グローバル・マーケット・アウトルック 第3四半期アップデート

貿易戦争の綱渡り

※当資料は、市場動向につきましてラッセル・インベストメントが2018年6月に発行した英文のレポートを抄訳したものです。

2018年前半の2つの主要なグローバル・マーケット・トレンド-米国による世界経済の牽引および米ドル高-はおそらく一巡したと考えられます。
米国経済の景気後退は2019年後半まで生起しないと予測していますが、今後は貿易摩擦の動向および米景気後退への予兆となるイールドカーブの形状を注視してまいります。

主要な市場テーマ

ラッセル・インベストメントは、米国株式に対するネガティブな見通しを引き続き選好します。これは、主に株価の割高感を背景としています。S&P500®インデックスの景気循環調整後株価収益率1(一般的にシラーPERレシオと呼ばれています)は2018年6月現在で32倍と、1929年と1990年代後半を除けば、最高水準となっています。ラッセル・インベストメントのビジネス・サイクル・インデックス(BCI)・モデル2は、今後10年間の米国株式の期待トータル・リターンが年率わずか2%程度に抑制される可能性が高いことを示唆しています。ここ数年ネガティブに見ていた米国債と金利リスクに関しては、3%という米10年物国債利回りが弊社のマクロ見通しならびに米連邦準備制度理事会(FRB)の政策およびインフレを取りまくリスクをより適切に反映していると判断し、ニュートラルに上方修正しています。

アジア太平洋地域株式のバリュエーションについては適正水準にあり、この地域が全体的にわずかに魅力的であると見ています。当地域の株式は、ほぼ全域で適正価格かやや魅力的な水準にあると考えています。特に日本企業の収益率上昇をもたらしている要因が(循環的なものではなく)構造的なものと見ていることから、日本株式を選好します。オーストラリア株式は適正水準に近く、発展途上国はおしなべて魅力的な水準と見ています。ただし、ハイテク銘柄を擁している中国のH株に限っては、割高と見ており留意する必要があると考えます。堅調な中国経済および世界経済の見通しに支えられ、アジア太平洋地域内経済および株式市場は今後も堅調に推移すると予想されます。企業収益が域内の多くの地域で上方修正されて株式市場を支えるものと見ていますが、貿易摩擦の激化や米ドルの上昇は、依然として重要なリスクであることには、注意を要すると考えています。

欧州株式の評価はニュートラルである一方、欧州のコア国債は長期に亘って割高な水準にあると見ています。イタリアで政局不安が高まった際につけた最低利回りを考慮し、コア国債利回りの予想範囲を0~0.8%から0.2~1.0%に若干上方修正しました。イタリア国債に関しては、4月に総合評価をネガティブとしましたが、その後バリュエーションが割高から割安水準へと変化するにつれて、2段階に分けてポジティブに上方修正してきました。
ラッセル・インベストメントは、米国市場よりもユーロ圏の金融市場を引き続き選好します。強固なファンダメンタルズ、相対的に魅力的なバリュエーション、および支援的な金融政策による後押しが相乗効果をもたらして、政治リスクの高まりによる下押し圧力を凌駕する可能性が高いと見ています。

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1 シラーP/EはCA PEレシオ(Cyclically Adjusted PricetoEarningsRatio)とも呼ばれ、景気循環調整後の株価収益率(PER)を示す投資指標。単年度の1株当たり利益ではなく、インフレ調整後1株当たり利益の10年移動平均値を用いて計算されたものを示す。このため、主に、10年~20年先を展望する株式の期待収益率を推計するためにも使用され、シラーP/Eが平均値よりも高い値であることは、年率換算した長期平均期待収益率が平均値よりも低く留まる可能性を示唆しているともされる。
2ビジネスサイクル・インデックス(BCI)は、ラッセル・インベストメントの投資戦略チームが開発した指数で、主な経済指標の予測と共に、今後数カ月の景気拡大または景気後退の強さを予測するものです。当指数は、非農業部門雇用者数、コア物価指数(食品およびエネルギーを除く)、イールドカーブの傾斜、Aaa格事業債とBaa格事業債のイールドスプレッド、そして短期社債と短期国債とのイールドスプレッド等、様々な金融およびマクロ経済データを用いて算出されています。