資産運用基礎講座シリーズ

債券運用編(第4回)

コンサルティング部 エグゼクティブコンサルタント 金武伸治

債券種別ごとの性質の違い

代表的なグローバル債券インデックスの債券種別構成

グローバル債券市場には、多種多様な債券種別が存在します。その中でも、最も発行額や流通額が大きい債券種別が国債です。国債は国が発行する債券なので信用力が高く、株価下落局面では株式投資からの流出資金が、国債投資へ流入することが多いので、国債価格の上昇による資産分散効果が期待できます。

企業が資金調達するために発行する債券が社債(または事業債)です。社債には一定の信用リスク、つまり企業が倒産することなどで、利息や元本を支払えなくなる債務不履行リスクがあります。しかし、その分だけ国債と比べると利回りが高いため、収益向上効果があります。債券は全般として、主に利回り収益(インカム・ゲインと呼びます)を狙います。主に価格収益(キャピタル・ゲインと呼びます)を狙う株式とは、ここが大きく異なる点です。

どのような債券種別が存在するのか具体的に見ていきます。有名なグローバル債券市場インデックスのひとつであるFTSE世界国債インデックスは、主に先進国の国債で構成されています。また、もうひとつ有名なインデックスがブルームバーグ・グローバル総合債券インデックスであり、こちらは先進国の国債に加えて、政府関連債や投資適格社債、資産担保証券で構成されています。具体的な債券種別構成は図表1の通りです(2022年12月末時点)。


【図表1】ブルームバーグ・グローバル総合債券インデックスの債券種別構成

出所 Bloombergのデータをもとにラッセル・インベストメント作成


これらの他にも、グローバル債券市場には物価連動債(インフレ連動債)、ハイイールド債、エマージング国債、エマージング社債などの債券種別があり、多種多様です。

 

 

債券発行体が異なる、さまざまな債券種別

国債は安定した利回りが期待できる一方で、償還までの期間が長いケースが多く、その分だけ金利変動リスクが大きいことが特徴です。政府機関や地方政府、国際機関などが発行する政府関連債も同様です。

一方、社債は個別企業が発行するため、国債と比べて信用リスクがあり、その分だけ国債より利回りが高くなっています。ちなみに、社債利回りのうち、同じ年限の国債利回りを上回る部分を、上乗せ金利またはスプレッドと呼びます。
信用リスクの定性的な程度は、複数の信用格付機関がランク付けしています。格付が投資適格級(BBB−/Baa3格相当以上)にあると判定された社債を投資適格社債、非投資適格級(BB +/Ba1格相当以下)であると判定された社債を非投資適格社債またはハイイールド社債と呼びます。ちなみに、イールド(yield)とは「利回り」のことです。
投資適格社債は一般的に、信用リスクよりも金利リスクの方が高い傾向があり、ハイイールド社債は、金利リスクよりも信用リスクの方が高い傾向があります。

新興国が発行する債券がエマージング国債です。社債と同様に信用リスクを持つため、利回りが高い特徴があります。また社債の場合は個別企業の信用リスクが収益源泉であることに対して、エマージング国債の場合は、個別国の信用リスクが収益源泉となります。エマージング諸国は資源国や産業国など国の特性も様々であることから、投資国を分散することに意味があります。

債券構造が異なる、さまざまな債券種別

ハイイールド社債と同様に、主に非投資適格級の企業が発行する債券に、バンクローン(レバレッジドローンとも呼びます)があります。ただし、バンクローンの場合は厳密には債券ではなくローン、つまり融資であるため、一般的にはクーポン(利息部分)が変動金利となります。これまで「金利が上昇すると、債券はクーポンの魅力度が低下するため価格が下落する」と説明してきましたが、これは固定金利のケースです。変動金利の場合は、金利が上昇するとクーポンも連動して上昇するため、債券価格が下落しにくい特徴があります。

一般的に、国債や政府関連債、社債は無担保ですが、元利払いの裏付けとなる担保が設定されている債券もあります。その代表的な債券に(広義の)資産担保証券があります。
資産担保証券とは、裏付資産としての担保が設定されており、その担保資産からの利息や元本返済等のキャッシュフローが投資家に元利金として支払われる仕組みの債券です。設定される担保も様々です。個人の住宅ローンを担保とする住宅ローン担保証券(MBS:Mortgage Backed Securities)。オフィス、小売、集合住宅、工業、ホテルなどを対象とした商業用不動産ローンを担保とする商業用不動産ローン担保証券(CMBS:Commercial Mortgage Backed Securities)。自動車ローンや学生ローン、カードローンなどを担保とする(狭義の)資産担保証券(ABS:Asset Backed Securities)などが存在します。
資産担保証券には、担保資産から発生するキャッシュフローを受け取る優先順位が予め決められています。このため、投資金額全体に対して担保資産額は十分か?担保資産の質は高いか?自分よりも優先度が低い投資家の割合は?など、キャッシュフローが自分に届くまでのプロセスや優先度がポイントとなります。これを証券化リスクと呼びます。

こうした社債やエマージング国債、資産担保証券など信用リスクを持つ債券を、広義の「クレジット債」と呼びます。クレジット債の中でも各債券種別(狭義のクレジット債)に分散投資することで、リターン源泉の拡張やリスク源泉の分散が期待できます。


※本稿では理解の促進を優先して、一部、簡略化・簡易化している部分があります


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