2020年第2四半期(4-6月期) 株式運用機関レポート:IT(情報技術)株が市場を牽引

以下は、2020年7月30日にラッセル・インベストメント(米国)のHPに掲載された英文記事を翻訳したものです。原文はこちら

IT株が拍車をかけた株式市場の回復は他のセクターに波及し始めているか?

3月下旬に始まった株式市場の回復が拡大している兆候が見られるものの、市場の回復は新型コロナウイルスのパンデミックで加速したデジタル化とEコマースの恩恵を享受するセクターの株式が主に牽引する状況が続いている。ITと一般消費財セクターは2020年第2四半期(4-6月期)中、主要地域で堅調に推移し、素材セクターも堅調な回復を遂げた。一方で同四半期中、金融セクターや、消費財、公益などのディフェンシブセクターは低迷した。

財政および金融刺激策とロックダウン緩和の世界的な広がりに加え、金融市場が無差別に暴落したと広く認識が進んだ中、第2四半期は力強い市場の反発が特徴的だった。この結果、主要株式市場では絶対リターンが大幅にプラスとなった。

概して、第2四半期はカナダ、米国大型株および世界株式を投資対象とする運用機関にとって厳しい環境となったが、新興国市場、欧州、英国、日本、米国小型株およびオーストラリア株式を投資対象とする運用機関にとっては比較的好ましい環境となった。米国におけるマーケットのリーダーシップが引き続き限定的となる中で、テクノロジーの比重が高い少数の株式グループが市場のリターンを占有するなか、運用機関にとってはアクティブ運用がより難しい局面となった。

グロース株運用機関は、大手IT企業ならびに消費者企業のポジションを概ね維持してきた。一方、バリュー株運用機関は引き続き極端なバリュエーションの格差に注目し、堅牢なバランスシートを有する一方、底値で取引されており魅力的なビジネスを有していると判断される株式への銘柄入れ替えを行っている。

グロース、モメンタムおよび (やや程度は劣るが)クオリティ銘柄は第2四半期も引き続き大半の地域でパフォーマンスに影響を及ぼした。同四半期の期初にはバリューの回復があったものの、多くの市場でこれは短期的なものに終わった。一方、このような リスクオン 環境で予想されていた通り、低ボラティリティはその他のファクター投資を大幅にアンダーパフォームした。

総じて、市場は活況を呈し、リスクテイクの志向が戻ったにもかかわらず、新型コロナウイルスに伴うロックダウンが経済および企業に及ぼす影響や、英国のEU離脱および米国大統領選挙を巡る不透明感が行く手に控えており、多くの運用機関は2020年下半期に入ってもこの点では警戒を解いていない。

こうした不透明感が払拭されないなか、ラッセル・インベストメントが有する運用会社との特色のある関係から得られる独自性があり先見性のある専門家の見解に触れるのに、今以上に適した時期はないと考えられる。本稿は、世界の主要な地域にわたる幅広い株式運用における専門家からの主要な戦術的見通しを共有するためのものである。

オーストラリア株式

景気敏感株へのティルトを継続

  • 運用機関は経済活動の増加から恩恵を享受するセクターへポジティブ・ティルトを維持しており、素材およびエネルギーをオーバーウェイトにするのが大勢である。運用機関は原油および鉄鉱石の需要をポジティブに評価しており、オーストラリアの鉄鉱石生産が新型コロナウイルスの影響により中断されていないことに注目している。オーストラリアの消費関連企業も好まれているが、運用機関がクオリティについて十分であると判断していることが前提となっている。

銀行株のアンダーウェイトが縮小

  • 景気敏感株へのポジティブな見方と一致し、運用機関は四大銀行に対するアンダーウェイトを減らしている。オーストラリアの国内経済に対する高いレバレッジに加え、これらの銀行銘柄には割安感があると運用機関は考えている。不良債権関連費用が増加すると見込まれるものの、現行の株価水準はこれを充分織り込んでいると運用機関は考えている。

