資産運用基礎講座シリーズ

債券運用編(第2回)

コンサルティング部 エグゼクティブコンサルタント 金武伸治

債券投資の目的と効用

債券投資の主な目的

債券投資の主な目的は2つあります。1つは「利回りの享受」であり、もう1つは「株式との分散」です。
つまり債券投資には、収益獲得(利回り)以外にも、リスク低減(分散効果)という重要な目的があるのです。

特に年金資産運用の場合、主要な収益源である株式投資は継続することが求められます。しかし時として、株価は大きく下落することがあります。このような時に、資産全体の損失を低減してくれるのが、株式と逆相関の性質を持つ債券となります。つまり、株式投資の継続と債券投資の継続は、セットで行うべきこととなります。このため、債券投資のみの収益やリスクにとらわれず、資産全体で考えることが重要です。

この意味において、2022年の世界的な金利上昇は、債券投資の今後の期待効果を高めたと考えられます。何故ならば、(2023年3月時点では、為替ヘッジコストがまだ高いものの)金利上昇を通じた利回りの上昇は、利回りの享受効果をより高め、更に、金利低下余地が高まったことは、今後の株式との分散効果をより高めてくれるからです。

金利水準が高まると、債券のマイナス・リターン耐性が強まる
「利回りクッション」の効果

前項で、債券投資の効果について触れましたが、リスク面についても触れたいと思います。
前回は、金利が上昇すると債券価格は下落することと、金利感応度であるデュレーション(≒残存年数)が長いほど、金利上昇時の価格下落率は大きいことを説明しました。
今回は、金利水準と債券のマイナス・リターン耐性との関係について説明します。

2022年の債券価格の下落幅が、近年に経験したことのない程の大きさであった背景には、歴史的な低金利下であったことから、金利上昇幅が大きかった点が挙げられます。また、もうひとつの背景として、低金利であったが故に、マイナス・リターンへの耐性が弱かった点が挙げられます。

金利上昇時のマイナス・リターン耐性について、「利回りクッション」という考え方があります。
債券の収益には利回り収益と価格収益がありますが、価格が下落しても、プラスの利回り収益がマイナスの価格収益を一定程度カバーして、クッションの役割をしてくれるというものです。

図1は利回りクッションのイメージです。残存年数5年、利回り3%の債券に1年間投資した最後に金利が0.5%上昇した場合、価格収益は▲2%(≒金利上昇幅0.5%×残存年数4年)となりますが、利回り収益が3%あるため、債券収益は1%となります。

【図1】利回りクッション

出所 ラッセル・インベストメント

加えて、金利が上昇した時、一時的に価格収益はマイナスとなりますが、それ以後は利回り収益が高まることになります。また同時に、利回りクッションも強まっていることになり、マイナス・リターンへの耐性がより期待できるようになります。

 

グローバル債券投資における主要インデックス

最後に、主要な債券インデックスについて、特に「利回りの享受」と「株式との分散」の観点から説明します。

インデックスとは、主に投資対象となる市場の全体像を把握するために用いられるものです。
具体的には、運用結果が良かったのか悪かったのか、それを知るために市場全体の平均リターン、およびリターンの変動性であるリスクを把握するために利用されます。
市場全体の平均よりも、リターンの場合はより高く、リスクの場合はより低いことが、より良い運用と言えるでしょう。
インデックスを、特に運用結果の分析に利用する場合、目安としての「ベンチマーク」と呼ぶこともあります。
加えて、市場全体の構成を把握するためにも、インデックスは利用されます。例えば、市場全体の平均利回りや平均デュレーション、国別構成や債券種別構成と言った具合です。

では、具体的なグローバル債券インデックスについて、見ていきましょう。
主要なインデックスとしては、FTSE 世界国債インデックス(WGBI: World Government Bond Index)とブルームバーグ・グローバル総合債券インデックス(Bloomberg Global Aggregate Bond Index)が挙げられます。

FTSE WGBIは、先進国の国債のみで構成されています。
対して、ブルームバーグ・グローバル総合債券インデックスは、先進国の国債以外にも、政府関連債や社債、新興国や新興国企業が発行するエマージング債、住宅ローンなどを担保とする資産担保証券などといった、総合的な債券種別で構成されています。
どちらのインデックスも、BBB-/Baa3格付以上の投資適格債券を組み入れの対象としています(厳密には、FTSE WGBIの場合、A-/A3格付以上が組入条件となり、BBB-/Baa3格付未満が除外条件となる)。

相対的にFTSE WGBIは、国債が対象のため信用度が高く、元本償還の確実性という観点から、安全資産としての性質が高いとされています。このため、株式との分散効果が期待できる一方で、利回りは低くなる傾向があります。対してブルームバーグ・グローバル総合債券は、一定程度の信用リスクを持つため、利回りが高くなる一方で、株式との分散効果は低くなる傾向があります。
またFTSE WGBIの方が、ブルームバーグ・グローバル総合債券よりも平均格付が高く、残存年数やデュレーションが長い傾向があります。
このため投資目的や役割に応じて、これらのインデックスを使い分けることがポイントになります。

※本稿では理解の促進を優先して、一部、簡略化・簡易化している部分があります

 

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第3回:グローバル債券投資の意義

債券投資を行う主な理由は、「利回りの享受」と「株式との分散」でした。

 

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