10x10レポート
パート2: リターン追求のための投資手法

低リターンの投資環境において、運用機関やアセットオーナーはどのような対応を取っているでしょうか? 低金利にはどのように対処するのでしょうか? プライベート・マーケットやオルタナティブ投資は、ポートフォリオにおいてどの程度の役割が期待されているでしょうか? 手数料の低下圧力は、運用機関やアセットオーナーに対してどのような影響を及ぼしているでしょうか?

10x10レポート全体版(英語版)のご請求

    「リターン追求のための投資手法」の10x10レポート全体版をご請求の方は下記フォームに必要事項をご記入の上送信してくださ
い。

*印は必須項目となっておりますのでご入力をお願いいたします。

headshot of Kate El-Hillow, Chief Investment Officer

Kate El-Hillow

Chief Investment Officer, Russell Investments

Kate's Take

プライベート・マーケットへの投資-大手機関投資家にとって、リターン追求戦略のカギ

当「10x10レポート:リターン追求のための投資手法」の調査結果は、ラッセル・インベストメントの信条とも合致します。理由は明白です。プライベート・マーケットは、投資のカテゴリーとして無視できないほど大きくなっています。だからこそラッセル・インベストメントでも、プライベート・マーケットにおける機能を高めようと懸命になっているのです。また、今回の調査の参加者から提起された3つの主要な特徴(非流動性、アクセス、トータル・ポートフォリオ・アプローチ)についても、当社信条との共通点を見て取ることができます。

プライベート・マーケットの流動性

多くの参加者がプライベート・マーケットの流動性の問題について言及しましたが、今回の調査では、プライベート・マーケット投資における「(価格)平準化効果」について次のように述べた参加者が複数ありました。「プライベート・マーケットへの投資は時価ではなく簿価で評価されるため、ポートフォリオに組み入れるとボラティリティの抑制に役立つ」。ラッセル・インベストメントでも、機関投資家が許容できる非流動性は、自身が考えている水準よりもはるかに大きい場合が少なくない、と考えています。また、プライベート・マーケット投資のカテゴリーによって、キャッシュ・フローの特徴も異なります。例えば、一般的なバイアウト・ファンドでは、投資家は出資した資金を7~8年でほぼ回収することができます。しかし、プライベート・クレジットにおいては、時間軸はさらに短く、5~6年で回収可能です。

トップ・ティアへのアクセス

当調査に参加した有名で大規模な機関投資家といえども、最高水準のプライベート・マーケット投資機会にアクセスすることはなかなか難しいものです。ある企業年金スポンサーは以下のように述べていました。「プライベート・エクイティ運用機関にコンタクトしたいと思っているが、トップクラスの運用機関に直接アクセスする機会がない」。多くの機関投資家から同様のことを伺いますが、この分野については、明確にお伝えできることがあります。トップ・ティアのアクセスを提供してくれる戦略パートナーを見つけるべきです。

今回のCerulli Associatesによる調査では、アクセスの重要性が明快に説明されています。「プライベート投資では、運用機関によってパフォーマンスが大きく異なることはよく知られている。つまり、プライベート投資の世界では、優れたパフォーマンスを上げられるのはトップクラスのジェネラル・パートナーに偏っている、あるいは集中している、ということだ。パフォーマンスが偏っているとは、優れた実績のあるジェネラル・パートナーは、例えば手数料交渉などにおける交渉力が一般的に高いということだ。また、パフォーマンスがトップクラスであれば、自身の方から投資家を選べるということでもある。ファンドを立ち上げる際には、規模の最も大きなアセットオーナーのもとへ行く。数多くの小口アセットオーナーからの資金集めに煩わされることはない。だからこそ、投資家は、プライベート投資に対するアクセスに今まで以上に注目しているのである。この点が、OCIOを活用することの主要な利点でもある」。これについて私から付け加えることはほとんどありませんが、一点だけ、再度強調しておきたいことがあります。それは、皆さんが必要としているアクセスをOCIOの提供者が実際に持っていることを確認することの重要性です。

プライベート・マーケットに対するトータル・ポートフォリオ・アプローチの重要性

今回の調査に参加した一流機関投資家のために働く会社のCIOとして、あらゆる投資局面でトータル・ポートフォリオ・アプローチを採用することがカギとなりますが、特にプライベート・マーケット投資においては基本中の基本です。ある企業年金スポンサーは次のように述べていました。「プライベート・エクイティ投資においては、戦術的に投資することはできない。それは本質的に長期的なものであり、途中で方針を変更するのは難しいからだ」。

プライベート・マーケットでは機会が重要ですが、この年金スポンサーの指摘のとおり、方向転換することが困難なこともあり得ます。今ほどプライベート・マーケットへのアクセス方法が豊富な時期はありません。その結果、カスタマイズできる機会が増えていると同時に、複雑性も増しています。トータル・ポートフォリオをどう構築するか、プライベート・マーケットと公開市場をどのようにバランスさせるか、長期にわたりポートフォリオをどのようにダイナミックに管理するのか。このようなことに精通しているパートナーと連携すべきです。

