前グローバル最高投資責任者からの6つの教訓 — レッスン2:プレッシャーはダイヤモンドを作るのか、あるいは石炭を作るのか
以下は、2024年5月30日にラッセル・インベストメント(豪州)のHPに掲載された英文記事を翻訳したものです。原文は こちら。
新型コロナウイルスの世界的大流行が始まった頃、私はラッセル・インベストメントのグローバル最高投資責任者(CIO)として2度目の任期の途中でした。
初めてシアトルの本社に着任したのは2018年9月のことで、その当時、個人投資家向けファンドビジネス担当責任者の隣の席に座っていました。
私はこの同僚に、「前回グローバルCIOを務めていたときは、世界金融危機でいろいろと困難な目に 遭いましたが、また同じようなことが起こるなんて想像できませんよ」と冗談半分に話していました。
パンデミックにより市場のボラティリティは極端に上昇しましたが、この事態がファンド・マネージャーに与えた難題は、前回の金融危機のものとは全く異なるものでした
ロックダウンが世界中に広がるにつれ、人々の生命が危機にさらされ、日常生活の激変ぶりは顕著なものになっていきました。
運用会社にとっての深刻な課題は、市場の乱高下に対処し、円滑な業務運営に必要なコンティンジェンシープランを作成することでした。
ラッセル・インベストメントは、この両方にうまく対処するだけでなく、他社と同じように当社チームメンバーが厳しい状況下で在宅勤務を行っているなか、売買精度の大幅な改善を成し遂げたのです。
その背景として、ラッセル・インベストメントは3,000億ドルのファンドを運用していますが、これとは別にトレーディング業務も行っています。このトレーディングは、当社保有のファンド向け、トランジション・マネジメントの顧客向け、そしてデリバティブのオーバレイ用に実施されます。
パンデミック初期に、当社の売買高が前年比で4億ドル増の3兆ドルに急増した時でさえもこのような売買精度の改善が達成されました。
この成果は、様々な困難(デリバティブのカウンターパーティがバックオフィス業務をインドなどの在宅勤務が非常に困難な国にアウトソースしていたといった事実)に対処した当社チームの目的意識の高さを証明するものでした。
また当社はこの時期に、運用会社のオペレーション遂行を合理化するために、プロセスの簡素化にも取り組んでいます。
これらの成果は、個人や組織が極限のプレッシャーに直面した際に最善の力が発揮されることを示しています。実際、危機に対応する確かな能力は、すべての投資家が運用会社に期待するものであるはずです。
この事例は、プレッシャーはダイヤモンドを作るのか、あるいは石炭を作るのかといった格言を真に証明するものと思われます。
次回:レッスン3:優秀な人材は自分よりも優秀な人材を採用する。