2021年第3四半期(7-9月期)株式運用機関レポート:インフレ懸念は運用機関の見解にどう影響を及ぼすのか?

以下は、2021年10月28日にラッセル・インベストメント(米国)のHPに掲載された英文記事を翻訳したものです。原文は こちら。内容は作成時点のもので今後市場や経済の状況に応じて変わる可能性があります。また、当見解は将来の結果を保証するものではありません。

インフレ懸念の高まりから、運用機関は数か月先のボラティリティの上昇に備えているのだろうか?

その答えは イエスだ。ラッセル・インベストメントは、2021年第3四半期の状況について、世界の主要な市場と株式分野における株式運用機関への調査を行った。

今回の四半期株式運用機関レポートでは、各運用機関は世界的な経済回復の道筋については引き続き楽観的ではあるものの、2021年の年末にかけてボラティリティが上昇するものと予測している。これは主に、インフレが長期化していることと、サプライチェーンの問題が解決していないことによるものである。インフレが長期化していることによって、金利は思いの外早い時期に引き上げられるとの予測が膨らみ、これによって今後の経済成長に対する懸念も生まれてきている。各運用機関はこの他にも、中国の情勢、とりわけ経済成長の減速、 恒大集団のような多額の債務を抱える不動産デベロッパーが破綻した場合の悪影響、 そして最近の中国政府による相次ぐ政策判断に対して懸念を口にしている。最終的には、各運用機関は成長機会、バリュエーション、今後のリスクを考慮して、ますます選択的になるものと見られる。

総じて言えば、第3四半期は株式運用機関のパフォーマンスはかなりまちまちの結果となった。ファクターよりも地域によって大きな差が生じることとなった。新興国株、米国大型株、米国小型株、欧州株、英国株、オーストラリア株、カナダ株、日本株にとって市場環境は良好だったが、グローバル株および米国を除くグローバル株にとっては難しい環境だった。各地域の中で特に際立ったファクターはなかったものの、概してバリュー、モメンタム、クオリティ、低ボラティリティの各ファクターが、グロースファクターのパフォーマンスを上回った。上記についてはいくつかの例外もあり、例えば米国大型株についてはバリューとグロースの両ファクターが振るわなかった。

エネルギー価格が上昇する中、セクター別ではエネルギーセクターのパフォーマンスが最もよく、金融セクターがこれに続いた。一方では、一般消費財・サービス、コミュニケーションサービス、素材の各セクターが不振だった。当レポートでは、引き続き好調であった循環株へのエクスポージャーを削減している運用機関があることも見て取れる。このような運用機関は、どこに集中して投資を行うかについて、より選択的になっている。

本レポートは、ラッセル・インベストメントが運用機関との間に築いた独自の関係を活用して、運用機関のスペシャリストの見解を読みやすい形にまとめたものである。2021年第3四半期の世界の主要な株式市場と地域について、主な戦術的見通しを以下で紹介する。

オーストラリア株式

インフレ期待が上昇

  • 各運用機関は、サプライチェーンの問題が解消されてもインフレは持続するだろうと見ている。一部の運用機関は市場予測よりもインフレは早期に発生し、かつ高い水準になると予測する者もいる。彼らは、金利上昇がさらなるインフレの呼び水となると考えている。中央銀行と政府にとって国家債務に対処する上で、高いインフレ率のほうが都合が良いであろうという見解である。

景気循環株偏重型のポートフォリオは不変

  • インフレ期待が高まる中でも、株式運用機関はこの四半期中ポートフォリオの変更をほとんど行っていない。多くのポートフォリオは、経済活動再開によって恩恵を受ける企業、特にエネルギー、資本財、素材関連企業を偏重する形を変えていない。オーストラリア国内におけるロックダウン後の経済再開に当たっては、このような循環株偏重のポートフォリオにとっては追い風となるであろう。
  • ボトムアップ・アプローチによる銘柄選択に基づき、かつ景気循環株重視、インフレ率上昇予測とも相まって、各運用機関は石油やガスの価格が上昇しているにも関わらず、エネルギー関連銘柄への投資を維持している。
  • 運用機関の中には、コモディティ価格の最近の急騰を受けて、鉄鉱石関連銘柄に対するアンダーウェイトのスタンスを弱める者もいる。
  • 各運用機関は、恒大集団や中国の政策に関する問題が上場企業の株価に与える影響について、過度の心配はしていないようだ。中国共産党はこの影響を適切にコントロールするものと信じているからである。

