング、投資デューデリジェンス、法務レビュー、運用報告など、すべての投資機能が第三者機関によって管理されます。プライベート資産の投資プログラムの効果を享受できる一方で、プログラムを構築、維持する手間から全面的に解放されます。さらに、比較的少額のコミットメントでも、このような効果を享受することが可能なのです。
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出所:ラッセル・インベストメント
以下の点を具体的に比べてみましょう。
解約– プライベート市場における典型的なファンドでは、マネージャーが原資産を売却する毎に資金が返還されますが、そのタイミングを事前に予測することはできません。運用期間に上限がないエバーグリーン・ファンドの場合でも、投資家が解約を請求できるまでに、ロックアップ期間を7年に設定されていることがあります。ファンド・オブ・ファンズの中には、ロックアップ期間を0~2年にまで短縮しているケースもあります。
リバランス – 通常のファンドの場合、リバランスは困難です。一旦投資を行うと、セカンダリー・マーケットでファンドの持分を(通常は公正価値より割安な価格で)売却しない限り、継続的に当該ファンドに投資し続けることになるからです。エバーグリーンのファンド・オブ・ファンズの場合、投資家はリバランスのために四半期ごとの解約が可能となるため、ポートフォリオ全体の中で望ましいウェイトに合わせることも容易になります。
エクスポージャーのスピード –有意義なエクスポージャーを達成するまでに、通常のファンドでは最長5年かかることがあります。ファンド・オブ・ファンズであれば、賢明なポートフォリオ構築やセカンダリー取引の活用によって、Jカーブを大幅に短縮することが可能です。
コミットメント計画 – 典型的なファンドでポートフォリオを構築する場合、コミットメント計画を毎年策定する必要に迫られます。そのためには目標配分を達成するために必要な投資金額とコミットメントのペースを設定します。この計画策定は、非常に複雑になる可能性がある一方で、ファンド・オブ・ファンズであればコミットメント計画は最小限に抑えられます。
キャピタル・コール - キャピタル・コールはドローダウンとも呼ばれ、マネージャーが必要に応じて投資家に資金拠出を要求することです。ビンテージ・ファンドでもエバーグリーン・ファンドでも、投資家にとってキャピタル・コールの負担は大きく、また、予測も困難です。ファンド・オブ・ファンズでは、予測可能な四半期ごとのスケジュールでキャピタル・コールを行います。
分散化の特徴
前述のとおり、上位と下位のパフォーマンスには大きなばらつきがあります。意図的に異なる戦略を組み入れるファンド・オブ・ファンズのアプローチは、投資家に対してより安定したリターンパターンをもたらします。ファンド・オブ・ファンズ(特に、規律あるポートフォリオ構築プロセスを有するファンド・オブ・ファンズ)を利用することにより、下方リスクを効果的に管理することができます。
下図を見ると、ある資産クラス(この場合はプライベート・クレジット)において、単独のファンドでは明らかに特定のエクスポージャーに限定されていることが分かります。一方、ファンド・オブ・ファンズは、複数の地域やサブセクターにまたがる多様なエクスポージャーを提供できる上に、各分野において厳選された高いスキルを有したスペシャリストを起用することもできるのです。
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上記はイメージ図であり、現実を忠実に反映したものとは限りません。
出所:ラッセル・インベストメント
結論
新たにオルタナティブ投資を行う投資家とラッセル・インベストメントが交わす典型的な会話は単刀直入です。
「プライベート資産のメリットが欲しいと思っているかもしれませんが、それに伴うストレスや、管理上の負担に圧倒されるかもしれません。レースに勝ちたいと思っているでしょうが、ゼロからレースカーを作ることはできますか?」
ファンド・オブ・ファンズのアプローチは、手間をかけずにオルタナティブ投資の効果を享受することが可能な、非常にシンプルなソリューションになり得ます。一言でいえば、「ただ鍵を回すだけ」で使えるのです。
運転席に座り、キーを回して出発しませんか。
*出所:Pitchbook