カナダ株式

バリュー株運用機関はクオリティとディフェンシブ性の高い銘柄にシフト

  • バリュー株運用機関のアプローチには変化が見られ、優れた財務体質およびディフェンシブな事業モデルを有する株式に投資するようになってきている。運用機関は伝統的な絶対バリューアプローチよりも相対バリューアプローチを好むようになってきており、さらに、配当利回りよりも収益や配当の成長可能性を重視している。

グロース株運用機関は予測可能性を強調

  • 景気不透明感が持続するなか、グロース株志向のアクティブ運用機関は第2 四半期に力強い反発を見せた、よりシクリカルな成長株で利益確定を行い、より堅牢な事業モデルと収益の可視性のある株式にポジションをシフトしている。運用機関は新型コロナウイルス 危機のインパクトが相対的に低いと考える一般消費財セクターの株式にシフトを進めている。

新興国株式

グロース株運用機関はテーマに沿ったベットを固める

  • 最近のロックダウンの結果、クラウド、Eコマース、決済およびソフトウェア企業を起点とする混乱のペースが加速し、運用機関はこの様な環境下で長期的な勝者と新たな機会への投資を追加した。

バリュー株の反転はバリューとクオリティへの投資機会を提示

  • 選択的に資本力が十分ながら世界金融危機 (GFC) 時のバリュエーションの水準近辺まで株価が落ち込んだ銀行株は、バリュー株運用機関にとって戦略的な投資機会を提示している。ディープバリュー株運用機関はエネルギーセクター内でロシア企業のような低コストの生産者に入れ替えを行った。クオリティを志向する運用機関にとっても、通貨価値の下落は、より魅力的なバリュエーションと、新たな投資機会を提供した。

マーケット・オリエンテッド型(市場型)の運用機関はやや楽観的

  • 新型コロナウイルス への根強い懸念から、観光業やシクリカルな成長エリアでは正常化ペースが遅延している。運用機関はサプライチェーンの混乱により中国の代替企業が恩恵を享受していることや、香港での株式市場における金融活動の高まりにも注目している。

欧州および英国株式

V字回復への期待

  • 欧州の産業データは今やV字回復を示唆している。投資家は依然として新型コロナウイルスの第二波について懸念しているものの、以前よりは前向きであり、欧州における財政出動が予想を上回ると考えている。金融市場がより穏やかな世界のリスクシナリオを織り込み始めると見ていることから、クオリティの高い景気敏感株が恩恵を享受すると考えている。

ブレグジットが再び議題に

  • 移行期間の延長を求める期限が過ぎた (移行期間は2020年12月31日に満了) ことから、ブレグジットのリスクが回帰し、英国は世界市場に大幅に劣後した。これにより英国市場で相対的に魅力的なバリュエーションの投資機会が増大した。

グローバル株式

バリュー株のサブ・スタイルにより明確なパフォーマンス格差

  • バリュエーション・スプレッドからバリュー株の中でもサブ・スタイルのポジショニング効果が明らかになった。ディフェンシブで利回りに焦点を当てたバリュー株は、第2四半期に大きく劣後した。伝統的なディープバリュー株は、標準的なインデックスに劣後したが、資産ベースアプローチの中にも明るい兆しはあった。素材株のエクスポージャー、特に貴金属へのそれは年初来恩恵を享受している。一方、フォワードルッキングまたは本源的バリュー株(高いキャッシュフローを稼ぐテクノロジー企業を含めることが可能)は追い風を受けている。

リーダーシップに変更なし:パンデミックはオンライン企業に有利

  • 市場は引き続きパンデミックの恩恵を享受する少数の一般消費財とテクノロジー企業の株価に牽引されている。これらが引き続きマーケットをリードし、その勢いが収まる兆しはほとんどない。

自動車、電気自動車とテスラについて運用機関の見解は分かれる。

  • テスラにはモメンタムが強いものの、バリュー運用機関は高級自動車メーカーの電気自動車のモデルプランとバリュエーションに魅力を感じ始めている。

日本株式

グロース株運用機関のメッセージはまちまち

  • 一部のグロース株運用機関はバリュー企業へのエクスポージャーを一段と削減し、モメンタムグロース株のポジションへシフトまたは追加を実施した一方、他の運用機関はバリュエーションが割高な株式を削減した。