ESG関連が大きなテーマに

  • 8月の企業決算発表期には、ESGが大きなテーマとなったと認識している。企業がこれまで以上に気候変動問題に対する詳細な情報を提示していたからである。同時に、彼らは数年前に比べて、市場がESGに不利な問題に対してより素早く反応するようになったと感じている。市場は「a sell first, ask questions later(質問する前にまずは売却)」 といったアプローチをとっており、これによって、投資機会が増えると見ている。

カナダ株式

サプライチェーン問題によって、景気敏感株の目先は暗いが、投資機会にも

  • 多くの企業の業績見通しが第4四半期に引き下げられると見ているが、グロース株重視のアクティブ運用機関は、成長率の低下は需要よりも供給側に原因があると考えており、資本財セクターにおいては選択的な投資機会があると見ている。

カナダ製ソフトウェアにブーム到来

  • 新規株式公開(IPO)のパイプラインにいる企業の約7割がテクノロジー関連で、旧来の成熟したハイテク企業やショッピファイといった銘柄よりセクターが拡大している。
  • とはいえ、カナダの投資家は一般に保守的な気質で、急成長企業よりも手堅く収益を増やす企業を好むことから、近いうちにこれらの企業への投資に参入することはないと考えられる。
  • 数少ない規模が大きく、かつ安定したカナダのハイテク企業は、希少性により高マルチプルの株価をつけているものが、投資家にとって新たな選択肢となる銘柄が市場に参入した際には、マルチプルの縮小圧力を感じることになるかもしれない。

経済成長が初期サイクルから中期サイクルへ移行する中、セクターとスタイルのローテーションがみられる

  • マクロ指標の減速からボラティリティが上昇する可能性が高く、アクティブ運用機関にとってはポートフォリオのポジションを景気循環銘柄からディフェンシブ銘柄へシフトさせる機会になる。テーパリングの開始も相まってクオリティへの注目は続くことになりそうだ。

コモディティ市場の見方はまちまち

  • コモディティ関連業種は高インフレ率の恩恵を受けるが、多くの運用機関はコモディティ価格の上昇余地は限られていると見ている。各運用機関は最も景気循環的な業種のアンダーウェイトを継続するだろう。
  • 市場参加者は環境にやさしく、配当成長といった株主にもやさしいキャッシュフロー計画を行うような石油業者に注目している。

新興国株式

中国市場のリスクと投資機会

  • 運用機関は、中国市場の消費者に関わるテーマとして、政府規制強化への過剰反応と、新型コロナウイルス終息後の目に見える回復への道筋の2点があると考えている。
  • 各運用機関は、恒大集団の影響が波及することについてはあまり懸念していない。また、成長減速懸念が台頭すれば、新たな金融緩和策によってハードランディングは避けられると楽観的な見方をしている。
  • 高級品製造業や再生可能エネルギーといった業種は成長の初期にあり、中国政府の政策からも高い恩恵を受けることから、投資家にとっては引き続き魅力的である。

新型コロナからの回復状況の再評価

  • 各運用機関は、最近ワクチン接種率が上昇してきたインドの景気回復恩恵銘柄への投資がみられた。自動車、一般消費財、機械といった業種が、労働者の移動制限緩和の恩恵を受けると見ている。
  • 市場は回復し始めており、ポジティブなセンチメントが散見し始めた。特に、復活の兆しが見え始めた、アセアン諸国に対象がシフトしている。一方で、中国本土の観光業は再開が遅れている。
  • ブラジルでは、政治不安、自国通貨安、インフレ抑制のための政策金利の引き上げによって、市場センチメントはネガティブになっており、ワクチン接種率が引き続き上昇する中、経済活動再開銘柄への投資が遅れている。

技術革新は続

  • インドのIT企業は、多くの企業がクラウドコンピューティングやアウトソーシングへのシフトを進める中、デジタルトランスフォーメーションの進展により恩恵を受けている。
  • アジアのハードウェア・テクノロジー企業の株価は、半導体不足や中国経済の減速により、価格調整段階に入ったようだ。SME(半導体製造装置)の部品や、特殊半導体メーカーは、インフラのデジタル化を押し進める中国国内の政策的な支援から恩恵を受けている。

