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ポートフォリオ・リバランス パート1:リバランスの理想的な範囲

以下は、2023年10月25日にラッセル・インベストメント(米国)のHPに掲載された英文記事を翻訳したものです。原文はこちら

概要:

  • リバランスの理想的な範囲は投資家によって異なり、とりわけ、投資家のリスク許容度や市場に関する見通しに依存します。
  • 長期にわたる株式上昇相場においては、リバランスの範囲が広いほど、リターンは高くなりますが、ポートフォリオのリスクも高まります。
  • ポートフォリオ全体で現物および先物などのシンセティック商品を取引することを可能にするラッセル・インベストメントの柔軟なプラットフォームは、投資家がリバランスの好ましい範囲を特定する一助になります。投資家が戦略的資産配分(SAA)に近いポートフォリオの維持を望む場合、ラッセル・インベストメントのデリバティブ・オーバーレイ・プログラムによって最小限の取引でその実現を支援します。

編集者注:本稿は、ポートフォリオ・リバランスをテーマとする3部構成シリーズのパート1です。

私は、世界最大級の機関投資家にポートフォリオ・ソリューションを提供するチームで働いています。私たちのソリューションの多くはポートフォリオ全体のエクスポージャーとリスクを分析するもので、チームはリバランスの検討に多くの時間を費やしています。このような業務を通して、お客様からよくいただく質問があります。それは、「リバランスの理想的な範囲とはどのようなものか?」ということです。

とても良い質問です。そして、難しい質問でもあります。ある意味、それはリターンの理想的な目標はどのようなものかと訊くようなものです。あるいは、ポートフォリオリスクの理想的な水準はどのくらいかと訊くようなものでもあります。このような質問については、「時と場合による」と答えるしかありません。「理想的」という修飾語には、価値判断の要素が含まれています。したがって、より高いリターンを追求したいのか、よりリスクを低減したいのか?お客様が何を重視するかが鍵となります。本稿ではそれぞれのケースを検討していきます。

より高いリターンの追求

長期にわたる株式上昇相場では、リバランスの範囲を広げることで、より高いリターンを実現することが可能です。そのような市場環境では、株式の上昇を許容するポートフォリオ(ポートフォリオの変動は主に株式のリターンによって生じる)は、より高頻度でリバランスするポートフォリオをアウトパフォーム(すなわち、モメンタムが平均回帰を超える)します。こういったトレンドを予想し、ポートフォリオにその見通しを反映することを望むお客様については、リバランスの範囲をより広くすること(例えば、+/-5%)を推奨しています。また、株式への配分上昇をある程度許容する一方で、大きく低下することを避けるためにリバランスの範囲を非対称(例えば、-1%~+5%の範囲)とする方法も候補となります。なお、このことはリスク管理において強気のバイアスを増やすものであることに留意してください。

ポートフォリオに関するすべての意思決定はトレードオフを伴うため、モメンタムにより、より高いリターンを追求するためには、反対にある下落リスクについても考慮しなければなりません。ポートフォリオの高リスク資産への配分が戦略的資産配分(SAA)の目標ウェイトを上回って上昇することを許容すると、ポートフォリオ全体のリスクおよび政策アセットミックス対比のリスクが高まります。

結局のところ、モメンタム指向を採用するお客様は、追加のリスクについて相応のリターンを期待しているのです。しかし、最悪のシナリオでは、株式をオーバーウェイトにした状態で大幅な市場調整局面に曝されるリスクがあります。2020年の世界的なパンデミックによる株式市場の調整局面において、株式へのエクスポージャーが許容範囲の上限に達していた投資家は、そのSAA(そして、おそらく他の投資家)をアンダーパフォームしました。このプランを続けるには、人間の行動様式から最も確信を得られない時期に株式を買う必要があったのです。市場の大きな転換点を予測することは非常に困難なため、特定のシナリオについての推奨される行動指針を定める表を作成することを推奨します。タクティカル(戦術的)ポジションと同様、取引する前に出口戦略も同様に策定しておくことです。

よりリスクを低減

確信なしに故意にSAAから逸脱する投資家にとって、市場の変動による資産配分の乖離は期待リターンが補償されないリスクを意味します。市場に関する見通しをもたない場合、(SAAが定める)許容できる最大ウェイトでリターンを追求する資産を一貫して保有することしかできません。ポートフォリオをSAAにリバランスすることにコストがかからず自由かつ機械的に行える場合には、継続的にそうする強固な根拠があるのかもしれません。しかし、リバランスには意思決定リソース、取引コスト、事務の複雑さを伴い、それらについても検討しなければなりません。また、(本シリーズで後に述べるテーマであるプライベート・マーケット資産の評価タイミングの影響などから)必ずしも毎日完全なデータを利用することはできません。

SAAを完璧に維持するためのコストはゼロではないため、ポートフォリオのわずかな乖離(例えば、1~2%)を許容することで、リバランスの複雑さ、取引コストとリスクとのバランスをとることができ、また、プラスの平均回帰効果の一部を捉える可能性があります。(政策アセットミックスとの毎月の乖離を算出することに合わせて)毎月SAAに完全にリバランスすることで、望ましくないエクスポージャーによるリスクがさらに減少します。絶対リスクをより低くし、政策アセットミックスと比較した相対リスクを最小化することを検討する場合、弱気のバイアスが埋め込まれ、リバランスの範囲を非対称(例えば、-5%~+1%の範囲)とすることも候補になります。これは、市場が下落するときに「落ちるナイフをつかもうとする(転じて、買い急がないほうがいいという意味)」のを制限するものです。

市場のトレンドや平均回帰について見通しをもたない場合、リバランスのプロセスから感情を排除し、毎月リバランスするなど、規律を守ったアプローチを利用してポートフォリオを適度にSAAに近いものに維持します。

 

オーバーレイ・プログラムはどのように役立つのでしょうか?

投資家は、デリバティブ・オーバーレイ・プログラムにより、最小限の取引でそのSAAに近いポートフォリオを維持することができます。同プログラムは、費用対効果の高いデリバティブを用いることで、SAAに対するアンダーウェイトおよびオーバーウェイトをヘッジしながら、望まない現金エクスポージャーをオーバーレイすることができます。それらのポジション調整は、定期的に(例えば、少なくとも毎月)、またポートフォリオのキャッシュフローに合わせて実行できます。大きなキャッシュフローはそれぞれ、デリバティブを用いてポートフォリオをSAAに近いものにする合理的な機会となります。また、ベンチマーク政策ポートフォリオの毎月の算出と合わせて、SAAの月内変動を許容することで取引を減らすことができます。

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まとめ

ラッセル・インベストメントのチームは、ポートフォリオ・ソリューションの提供者として、お客様の見通しをポートフォリオに反映させる支援をしたいと考えています。それは、特定のイベント、シナリオ、期間についての明確なヘッジ戦略など、いくつかの形式をとることがあります。あるいは、流動性のために保有されている現金の有効活用で市場リスクプレミアムをとらえたり、またはモメンタムからの潜在的なプレミアムを利用するなどの継続的な戦略もあります。戦術的な所見がない場合、SAAが最適であると仮定して、それを補完する戦略を実行することです。

ラッセル・インベストメントは、ポートフォリオ全体で現物およびシンセティック商品の取引を可能にする柔軟なプラットフォームをもつため、これらの戦略のメリットとデメリットをお客様とともに検討することが可能です。同プラットフォームは日々の煩雑な事務を処理する事務機能と、確実な報告機能を備えており、望ましい結果が長期的に実現されることを証明できます。これらのツールを活用して、お客様がその理想的なリバランスの範囲を見つけるのを助けてまいります。