バリュー株運用機関は選択的にシクリカルなエクスポージャーを追加

  • 第2四半期中、バリュー株運用機関は相対的にアウトパフォームしたポジションを削減し、シクリカルな出遅れ銘柄に入れ替えた。景気後退の可能性をめぐる懸念から、運用機関は選択的に比較的堅牢なバランスシートや強力なフランチャイズを持つ企業のポジションを拡大した。

マーケット・オリエンテッド型(市場型)の運用機関はバリュー株のエクスポージャーの削減を継続

  • マーケット・オリエンテッド型の運用機関の多くはクオリティの高いグロース株のポジションを維持する一方、バリュー株のポジションの削減を継続した。マクロの見通しはまちまちだが、運用機関の多くはバリュー株がアウトパフォームするには比較的長い時間がかかると考えている。

リアル・アセット

グローバル不動産運用機関

  • 純資産価値 (NAV) に対する価格ベースで、すべての地域でNAVに対して大幅に割安な水準で取引されていると考えている。特に香港と英国の不動産企業は最も大幅な割安価格で取引されていると見ている。
  • 運用機関は賃貸用住宅など現状の制限による恩恵を享受する不動産セクターや Eコマースの受益者、ディフェンシブ/必需品ベースのセクターなどにティルトする一方、景気敏感セクターやファンダメンタルズが悪化しているセクターのアンダーウェイトを維持している

グローバル・インフラストラクチャー運用機関

  • 北米のエネルギー生産は減少傾向となり、中流部門にあるエネルギーの長期的需要に影響を及ぼしている
  • 公益では、世界的な脱炭素化のトレンドが風力、太陽光(ソーラー)、電池貯蔵および送電への投資の力強い伸びを牽引している。

米国大型株式

バリュー運用哲学を有する運用機関の伝統的な相対バリュー(レラティブ・バリュー)アプローチに変化

  • 運用機関は以下を目安に銘柄選択の機会を特定している。
  • 固有のクオリティとディフェンシブ性
  • グロース特性の過小評価
  • イベント・ドリブンのカタリスト
  • バリューセクターの中で、運用機関は優れた収益性、競争優位性を持つ株式を求めている。

グロースの運用機関は明確な長期的トレンドのある環境下で優れた銘柄選択機会を確認

  • 運用機関は、Eコマースやソフトウェアのような明白な成長トレンド以外で、伝統的産業において強力なデジタル能力とブランディングを有し、新型コロナウイルス危機の間に市場シェアを拡大させた力強いオンライン面における存在感ある企業に極めて大きな投資機会があるとみている。
  • 運用機関はヘルスケア株のセンチメント改善を見込む。

米国小型株

グロース株運用機関はテクノロジーへの信頼を保持

  • 今年のテクノロジー・セクターの好調な推移にもかかわらず、グロース株運用機関はエクスポージャーをわずかに削減しただけである。
  • 同市場のシクリカルな領域の中では、グロース株運用機関がオーバーウェイトにしているもうひとつのセクターは引き続き資本財である。一方、一般消費財については戦術的なスタンスを維持している。

バリュー株運用機関は景気回復に備えている

  • バリュー株運用機関は経済の再開が始まれば繰延需要があると見込んでおり、バランスシートのクオリティと魅力的なバリュエーションの組み合わせを探している。ディープバリュー株運用機関は航空会社やレストランなど打撃の大きかった領域のポジションを追加している一方、レラティブ・バリュー運用機関は資本財や素材セクターにより投資機会を見出している。

運用機関はエネルギーと金融株には慎重

  • 第2四半期に反発したにもかかわらず、エネルギー株への懐疑的な見方は残っている。利鞘や貸出の伸びに対する逆風により、金融株についても同様である。

結論

株式市場は第2四半期の歴史的な反発で損失を大幅に取り戻したと考えられる。しかしながら、世界の一部における新型コロナウイルス感染拡大の第二波と今後控える米国大統領選挙や差し迫ったブレグジット移行期間の終了により、向こう数カ月間も不透明感が持続すると見ている。

このような時期においては、スペシャリストとしての運用機関の考え方を継続的に注視することは重要と考えている。ラッセル・インベストメントは今後も運用会社ユニバ―スからの最新の見解をお伝えしていく予定である。

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