インフレ期待はややポジティブ

  • 足元のインフレ率は低調なものの、各運用機関は銀行株への追加投資を行っている。
  • 韓国市場では、好調な輸出、住宅価格の上昇、融資残高の伸び率の加速などから、センチメントが改善している。
  • タイトな需給環境と価格上昇を受けて、銅、コバルト、ニッケル、石油などの生産者の収益見通しも改善している。

欧州および英国株式

インフレ期待が上昇

  • インフレが一時的なものか、それとももっと根深いものなのかという議論については、運用機関の間でも見解が分かれている。それは別として、運用機関の中にはインフレ対応策として、実物資産、鉱工業、住宅建築業、素材、エネルギーへのエクスポージャーを増やす動きが見られる。

ローテーション: グロースからバリューへ、ディフェンシブからシクリカルへ、ITからその他へ

  • バリュー株は過去最安値の水準に近づいており、バリュー株内での二極化は引き続き大きい。強固なサプライチェーンを持ち、バランスシートも健全で、対応力のあるビジネスモデルを有する企業については、上昇余地は大きいと見られる。

欧州:EPS (1株当たり利益) 予測、2022年も低調

  • 各運用機関における市場コンセンサスは、現在の企業収益の回復傾向は短命で、2022年のEPS予測はこれまでの平均値を下回り、GDP成長予測には見合わないものとなっている。

欧州:ディフェンシブ株がアウトパフォーム

  • 債券利回りの低下が債券代替銘柄の追い風となったものの、欧州全体(特に割安な市場)に広範な成長が根付くことから、持続的なアウトパフォーマンスは難しいと見られる。

英国:配当復活の傾向拡大

  • 英国市場は引き続き、世界で最も配当利回りの高い市場である。同時に、英国株式は相対的にも絶対的にも割安であることから、投資資金が集まりつつある。英国市場における企業買収も増加するものと見られる。

英国:金融、鉱工業、石油

  • 運用機関の中には、債券利回り上昇の恩恵を受ける金融などの循環バリュー株へのエクスポージャーを増やす者もいる。また、コモディティ価格の上昇を見込んで、鉱工業や石油関連銘柄への投資も行っている。

グローバル株式

マクロ関連が改善期待をドライブ

  • 新型コロナウイルス、インフレの長期化、需給の逼迫、財政政策と規制の不透明さといった問題が、引き続き主要なテーマとなっている。
  • 概して言えば、各運用機関は経済回復やグローバル株式市場の成長についてはポジティブだが、回復の性質が不透明なままであることから、ボラティリティの上昇に対して警戒している。運用機関の中には、足元で好調であった景気循環株へのエクスポージャーを減らす者も見られた。

経済回復関連銘柄によりポジティブに

  • 新型コロナウイルスやデルタ変異株の感染状況に引き続き改善が見られることから、景気回復は進むと見られる。
  • 各運用機関が、世界各地の景気回復銘柄において強気になる理由は様々である。欧州のワクチン接種率や貯蓄率は高く、米国においてもデルタ変異株によるネガティブな影響はピークアウトしたものと見られる。一方、新興国市場は経済回復で後れを取る懸念も織り込まれることから、割安となっている。主要国が再びロックダウン・モードに突入すると考える運用機関はほとんどいない。

インフレ圧力、当面続く

  • 各運用機関は、インフレはある程度の期間続くものと見ており、金利が上昇圧力にさらされる中、金融業は恩恵を受ける好位置にあると見ている。
  • 供給および船舶運送上の問題、賃金の上昇、消費者貯蓄の上昇から来るモノへの需要の増加といった問題はしばらく続き、加えて政府の財政政策(減りつつあるとはいえ、現時点ではまだプラス)が拍車をかけている。逆にこのような要因が改善に向かうと予測している運用機関でさえ、市場への影響はあと数四半期は続くものと見ている。

