好調となった2025年1-3月期のグローバル株式アクティブ運用
当社では昨今、長年不振が続くグローバル株式アクティブ運用の改善策として、ポートフォリオ特性をこれまで以上に高頻度かつポートフォリオ横断的に把握し、意図的に取っていない特徴や想定以上に強く出ている特徴については、補正することを提言している。
ポートフォリオ特性として確認している項目は業種・国別配分から割安・成長といったスタイルまで多岐にわたるが、中でも多くのお客様に共通し、また理解しやすい特徴として、米国株式のアンダーウェイトという特徴がある。そしてこの特徴は結果としてアクティブ運用の長期的な不振に結びついてきた。
一般的に多くのアクティブ運用者は、ボトムアップを中心にして投資判断を下している。この場合、米国株式のアンダーウェイトは、リスク管理等を通じて認識されてはいるものの、それほど強い意図をもってアンダーウェイトされていないことが多い。
そして最終投資家が冒頭で触れたような補正を行わない場合、米国株式のアンダーウェイトというアクティブ運用者も最終投資家もあまり意図していない特徴が、グローバル株式ポートフォリオに現れる。こうした特徴が結果としてアクティブ運用の不振に結びついてきたのであれば、その特徴は補正した方が、より良いポートフォリオとなる可能性がある。
米国株式市場は、欧州株式・新興国株式・日本株式といった他の地域・国の株式市場を上回る実績を残してきた。その背景として、米国において革新的な企業が多く生まれたこと・資本市場が発達していること・基軸通貨を有すること等が挙げられている。ところが今年1月に中国企業が新たなAIモデルを発表したことや米国の外交をはじめとする多岐にわたる政策転換を受け、米国株式の優位性が失われる可能性を指摘する意見が出始めており、そのせいもあってか2025年1-3月期の米国株式は他の地域・国の株式市場を下回る実績となった。4月に入ってからも関税をめぐる朝令暮改のような対応を受け、米国に対する信頼感が低下したとの意見が散見されている。
国・地域別のベンチマークリターン実績(2025年3月末時点、円建て)

※米国:MSCI USA、欧州:MSCI Europe、新興国:MSCI Emerging、日本:MSCI Japan
既述の通りアクティブ運用者は米国株式をアンダーウェイトすることが多く、こうした市場動向はアクティブ運用にとって追い風になる。実際に当社が運用機関評価にあたってモニタリングしているグローバル株式アクティブユニバースの中位値は、2025年1-3月期に、MSCI World対比で1.12%の超過収益を獲得している。2024年4-12月期までの劣後の影響が大きく2024年度通期の同ユニバース中位値はMSCI World対比で1.54%劣後しているが、2025年1-3月期の実績を受け、お客様の中には2024年度通期で超過収益を獲得できたお客様も散見されるようになった。
このようにアクティブ運用の実績が回復すると、その改善への機運が低下することが多い。多くの取り組み課題がある中で、その影響が薄れた時に優先順位を引き下げることは、通常であれば当然の反応かもしれない。 ただし、こと資産運用における課題については、逆風の影響が薄れた際に検討の優先順位を引き下げることは、良い結果に結び付かないように思っている。平均回帰の考え方に基づくと、ある特徴(ここでは米国株式のアンダーウェイト)から生じる負の影響が大きく出た時に、その影響を補正することは、その後の戻りを手放すことにつながりかねないためである。
2025年1-3月期に出現した米国株式に対する長期的な悲観論が正しいのかどうかは不明だが、どちらにしても、あまり意図的でない特徴によってアクティブ運用の成否が左右されることは好ましくない。景気後退入りが懸念されて市場リターンの低下が見込まれ、アクティブ運用がもたらす超過収益への期待が高まる局面であれば、なおさらだ。
米国株式への配分を切り口にしてグローバル株式アクティブ運用の改善検討に着手した投資家には、2025年1-3月期の実績に安心することなく、その検討を継続することを提言したい。その際は旧来通りの運用機関の入れ替え検討にとどまらず、ポートフォリオ内の特徴をどのように管理するのかに踏み込んで検討しても良いだろう。
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