10x10レポートについて

2021年第3四半期、ラッセル・インベストメントは毎年恒例の「パートナー・イノベーション・ラボ」を開催し、さまざまな地域の有力アセットオーナーによる重大な懸念事項や関心のある分野に関するブレインストーミングを行いました。ラッセル・インベストメントは、参加企業や団体、さらにはパートナーである運用機関へのインタビューをCerulli Associatesに依頼し、本イベントで議論されたトピックについて各自の見解を伺いました。その結果は、「気候変動投資」「リターン追求のための投資手法」「ダイバーシティ&インクルージョン」という3部構成のシリーズにまとめられています。

機関投資家の参加者には、以下の企業年金スポンサーが含まれています(アルファベット順):The Boeing Company、Fujitsu Global、Mazda Motor Corporation、Microsoft、Mitsubishi Electric、Nestlé、Roche、Unilever。 また、以下の非営利投資家も含まれています:The New York Presbyterian Hospital、Robert Wood Johnson Foundation、Thomas Jefferson University。

オルタナティブ資産運用機関の参加者には、以下が含まれています:Brevan Howard、Hamilton Lane、Oaktree Capital Management。 債券運用機関の参加者には、以下が含まれています:BlueBay Asset Management、Western Asset Management Company。 マルチ・アセット・クラス運用機関の参加者には、以下が含まれています:BlackRock、J.P. Morgan Asset Management、Morgan Stanley、Putnam Investments、Wellington Management。

リターン追求上の問題

多くの投資家が良好なパフォーマンスを計上した2021年度が終わり、アセットオーナーも運用機関も、今後は低リターン環境が続くことになると予測しています。低リターンの見通しに関連する問題に加えて、各運用機関は手数料が低下する環境にどう対応するのかを模索しなければなりません。具体的には、コスト削減を図らなければならないということです。

世界最大規模のアセットオーナーや運用機関の一部も、今後のリターン環境、プライベート・マーケット投資に対する見通し、手数料圧縮については、同様の見解を持っています。Cerulli Associatesの調査によると、アセットオーナーと運用機関の見解は、リターンが下落する傾向にあるものの、プライベート・マーケット投資ではある程度リターン目標を維持できるという点で概ね一致しています。今回の「10x10」参加者の多くは、プライベート投資も今後の低リターン環境とは無縁ではない、と指摘しています。これらを踏まえて、伝統的なプライベート・エクイティに投資している投資家の多くは、ポートフォリオをプライベート投資の既存とは異なるセクター(グロース、ベンチャー・キャピタル、プライベート債券など)に広げることも検討しています。

今後のリターン環境

多くのアセットオーナーや運用機関は、2022年以降リターンが低下すると予測しています。大多数が、各国中央銀行が、市場を押し上げるための政策手段を既に使い果たしていると考えているからです。

現在の見通しに合わせて既にリターン目標を下げたと、Cerulli Associatesに述べた参加者もいました。ある運用機関は、Cerulli Associatesに、多くのクライアントが資金流入・流出(必要掛金や給付る)の関係でリターン目標を急に変更できないため、10年かけて徐々に下げてきたと述べています。この運用機関によれば、毎年25~50ベーシスポイントずつ、リターン目標を下げていくクライアントが多い、とのことです。

プライベート・マーケット

リスク分散の範囲を広げでリターン目標を高めたいのであれば、プライベート・マーケット(特にプライベート債券)が注目すべき分野です。既にプライベート投資に進出している投資家は、従来型のプライベート・エクイティ(例えばレバレッジド・バイアウト)から、グロースやベンチャー・キャピタルに手を広げようとしています。

非流動性は、プライベート・マーケット投資の際立った特徴です。非流動性はプレミアムの源泉であるとよく言われますが、参加しているアセットオーナーや運用機関は、これが唯一の源泉というわけではないと述べています。例えば、資産クラスから派生するプレミアムとしては、「コンプレクシティ(複雑性)・プレミアム」や「アクセス・プレミアム」などがあり、前者は投資がどのように管理されるか、後者は投資案件をどのように呼び集められるかが影響します。複数の「10x10」参加者が、「非流動性」には、リターンの「平準化効果」(予測し難いセンチメント上の変化から投資家を切り離し、掛金に大きな増減が生じるリスクから守る)などの他のメリットもあると指摘しています。

Key objectives of private investment strategies 2021

手数料の低下圧力

運用機関は、リターン低下に加えて、利鞘低下の環境も乗り切らなければなりません。交渉力が引き続き投資家の方へシフトしつつある中で、運用機関は手数料の低下圧力や、サービス水準の向上期待に直面することになります。競争力を維持するためには、多くの運用機関が質の高いクライアント・サービス能力を活用し、従来のマンデートの範囲に収まらないアドバイスの提供を試みています。コスト抑制の共通の手法は、業務の合理化やクライアント・サービス提供の効率性向上に向けてのテクノロジー活用です。「10x10」参加者によると、これまで手数料に関する圧力とは無縁だったプライベート投資会社にさえ、数年のうちにはその影響が及び始める可能性があります。また、これらの企業はクライアント・サービスに関する期待度の高まりについても、同様のトレンドの影響を受けています。

「リターン追求のための投資手法」の10x10レポート全体版(英語版)をご請求の方はページ上部のご請求フォームをご記入の上送信してください。

全体版(英語版)のご請求