中国規制リスクは過剰反応

  • 各運用機関は依然として、ここ数か月間中国市場に悪影響をおよぼした規制についての不透明さに対して警戒心を解いていない状態だが、現在では多くの運用機関が中国株は売られ過ぎと考えており、この地域において選択的で魅力ある投資機会を探している。
  • 彼らは規制圧力が強化された後に回復期が来ると主張しており、制度を補強する中国政府の能力と意欲の高さに自信を持っている。

日本株式

スタグフレーション懸念、徐々に上昇

  • バリューおよびマーケット・オリエンテッドの運用機関は、コモディティ価格の上昇や労働力不足によって、インフレ圧力が今後も続くことを見込んで、金融株に対するエクスポージャーを維持、ないし積み増した。彼らはまた、ここまでパフォーマンスの良かった、製造業の景気循環株に対するエクスポージャーを徐々に削減している。
  • グロース運用機関の中には、利上げ観測から、バリュエーションの高い銘柄のポジションを削減している。彼らは長期的なファンダメンタルズの強さを勘案した上で、金融引き締めによる株価調整後が魅力的な再投資機会になると確信している。
  • 多くの運用機関は、経済活動の正常化がインフレ圧力を緩和することになるかどうか見守っている状況だ。

経済再開関連株に投資妙味

  • ワクチン接種率が高まるとともに、新型コロナウイルス感染者も減少しており、この状況が国内の経済活動にポジティブに働くものと見られている。
  • バリューおよびグロース株運用機関はともに、国内非製造業者などの、経済再開で恩恵を受ける銘柄へのシフトを行いつつある。
  • サプライチェーンのボトルネックは、徐々に緩和されるものと見られ、自動車をはじめとする世界的な製造業者が受けてきたネガティブな影響も改善されるものと見られる。

中国規制リスクに対しては静観

  • 各運用機関とも、中国リスクついてはある程度意識しており、同国に対して大きなエクスポージャーを持っている企業に対しては、より大きな割引率を適用している。
  • アンダーパフォームしたこれらの企業はバリュエーションがより魅力的であるとして、多くの運用機関はこれらの企業に対するエクスポージャーを維持している。

東京証券取引所(TSE)の改編、企業のガバナンス改革を先導

  • 東京証券取引所(TSE)は来春、現在の5部制を3部制に再編する予定である。プライム市場は、上場企業にガバナンスや流動性の基準を適用させる。当落線上の上場企業はこの基準を満たすため、これを機により改善を図ることから、投資家にとっては良い機会となるだろう。

リアル・アセット

パンデミックで不動産の長期的なトレンドが加速

  • 生活関連 - 借家・アパート等住居不足
    • 賃金・雇用上昇
    • 住宅取得能力が足かせ
  • 医療関連 - 高齢化社会:高齢者向け住宅/ライフ・サイエンス
    • ワクチン接種後のファンダメンタルズ改善
    • 人口構成とニーズに基づく好条件によって、新型コロナ前の、あるいはそれを超える水準に、数年をかけた回復が進む
  • 流通関連 - eコマース:物流/特定小売
    • 供給に制約のあるインフィル・ロジスティックスへの需要
    • 制限緩和に伴い、小売業・リース業が回復傾向
    • ショッピングモールに対して、生活必需品中心の屋外小売店が優位に

不動産ファンダメンタルズが改善傾向

  • 空室率の低さ、低位から中位程度の供給量、補修コストの上昇、資本増強の容易さなど、ファンダメンタルズが改善し、不動産業にとっては追い風に。
  • 需要拡大を受け、不動産事業のファンダメンタルズは改善の兆しが見えており、収益見通しも透明性が高まると期待される。

資本、エネルギー、新型コロナでインフラの傾向が変わる

  • 私募インフラ・ファンドのドライパウダー(投資待機資金)が3,000億ドル以上(潜在的な取引額は5,000億ドル以上)あり、これがバリュエーションの底値を形成している。今年は約20件取引が発生し、そのうちのいくつかは異業種セクターで生じたテイク・プライベート(上場企業を私有化)であり、30~50%のプレミアムで取り引きされた。上場インフラ企業の多くは過小評価されている。
  • 再生可能エネルギーのコストは下落を続けているが、一方で再生可能エネルギーへの切替には、電力供給経路の再構築や、グリッドの最新化への投資が必要となる。
  • 天然ガスに対する需要は依然とし強い一方で、供給は制約されている。米国の液化天然ガス(LNG)のインフラ資産は、この恩恵を受けることになると見られる。

