運用スタイルについて

 

運用スタイルの類型

「アクティブ運用」とは市場平均を上回るリターンの獲得を目指す運用のことを言いますが、その中でどのような手法で市場平均を上回ろうとするのか、という目標のために運用スタイルを選択することがあります。株式運用における代表的な運用スタイルを例にとって考えていきましょう。

株式のアクティブ運用では、個別企業を調査し、市場平均以上に値上がりが期待できると判断される銘柄を選択していくことになります。この「市場平均以上に値上がりしそう」な銘柄の選択方法は各運用会社それぞれ特徴がありますが、代表的な分類として以下の2つがあります。

  • 成長(グロース)型

企業の今後の成長性を予測し、成長による株価の値上がりを享受することを目指す運用スタイル。

  • 割安(バリュー)型

現在の企業の実力に比して株価が割安に放置されている銘柄を選択し、株価が適正な価格に収斂する際の値上がりを享受することを目指す運用スタイル。

公募投資信託で、「○○グロース・オープン」や「△△バリュー・オープン」等の名称を見かけますが、これらは運用スタイルを用いた株式のアクティブ運用をしていることを表しているものです。

運用スタイルの変遷

運用スタイルの違いを日本株式を例に具体的な数値で確認してみましょう。次のページの表は2011年–2021年のRussell/Nomura日本株インデックスの収益率の推移を示したものです。

図表1  Russell/Nomura日本株インデックス収益率の推移(2011–2021年、%)

成長:Russell/Nomura Total Market Growth インデックス(円ベース、配当込)。割安:Russell/Nomura Total Market Value インデックス(円ベース、配当込)。市場:Russell/Nomura Total Market インデックス(円ベース、配当込)。上記のインデックスは、野村證券株式会社が公表している指数で、その知的財産権は野村證券株式会社及びその許諾者に帰属します。なお、野村證券株式会社及びその許諾者は、対象インデックスを用いて行われる弊社の事業活動・サービスに関し一切責任を負いません。上記は過去の実績であり、将来の投資収益等の示唆あるいは保証をするものではなく、またその結果の確実性を表明するものではありません。インデックスは資産運用管理の対象とはなりません。また、インデックス自体は直接的に投資の対象となるものではありません。インデックスには運用報酬がかかりません。 出所:野村證券金融経済研究所発表のデータをもとにラッセル・インベストメント作成

成長(グロース)型と割安(バリュー)型のどちらか一方が優位性を持ち続けるということはありませんし、リターンの順位が入れ替わるタイミングや期間についての法則性はありません。ただ、年ごとのリターンに差があることはご覧いただけると思います。両者のリターンの差の大きさは年によって異なりますが、2020年は成長(グロース)型が優位で、成長(グロース)型と割安(バリュー)型の差は1年間だけで約27%にも及びました。その後、2021年には割安(バリュー)型優位に転換し、2021年と2022年(4月まで)は割安(バリュー)型が成長(グロース)型を大幅に上回っています。このように、運用スタイルの選好は、短期的に非常に大きな差になって表れたり、急速に優位性が逆転したりすることがあるのです。

ある割安(バリュー)型ファンドの2020年の年間リターンが+5%であったとします。市場平均の+8%を下回ったものの、この年は成長(グロース)型指数が+22%となった一方で、割安(バリュー)型指数は約5%下落しており、割安(バリュー)型運用には総じて逆風の年でした。この場合では、「多くの割安(バリュー)型ファンドが苦戦しマイナスの収益率となる中で、5%上昇したのは健闘した」という評価が成り立つのかもしれません。

一方、例えば、2020年に+10%のリターンを実現した成長(グロース)型ファンドは、市場平均の+8%は上回っているものの、成長(グロース)型指数が+22%となる追い風が吹く投資環境下で多くの成長(グロース)型ファンドが好成績を上げるなか、同じ成長(グロース)型ファンドとの比較では決して成績優秀とは言えません。

このように、株式のファンドの良し悪しを見極める際には、運用スタイルも考慮に入れておくことが必要です。

したがいまして、成長株(グロース)に投資する運用商品だけでポートフォリオを構築した場合、割安株(バリュー)を中心に株式相場が上昇する局面ではパフォーマンスが劣後してしまいます。実際、2000年代初期にかけて成長株(グロース)を中心に上昇した米国のITバブル相場でも、米国株式市場において6年以上に亘って蓄積された成長株(グロース)の優位性がわずか1年で消失してしまい、運用スタイルの逆転が急速に起きました。

直近ではまた、2017年から2021年半ばにかけて、米国のGAFA(「Google」、「Apple」、「Facebook(現Meta)」、「Amazon」の頭文字をとった呼称)株の好調に象徴される世界的な成長株(グロース)志向が見られましたが、2021年後半および2022年はこのような銘柄の株価が総じて調整する一方、再び割安株(バリュー)志向が復活する動きが見られています。

優位性を持ち続ける運用スタイルはありませんので、資産配分と同様に、一つの運用スタイルに集中することなく分散投資を心がけることも大切なことと考えられます