アセット・ベースト・レンディングが今、魅力的な理由

以下は、2025年1月16日にラッセル・インベストメント(米国)のHPに掲載された英文記事を翻訳したものです。原文はこちら

概要

  • アセット・ベースト・レンディング(資産を担保にした融資)は、競争がそれほど激しくなく、条件も有利であることから、競争の激しい企業向けダイレクト・レンディング市場に代わる魅力的な選択肢となっています。
  • アセット・ベースト・ローンは特定の資産を担保とした融資であり、借り手が債務不履行に陥っても、貸し手はその資産を売却することで資金を回収することができます。
  • ローンのデュレーションが1~2年と短いことから、企業向け融資よりも資金の回収期間が早く、柔軟性に富んでいます。
  • アセット・ベースト・ローンがもたらす分散化効果はポートフォリオの安定性を高め、変化する市況に適応できるため、リスクとリターンのバランスを取ることが可能になります。

プライベート・クレジットは、公開市場に代わる資産クラスとして、ますます投資家の注目を集めています。現在1兆5,000億ドル規模のプライベート市場は2028年には2兆8,000億ドルに拡大すると推定されていますが1 、その多くをダイレクト・レンディングが占めており、競争の大幅な激化、スプレッドの縮小、そして条件の緩和が進んでいます。

このような状況において、アセット・ベースト・レンディングは、ダイレクト・レンディングを補完する役割を果たすだけでなく、魅力的なリスク・リターンとダウンサイドリスクの軽減を提供します。

アセット・ベースト・レンディングとは何か?

アセット・ベースト・ローンは、特定の資産を担保とするローンです。不動産や設備といった有形資産から、知的財産権や商標権、売掛金などの無形資産まで、さまざまな種類の資産が担保として利用されています。重要な点として、アセット・ベースト・ローンは主に担保の清算価値に依存するのに対し、コーポレート・ローンは借り手の財務健全性と事業運営に依存する点で、両者に大きな違いがあることです。

実際、こうした違いから、アセット・ベースト・ローンの貸し手が重視する点は異なっています。担保価値が保たれている限り、借り手の事業が健全であるか苦境にあるかはそれほど重要ではありません。例えば、ある物流会社の配送用トラックを担保にしたローンでは、その物流会社が苦境に陥っても、トラックを売却すれば資金を回収することができます。こうした仕組みから、アセット・ベースト・レンディングは景気後退期においても耐久性を発揮できます。

アセット・ベースト・レンディングで利用される担保の種類は広範に及ぶことから、リスク/リターン特性にも大きな違いが生じます。例えば、一戸建て住宅を担保にするのとビットコインを担保にするのとでは、潜在的な価値の変動幅は大きく異なります。さらに、ローンの優先順位次第で返済の可能性に影響が及ぶため、場合によってはよりダウンサイドリスクを抑制することができます。

なぜ、いま投資なのか?

資産クラスとしてのプライベート・クレジットの魅力の一つは、特にプライベート・エクイティや不動産のような長期にわたる投資と比較して、資金の回転が比較的早いことです。アセット・ベースト・ローンは、一般的なコーポレート・ローンの加重平均残存年数が3~4年であるのに対し、多くの場合、わずか1~2年であり、往々にして流動性の改善に結びつきます。

このようにデュレーションが短いことで、ポートフォリオのリバランスや新たな機会への再投資、市場の変化への対応など、投資家に非常に高い柔軟性をもたらします。市場ボラティリティの高まりにより、ポートフォリオの一部資産が急落し、ポートフォリオ全体の価値が低下した場合、資金配分目標に歪みが生じるなど、「分母効果(denominator effect)」が発生しますが、こうしたことに悩みを感じている投資家にとっては、流動性の向上は歓迎すべきものとなります。

リスク資産の価格が上昇する中、多くの投資家はポートフォリオをどのように保護すべきかを自らに問いかけています。アセット・ベースト・レンディングは、市場下落時の損失に備えたバッファーとしての役割を果たしてくれます。例えば、借り手が債務不履行に陥った場合でも、貸し手は担保を売却することにより、ローン元本の全額のみならず、往々にして追加の手数料も回収できます。一方、ダイレクト・レンディングの場合、もし借り手企業が経営難に陥った場合、そのローンは返済されないリスクが高まり、最終的には景気の低迷などが原因で、企業自体が強制的に売却される可能性があります。

魅力的なリスク/リターン

アセット・ベースト・レンディングは、ダイレクト・レンディングに比べて魅力的なリターンを提供します:

  • 銀行の撤退: 米国の地方銀行は古くからアセット・ベースト・レンディングで重要な役割を果たしてきましたが、金融危機後の規制の変更、2023年のシリコンバレー銀行の破綻とそれに続く預金の流出により、多くの銀行がこの分野からの撤退や縮小を余儀なくされました。このため、プライベート・レンダーが多くの場合、有利な条件で、その空白を埋めることになりました。
  • 市場競争の激化:プライベート・クレジットが盛況になるにつれて、新たに投入される資金の大部分がダイレクト・レンディングに向かい、この分野では競争が激化し、コモディティ化が進んでいます。こうした現象は、欧州ではなく、むしろ米国で特に顕著に見られますが、その理由は、米国では機関投資家向けより個人投資家向けのビークルが急速に普及したためです。この分野のファンドは、アセット・ベースト・レンディングに大きく方向転換することが難しいか、方向転換を試みても困難に直面する可能性が高いため、条件が魅力的でないにもかかわらず、ダイレクト・レンディングの分野にとどまらざるを得ません。一方、アセット・ベースト・レンディングの成長は穏やかであり、投資家には魅力的なリスク調整後リターンを提供します。

結論

今、なぜプライベート・クレジットなのかとお客様から問われれば、これまで以上にプライベート・クレジットへの資金配分を検討すべき極めて魅力的な理由がいくつかあるとお答えします。現在の環境下では、競争は限られており、スプレッドも拡大していることから、高利回りを確保することが可能であり、特にスペシャリストの投資戦略にとって魅力的なものとなっています。その結果、投資家は現在、そして将来にわたって、より高いリターンとインカムを獲得することができると考えます。


1 モルガン・スタンレー、Understanding Private Credit

本資料に記載されている意見はラッセル・インベストメントの見解であり、事実を示すものではありません。また、内容は変更される可能性があり、投資助言を目的とするものではありません。

プライベート・クレジットは高リスクな投資と見なされます。プライベート・クレジットへの投資には多くのリスクが伴うため、投資前にこれらのリスクを十分に理解するようにしてください。