米国大型株式

経済活動再開は小休止

  • 第3四半期のデルタ変異株感染拡大によって、コロナ後の経済活動再開の恩恵を受けると目されていた消費関連株の上昇も一服となった。デルタ変異株の感染拡大は、バリュー、グロース双方の消費関連株への重しとなった。
  • 多くの一般消費財セクター銘柄の株価は、第3四半期の最終週には回復したが、コロナ後の経済再開に伴い、同セクターには引き続き十分な投資妙味が残っていると見られる。各運用機関は、今後も続く経済回復から恩恵を受けると予想される消費関連株に対し、確信度の高い銘柄のポジションを増やしている。

サプライチェーンのボトルネック

  • 各運用機関は、生産者耐久財セクターにおいて、成長見通しはほどほどに織り込まれた魅力的なバリュエーションであるとの見方をしている。一方で、資本財メーカーは世界的なサプライチェーンの分断によって需要を満たすのに苦労している状況だ。
  • サプライチェーンの問題は、2022年初頭まで続くと思われ、一時的に価格が軟調となる局面は、確信度の高い生産者耐久財セクター株のポジションを構築する良好な投資機会を提供すると見ている。

インフレ圧力、今後も続く

  • 米国株式の運用機関は、インフレ圧力は年を超えても継続するものとみている。各運用機関は、サプライチェーンが主導となる素材や商品価格のインフレについては、本質的に長続きしないものであるが、短期的には商品関連銘柄への追い風となると見ている。一方で、賃金インフレは長期化するリスクが高いとも考えている。
  • 価格決定力と高い収益性を持つ優良株は、高いコストを価格転嫁する能力があることから、選好されている。
  • 各運用機関は引き続き金融株を選好している。多くの金融機関はコロナ下において収益力を高めており、インフレ環境下での金利上昇の恩恵を受けると見られている。

米国小型株式

アクティブ運用に良いタイミング?

  • インフレが一時的か長期的かの議論が続く中、小型株運用機関は今がアクティブ運用の好機ととらえており、特にインフレ期には出遅れる小型株が狙い目、としている。
  • 小型株運用機関は、ボトムアップのファンダメンタルズ分析を基に価格決定力の高い企業をアクティブに入れ替えている。

インフレ率・金利の上昇に対応

  • 多くの運用機関はインフレ圧力が長く続きそうだという認識を持っている。バリュー株運用機関の中には、エネルギー株と金融株が有利と見てポジションンを取っている者もあり、またグロース株運用機関の中には、一般消費財から一時撤退しようとしている者もいる。

バリュー株運用、デルタ変異株リスク後退を予想

  • バリュー株運用機関はより景気循環的なポジショニングをとっており、例えば出張旅行やオフィス再開といった、デルタ変異株からの回復の波で恩恵を受ける業種に投資している。
  • 多くのバリュー株運用機関は資本財や素材セクターに投資機会を見出しているが、中には一般消費財に目をつけている者もいる。

クオリティ・グロース株運用機関は企業収益上昇に着目

  • グロース株運用機関は、自己資本利益率(ROE)の高い小型グロース株にはまだ上昇余地があると考えている。そのような株は前年出遅れたこともあり、またROEにおいては上位2割と下位2割ではバリュエーションで大きな差(株価売上高比率が1.6倍と13倍)があるからだ。

SPAC、マーケット・オリエンテッドやバリュー株運用機関が関心を示す

  • SPAC(特別買収目的会社)はこの半年間は人気がなかったが、バリュエーションにうるさいコア運用機関やバリュー株運用機関は、買収が終わった後のSPACについての調査を始めている。スペシャル・シチュエーションと類似した投資機会があると考えられている。

結論

多くの運用機関は経済回復が引き続き順調に進むと考えているが、インフレ率の上昇、サプライチェーンにおけるボトルネック、中国の経済成長減速によって、年末にかけて思いの外いばらの道となるとの予測が広がってきた。そのような状況下で、ボラティリティとオポチュニティの両方を活用するに当たって運用機関のスペシャリストの見解は重要なものと考える。年末も近づいてきたが、当社では今後も引き続き洞察をお届けする予定である。