関税ショック:ポートフォリオの変更は必要か?

以下は、2025年3月5日にラッセル・インベストメント(米国)のHPに掲載された英文記事を翻訳したものです。原文はこちら

主なポイント

  • カナダとメキシコは、米国の関税に対し慎重にバランスを取りながら報復措置を講じている
  • 米国のトランプ大統領は関税を交渉の手段として捉えていると考えられる
  • 現時点では、投資家がポートフォリオを変更する必要はないと考える

米国によるカナダおよびメキシコからの輸入品への関税が発効したことで、市場のリスク回避姿勢は昨日に続き今日も継続しています。カナダと米国の株式市場は共に小幅な下落となりました。


報復措置のバランス

米国の主要な貿易相手国による報復措置は、慎重なバランスの上で実施されています。カナダとメキシコは、関税に対する不満と反対の意思を示しつつも、交渉の余地を残し、貿易摩擦を互いに有利な形で解決する道を探っています。

例えば、カナダは米国からの輸入品の一部に対して報復関税を課す方針ですが、その対象は米国の輸入品全体の約3分の1にとどまる見込みです。一方、オンタリオ州首相は電力輸出に限定して25%の輸出関税を導入しました。

中国も一部の農産品に最大15%の報復関税を課すと発表しましたが、追加の制裁対象となる米国企業の多くは防衛関連企業であり、中国市場への直接的な販売依存度は低いと考えられます。

メキシコ政府も対抗措置を講じる方針ですが、詳細は今週日曜日に発表を控えています。シェインバウム大統領は、週末にトランプ大統領との交渉で合意を模索する意向を示しています。


BeiChen Lin

現時点での当社の見解としては、市場の動向は投資家がポートフォリオを変更すべき水準には達していないと考えています。

BeiChen Lin, CFA, CPA
Senior Investment Strategist, Head of Canadian Strategy
Russell Investments


過去の教訓

関税が発動されたとはいえ、トランプ大統領は依然として関税を交渉の手段として見ていると考えられます。彼は選挙期間中に示唆していた「全輸入品への一律関税」を適用しておらず、中国からの輸入品に対する関税も60%へ引き上げることはありませんでした。

米国がさらなる関税措置を講じ、貿易摩擦を一段とエスカレートさせるリスクは依然としてありますが、一方で将来的に関税が緩和または撤廃される可能性も残されています。例えば、市場取引終了後にルトニック商務長官は、「早ければ明日にでも一部の関税を緩和する可能性がある」と発言しました。

現時点では、貿易摩擦の影響が最も大きいのはカナダとメキシコであり、米国や中国への影響は比較的限定的であると考えています。ただし、その影響の大きさは、関税がどれくらいの期間維持されるかに左右されます。関税が長期化すれば、カナダとメキシコ経済がリセッションに陥る可能性もあります。

冷静な対応が重要

バリュエーションの観点から見ると、米国株は今回の調整後でも依然として割高な水準にあります。S&P 500の予想株価収益率(P/Eレシオ)は20倍を超えています。一方で、カナダ株のバリュエーションは長期平均に近いものの、景気循環リスクの高まりが懸念されます。

市場心理は明らかに売られ過ぎの状態に近づいています。もし売りがさらに加速すれば、パニック水準に達する可能性がありますが、現時点ではその段階には至っていません。

現時点での当社の見解としては、市場の動向は投資家がポートフォリオを変更すべき水準には達していないと考えています。